カレッジマネジメント233号
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43リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略受験生達は、第一志望校は比較的明確に決定しているのですが、併願校を決めることに対しては難渋します。なぜなら併願校を決めるという行為は、第一志望校に不合格となった状況を想定することと等しいため、精神的負荷が重く、自ら進んでどんな学校があるのかといった検討行動が進みにくいのです。そういったなかでも、受験生達の併願校リストに名前が挙がるようになるには、少しでも早期に彼らの意識の中に学校名が刻まれている状態になるような情報発信が必要です。そんな情報源として圧倒的な影響を与える存在は、身近な「人」。先生や保護者、塾の先生、兄弟姉妹や親戚等、「自分より上」の、しかも限られた人の行動や発言で、初期段階の興味が形成されています。SNS上での「人」情報にも接点を持つものの、学校検討の主なツールとはなっていません。仮にSNS上で憧れの対象となる大学生の姿を目にしたとしても、そういった状態になれる自分を想像できるだけの自己効力感が持てなければ、その情報はあくまで自分とは別世界のこととして捉えるに過ぎません。積極的な高校生のなかにはInstagramで大学生をフォローし、DM(ダイレクトメッセージ)を送って直接コンタクトを取る子もいます。TikTokに関しては、ダンスや面白動画を投稿するといった従来の使い方にとどまらず、ニュースを入手するためのツールとして活用するような、情報感度の高い高校生も出てきています。一方Twitterは、在学生がアピールする情報を得るために多くの高校生が利用しています。実は、今の高校生は情報を単純に鵜呑みにせず、懐疑的に見ようとする世代。「情報の裏を取る」「本音を探る」という目的でTwitterを使っているケースも多いようです。また、SNSにおいては、情報検索することで利用者がターゲティングされ、検索内容に関連する情報が自動的に表出されるアルゴリズムが組まれているわけですが、今の高校生はターゲティングの上で情報提供されることに対し慣れており、好きなアーティスト情報や動物の動画が集中して上がってくることに対して違和感はなく、むしろ効率性が高いと感じています。デジタルネイティブとはいわれながらも、意外にも主体的に検索して情報にたどり着く力は弱い可能性もあることは、情報を発信する大学側としては認識しておくべきかもしれません。また、大人がリアルの場で感じるような空気を、SNS上で感じ取ることができるのもZ世代。例えばWEB上のOCに登場した教員間の何気ない会話から学校の風土の良し悪しを察したり、動画の内容が押しつけがましければ、ホスピタリティーに欠けた大学ではないかと感じたり、在学生が語るコンテンツも、学校の指示が働いているのではないか等、実に細かいことまで気づくのです。併願校候補として挙がったときに、そういった細かな材料が判断の分かれ目となることがあり、配慮が必要かもしれません。大学からの情報発信もきれいごとばかりだと、逆に懐疑的に捉える、といったピュアでありながら鵜呑みにしない賢さも併せ持つZ世代の高校生。その側面を理解し、包み隠さずオープンなコミュニケーションを心掛けるべきではないでしょうか。(文/金剛寺千鶴子)進学情報メディア編集長から見た高校生の情報収集方法発信されたコンテンツから空気を感じ取る高校生達包み隠さぬオープンなコミュニケーションを進路選択だけにとどまらず、高校生を取り巻く生活全般において役立つコンテンツを情報誌、メールマガジン、SNS等で幅広く発信している。3000人以上の現役高校生とLINEでつながりを持ち、リアルな声を継続的に収集しながら媒体編集を行っている。リクルート『スタディサプリ進路』編集長仲井美夏検索よりもリコメンドSNS上で大学の「空気」を感じ取るZ世代身近な「人」から圧倒的な影響

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