カレッジマネジメント233号
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45リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022アンケートは入学後すぐに行っています。近畿大学のポスターの印象は?大学案内は見ましたか?大学のホームページはどうでしたか?等、コミュニケーション戦略に対する感想を聞く。さらに、学生を絞り込んで大学案内を見てもらい、どのページや企画がよかったかのヒアリングを行ったり、どのような大学案内があったらいいかとことん議論してもらうといったことも行っています。――近畿大学といえば近大マグロを打ち出した広告など、様々な面でかなり振り切った戦略を実施しているように見えますが、エビデンスやデータをもとに議論して試行錯誤して進めているのですね。毎年のアンケートから最近の18歳の傾向として、意外だったこと、新しく気づいたことはありましたか?世の中のコミュニケーションツールは紙からSNS等に移行していますが、実は彼らはまだまだ紙の印刷冊子をよく見ています。一般的には「今の若者は紙なんか見てないよ、スマホしか見ないんだ」と言われていますが、意外と紙媒体も見ているんです。オープンキャンパスの案内もHPやLINE、ツイッターでも大々的に告知しましたが、アンケートをとると、ここでもDMが見られていました。「若者はスマホしか見ない」という世の中の思い込みの情報だけを信じていると、間違える可能性があるということですね。――もうひとつ、彼らに大学の何を打ち出していくかということも大切です。従来の偏差値で語られるようなグルーピングの価値観を変えていくために、その大学ならではの付加価値を打ち出す必要があります。近畿大学ではどのように「強み」を作っていったのでしょうか?近畿大学の最大の特徴は「大阪にある」ということです。それも町工場が多く下町風情のある東大阪。京都や神戸にあるような「おしゃれなイメージ」の大学や、国立大学のような「偏差値の高い」大学とは違う軸を考えたとき、それが「コミュニケーション能力が高い」「チャレンジ精神がある」ということでした。これは東大阪という町の雰囲気からも生まれているものです。さらに初代総長世耕弘一は、設立当初から「総合大学」と「大衆大学」をつくる、という目標を掲げており、大阪の「オモロイ」を入れていくことで強みとなるのではないかと考えました。そういったところから生まれたのが近大マグロをモチーフにしたコミュニケーション戦略です。成果が出るまで32年もかかりながら、他の魚を売ったお金で資金を補填することで研究が続けられた近大マグロ。チャレンジ精神や近畿大学の教育理念である実学教育を体現した研究です。さらに、マグロは美しく、デザイン性もある。そして見る人によってはおいしそうと思えます(笑)。ここまで色んなことを妄想近大マグロを使った広報大学の売りを見つけ、成功したら続けていく特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略

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