カレッジマネジメント233号
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46リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022させるものはありません。近大マグロを打ち出した広報は話題になり、学内では、広報の「奇跡の宝物」と言っています。実はマグロの研究については過去の大学案内にも載っていたのですが、私が大学に来たときには「うちの大学はマグロだけじゃない」と言われて外されていました。しかし、これほどおもしろく、わかりやすい研究成果はない。過去にもずっと大学案内に載せてきたからもういいのではという話もありましたが、募集広告のターゲットは18歳ですから、毎年総替わりします。次の世代の高校生は知らないかもしれない。1つの世代をターゲットにするなら同じことをやり続けることも戦略としてあるわけです。他のビジネスではありえないことかもしれませんね(笑)。――大学は入学がゴールではありません。今日では、途中退学者へのフォローも大きな課題となっています。Z世代の入学してからのモチベーション維持について、何か方策をとっていますか?入学後の学生たちのモチベーションを維持させるのはとても難しい問題です。大学のポータルサイトに情報を発信したり、学内冊子を作り、コミュニケーションを図るといった手法が一般的ですが、こういうものを作ってもなかなか学生には響かない。それは教職員に対しても同じで、学内でいくら情報を出してもその効果は限定的です。実は彼らが一番信用しているのは学内ではなく、外からの情報だと考えています。例えば大学の活動が新聞に載ると、ネット記事になり、ツイッターに流れて学生たちの目にも入ってくる。学内の情報よりも、こうやって外から手元に入ってくる情報に耳を傾けるということです。さらに新聞に載ると、両親や親族、友人からも「近畿大学って色んなことをやってるね。知名度が上がってるね」と話題にされます。こうした話題を常態化することで、「この大学に来て良かったな」と思えるし、大学に対するモチベーションにもつながっていく。もちろん教育や研究の内容でモチベーションを維持していくことが一番大切です。しかしコミュニケーション戦略として考えるのであればこういった方法も重要ですね。――近畿大学は盛大な入学式でも知られています。様々なイベントを通してZ世代の心をつかんでいるように思います。その意図はどういったところにあるのでしょうか。入学式には力を入れています。若手のスタッフたちが部署横断で集まり、半年かけて作り上げています。目指すのは「え、大学ってここまでやるの?」と思われるレベル。毎年、新入生たちは「近大の入学式、ライブ会場みたい!」とツイッターに写真とともにアップして話題にしてくれます。ここまで力を入れるのは、新入生たち、特に一部の不本意入学で入ってきた学生たちの気持ちをポジティブに切り替えさせるためです。一種のショック療法ですね。会場に入ったときにワクワクするような演出、学長の話、そして全員で肩を組んで校歌を歌う。入学したばかりの学生に、知らない人と肩を組んで校歌を歌わせるのはかなり無理があるのですが(笑)、新入生全員が歌うとそれはもう壮観です。その体験は一生忘れられないものになります(2022年は大阪締めに)。場が盛り上がったところで、2022年度入学式での大阪締め重要となる入学後のモチベーション維持

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