カレッジマネジメント233号
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47リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022近畿大学の成り立ちや思いを伝える映像が入る。この映像のクオリティーにはものすごく力を入れています。これから卒業までの4年間で建学の精神を真正面から伝えられるのはたぶん入学式の1回だけ。もちろん建学の精神を学ぶ授業も用意されていますが、心に刺さるのは入学式で見る映像に勝るものはありません。学生に創設者の思いを伝える最大のチャンスだと考えて力を入れています。入学式は普通にやっていたら寝てしまう学生は少なくありません。ただでさえ引っ越しや、なれないスーツで疲れているわけですからね。近畿大学の入学式は寝ているヒマはありません。「近大はここまでやるのか!」と驚くレベルのものを作る。後で新入生に話を聞くと、「入学式で気持ちが変わった」と言ってくれる人も多くいます。ほかの様々な努力の結果もあると思いますが、入学式を変えてから、退学率も下がってきています。――入学式のほか、様々な取り組みもあります。デジタル化にもいち早く力を入れていると聞きます。それも学生たちのモチベーションにつながっていますか?学内コミュニケーションにおけるSlackの導入、Amazonでの教科書購入システムのほか、完全インターネット出願等はどこよりも早く取り組んできました。伝統校ではデジタル化に対応が遅れているところも多かったので、近畿大学が勝てる分野であれば先取りして勝っていこうというマーケティング的な目論見もありました。先進的なことをやっている大学だと高校生が知ってくれるだろう、と。取り組みを知って先進的なことに興味を持つ学生が集まってくるようになり、そういう学生の濃度が高まることにもつながりました。こういった流れがあったので、オンライン授業への切り替えも一気に進み、すでに共通教養科目の半数以上をオンデマンド授業として開講し、学生は対面かオンデマンドを選ぶことができています。アカデミックシアターの図書スペースには漫画も配架し、漫画から興味を持ってもらい、深く知りたくなったら専門書で学ぶといった様に、Z世代の好奇心を刺激するような設計となっています。さらに、2025年までに大学発ベンチャー企業100社の創設をめざすプログラム「KINCUBA」をスタートし、学生の起業へのチャレンジを支援しています。――Z世代に対応するためとはいえ、広告も入学式もデジタル化も、新しいことを最初に始めるのには勇気がいることだと思いますが。勇気はいります(笑)。完全インターネット出願を始めたときも、周りの人にデジタル格差等を指摘されて反対を受けました。ですが、調べてみると海外の大学はほぼネット出願が主流になっていました。勇気はいりますが、批判されたときの理論武装もきっちりできるようになってきました。近畿大学の初代総長も「決して正しいことに勇気がくじけてはいけない」と言葉を残しています。これが近畿大学のDNA。学生にもチャレンジをしなさい、と教えているのですから、それを大学が実践しなくてどうする!ということです。近畿大学が大学のイメージランキングで「チャレンジ精神がある」で上位になることが一番うれしいですね。(インタビュー/小林 浩 文/木原昌子)アカデミックシアター起業家育成支援KINCUBAのイベント特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略

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