カレッジマネジメント233号
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48リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022日本初の「起業家精神を学ぶ学部」として2021年4月に新設された武蔵野大学アントレプレナーシップ学部(EMC)。起業家精神を持つことの意味を伝えるとともに学部の雰囲気に触れてもらう場として参加型セッション「武蔵野EMC高校生オンラインゼミ」を1期生募集中の2020年5月から継続的に実施し、ロイヤルティの形成につなげている。EMCの募集コミュニケーションの基本的な考え方や「高校生オンラインゼミ」の効果について学部長で、企業内大学「Zアカデミア」学長等も務める伊藤羊一氏に伺った。EMCでは1学年の定員60名に対し、教員数30名。伊藤氏を筆頭にほとんどが現役実務家で、外資系大手企業を経てほぼ日取締役CFOを務め、現在はエール取締役の篠田真貴子氏や農業テックで地域を盛り上げるGRAほか6つの法人のトップを務める岩佐大輝氏等、名だたる起業家や経営経験者が教壇に立つ。「社会で活躍する教員達がEMCでやろうとしていることや、その姿を伝えれば、必ず学生は集まると考えていた」と伊藤氏は開設準備期を振り返る。EMCが募集コミュニケーションにおいて実行したのは「網を広く掛けること」。「YouTube」「TikTok」といった複数のSNSや学部Webサイト、情報誌、新聞広告、出張授業、講演会等あらゆるチャネルを活用して学生や保護者との接点を増やし、必要とされる情報を都度判断して発信。「受験生獲得」ではなくEMCに興味や関心を持つ母集団の形成を目指し、学部の学びや教員の姿を伝えることに重きを置いた。ターゲットや媒体を絞り込まなかったのは、「どんな高校生にどんな広報ツールでどう伝えればいいのか、鉱脈がどこにあるのか分からなかったから」と伊藤氏。「SNSネイティブ」「社会課題に敏感」といった一般的な高校生の特徴は把握していたが、実際には色々な高校生がいる。EMCは新しいコンセプトを持つ学部で既存の受験マーケットの枠組みに収まらない可能性を秘めており、ポテンシャルを最大化するにはターゲットを絞り込まないほうがいいと判断したのだろう。実際、入学した学生の高校、地域等の属性や関心領域は多様で、「EMCを最初に知った媒体」の種類も幅広い。「高校生オンラインゼミ」も数ある接点のひとつで、戦略的に実施したものではなかった。「開設準備中にコロナ禍になり、学ぶ場をなくした高校生に社会の面白さや学ぶことの楽しさを伝えたくて企画したのが始まり」と伊藤氏はターゲットを絞り込まず、多様な人材を呼び込む「社会の面白さを伝える場」として「高校生オンラインゼミ」をスタートアントレプレナーシップ学部学部長伊藤羊一氏武蔵野大学 アントレプレナーシップ学部在校生と教員が企画・運営する「高校生オンラインゼミ」高校生に響く「ここにしかない学び」の体験Case Studies_1昨今の高校生の思考や行動を踏まえながら、大学らしさを発信し、彼・彼女達との最適なコミュニケーションを打ち出す2校にその戦略の背景や成果を尋ねた。Z世代の価値観や行動を踏まえた募集コミュニケーション事例

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