カレッジマネジメント233号
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5リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022前号特集“正解がない時代の「学びのデザイン」”に引き続き、本号でも大学における学びのバージョンアップに焦点を当てる。本号はとりわけ、初等中等教育で起こっているパラダイムシフトである「探究」を、大学はどのように捉えたらいいのか、という視点に軸足を置いた。予測不可能なVUCAの時代、社会に存在する多様な課題を解決するために、翻って自らの人生を自律的に構築していくために、未知の事象に自分なりの「問い」を立て、それを起点に学びを設計し、主体的に学び進めていく探究スパイラルが、初等中等教育の現場で実装されつつある。新たな学習指導要領の根幹は、教育の主語が供給者から学習者へと移ったことだ。志望校の偏差値を見て訳も分からず過去問を解くような勉強ではなく、自分の興味関心から軸足を決めて自ら学びを設計する。教員はその伴走者として学びの最大化を支援する。そうした教育によってVUCAの時代を生き抜く子ども達を育てるというのが全体の方向性だ。探究の「究」は研究の「究」である。読者の中には、いよいよ大学が得意としてきた捉え方に近い教育が展開されるようになったと思われる方も少なくないだろう。確かに、研究機関でもある大学にとって探究は親和性の高い概念である。しかし、探究スキームは急に研究になり得るのかというと、その答えはNOであろう。未知へのアプローチ方法やスタンスを学んだ生徒が、いかにそれを研究レベルに昇華できるのかは、大学の教育デザインにかかっている。また、探究活動に取り組んできた生徒が大学に入学した途端、探究的な学習がストップしてしまうのでは困る。いかに学生の学びを止めないのか。コロナ禍によく提唱された言葉だが、それは探究文脈においても当てはまる。探究世代を受け入れ、どのように育成し、どのような成果に結び付けていくのか。改めて問い直す必要があるだろう。学生の問いに応じたオーダーメイドな教育をどう展開するのか。その推進をどう支援するのか。大学経営上の意義はどう定義するのか。過渡期だからこそ、丁寧な設計・接続が求められる。従来の研究を軸にした観念が「探究1.0」とするならば、そうした接続も含め、現代化した「探究2.0」はどのように構築されるだろうか。それこそが、新たな「選ばれる大学」の軸足になるのではないか。本特集がその探索の参考となれば幸甚である。(イラスト/ノノメ)

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