カレッジマネジメント233号
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51リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022生かした、思わず笑ってしまう内容だ(図1)。動画コンテンツの内容に関しては、ほぼ、制作者サイドに任せたという。先方にはパンフレット等大学を知ってもらう素材を渡し、各学科のアピールしたい点を1つ2つ伝えたものの、余計な制限を加えず、芸人の自由な発想で面白いコンテンツを作ってもらうことを重視した。「この動画は関西福祉大学という存在を認知したのち、資料請求したりOCに参加するといった行動へとつなぐ役割と考えています。ですから、あれやこれやと情報を詰め込むのではなく、本学への興味関心を高め、志願に向けて次のステップに進んでもらうことに的を絞りました」(山戸氏)。動画コンテンツの下には、各学科で学べる内容や取得可能な資格、在学生・卒業生のインタビュー記事、OCの予約ページ、資料請求ページ等へのリンクを張っている。動画を見て興味を持った学生に、様々な角度から情報を提供する導線を作っているのだ。同大学は、各種広報資料のスマートフォン対応も進めている。例えば、大学案内をデジタル化する際、従来は紙のパンフレットをそのままPDF化していた。しかし2022年度からは、スマホでも見やすい作りに最適化し、効果を分析するという。募集広報の施策を進める際の課題を尋ねたところ、広報担当部署と高校生との世代間ギャップだと山戸氏は話す。Z世代の高校生が呼吸をするかのように自然にSNSを使いこなす状態と、大人である広報担当者のSNSアプリに対する向き合い方とは乖離がある。そのため、「この記事には大きな反響が寄せられるだろう」と期待して投稿しても、期待外れに終わることが珍しくなかったという。そこで近年取り組んでいるのは、大学の魅力や実際のキャンパスライフを、高校生に近い学生自身に語らせることだ(図2)。「授業内容や資格取得に関する情報は大学側が語りますが、学生には『学生にしか語れない話』をしてもらっています。事実関係が異なる場合以外は口を出さず、話の内容を学生に任せるのが基本方針」(吉田氏)。学生による動画の5月中旬時点における再生回数は順調かつ想定の範囲内だったという。どの動画も平均視聴時間が3分近くあり、いったん見始めた人の半数以上は動画を最後まで視聴していた。これは、コンテンツ自体に高校生が引き込まれたことの証明といえるだろう。また、資料請求の件数も大きく伸びており、高校生の情報収集のあり方にマッチしたコンテンツによって、大学への志願度を高めるという狙いは、ひとまず成功したとみてよさそうだ。とはいえ、デジタル・ネットでの情報発信においては、高校生というターゲットを過剰に意識しすぎないことが大事だと山戸氏は語る。「例えば、大学の魅力をインスタグラム等で発信する際、以前は学生に『高校生にウケる投稿を』と頼んでいました。ですが今は、自分達が楽しめる投稿をするように伝えていて、それが良い結果をもたらしています。広報担当者や学生が自分達の目線から、自然体で情報発信することが有効なのではないでしょうか」。(文/白谷輝英)学生の情報発信で「世代間ギャップ」を埋める学生が大学について紹介をするYouTube「カンプクチャンネル」図2 学生が語る動画特集02Z世代の進路選択とコミュニケーション戦略

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