カレッジマネジメント233号
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53リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022の掛け合わせによる産業DXをけん引する高度専門人材育成事業」の実施機関として採択されました。本学が打ち出してきた「専門教育×ICT」が文部科学省の推進するDX教育と合致した成果であり、他学科にも拡げていければと思います。②研究力強化では、本学の科研費の獲得状況は関西の私立大学で22位※なので、これをさらに引き上げるよう強化していきます。③国際化では、技術論文やマニュアル等が英語であったり、職場で協働する方も海外からの技術研修生となるなど、理系学生にとって国際性は実学の一部になってきています。こうした国際化に対応できるための力を身につけられるよう教育改革を進めていきます。2022年3月には、寝屋川キャンパスをリニューアルし、新時代に向けた本学の武器となる新棟「OECUイノベーションスクエア」が竣工しました。新棟のコンセプトは「研究室間の壁を取り除いてオープン化し、学科間のコミュニケーションを増やす」です。いわゆるタコツボ型と揶揄される日本の工学教育の問題点を解消し、専門分野が交流する新しい教育システムを創造することができる建物を目指しました。様々なオープン化の仕掛けを建物内に仕込んでおり、それを使いこなす教育内容に既存の教育をどうチェンジできるかがカギとなります。既に新棟のコンセプトを象徴するような科目も始まっていて、工学部と情報通信工学部の2学部5学科による合同開講科目「異分野協働エンジニアリング・デザイン演習」では、学部・学科を超えてチームを組み、生物模倣技術による新製品を開発しています。この開発内容は「SDGs探究AWARDS」で2年連続で受賞しています。学部・学科が連携し、まだ誰も体験したことのない教育方法ですが、先生方はよくアウトプットとして形にして下さったと思っています。今後の本学の一番大きな課題は、教員一人ひとりが従来の自分の教育を他分野交流やICT活用の角度からどう見直していけるかだと考えています。国立大学法人化以降、学長に経営者の素養が求められるようになり、21世紀の学長のイメージが変わってきました。企業経営者や文部科学省職員などが学長に就くケースも出始めました。私のような大学職員出身の学長の強みは何かと聞かれれば、40年近く大学に勤め、大学運営に携わる中で蓄積した経験の引き出しを持たせてもらったことだと思っています。まずは第2次5ヵ年計画をやりきるために、学内コンセンサスを結集していくのが私の学長としての仕事です。教員の5割、職員の7割が全学討議に参加し、構成員全員が当事者意識を持って作成したKPI(Key Performance Indicator)でPDCAサイクルを回していきます。今はICTがテーマですが、今後も時代とともに「役立つ」と「実学」を再定義しながら、新棟で異分野と交流を推進し、「目立つ大学より役立つ大学」をコンセプトに、変化に対応できる学生を育める大学となっていきたいと思います。(文/能地泰代 撮影/有田聡子)※文部科学省研究振興局「令和2年度科学研究費助成事業の配分について」より新しい工学教育を創造する新棟が完成大学職員出身の学長の強みとはしおた・くになり1956年生まれ1978年立命館大学文学部史学科卒1978年学校法人立命館事務職員日本私立大学連盟事務局出向等を経て、立命館アジア太平洋大学事務局長、立命館大学国際部事務部長、人事担当部長、株式会社クレオテック取締役2014年東京大学大学院教育学研究科修士課程修了2016年国立大学法人山口大学客員教授兼職2017年大阪電気通信大学大学事務局長・理事2021年学校法人大阪電気通信大学理事(現在に至る)2022年大阪電気通信大学学長

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