カレッジマネジメント233号
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54リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022――大学の質保証に関する今回の審議まとめはどういった課題認識のもとで始まったのでしょうか。教育の質保証の重要性は2018年のグランドデザイン答申以前から言われていたことですが、「質保証とは何か」ということに関しては、実はこれまで明確な合意はありませんでした。科学技術が進歩し学問全体も進化する中、学ぶことの重要性を多くの人が自覚し、就職や生涯のキャリア形成のために大学に行くべきだと考えている。ではその学問の質をどう担保していくのか。また、それをどういう形でシステムに落とし込むか。以前からあったそうした問題があらためて焦点化されたことがきっかけの一つであると思います。また、新型コロナウイルスの感染拡大を機に教育の場にオンライン授業を中心とした新しい技術が導入された背景もあります。すべてオンラインにしてもいいじゃないかという議論がある一方、やはりキャンパスという機能は重要だとする議論もある。学生の反応も、「オンラインになって良かった」という意見もあれば「友達ができず精神的に参ってしまった」という意見もあります。身体に障害がある人や地方にいる人でも授業に出られるというメリットもあるでしょう。オンライン授業一つを取ってもこれだけの影響があるうえに、グローバル化、また経営の問題としては18歳人口が減少する中で学生をどう確保するかという問題もあります。そうした状況の中で教育の質をどのように担保すればよいのかという視点で行われたのが今回の議論であり、質保証をシステムとしてどう機能させていくのかというのが、質保証システム部会の任務だったわけです。――大学の質を担保するものとしては、まず1956年に大学設置基準が定められていますよね。はい。その後、1991年の大学設置基準の大綱化によって規制が緩和されました。しかし、緩和することで大学教育のレベルが下がっては困るということで、事前に非常に厳しいデジタル化、グローバル化、人口減少現代の課題を踏まえた議論が展開吉岡部会長に聞く「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」の目指す方向性今年3月、文部科学省の中央教育審議会大学分科会質保証システム部会における「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について」の審議まとめが公表された。その審議における要点とそれに対する大学のあるべき姿について、質保証システム部会長を務めた独立行政法人日本学生支援機構理事長の吉岡知哉氏に、同部会委員で本誌編集長の小林浩が聞いた。インタビュー特集03新たな質保証システムで何が変わるのかInterview中央教育審議会大学分科会質保証システム部会長独立行政法人日本学生支援機構理事長元立教大学総長吉岡知哉氏

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