カレッジマネジメント233号
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55チェックが入ることになった。するとそれに対する反対意見が上がり、市場原理に任せるという考え方から、大学をどう運営していくのかを各大学がそれぞれに公表し、それを第三者機関である認証評価団体がチェックする流れに変わりました。その時に非常に重要視されたのが「内部質保証」です。“大学が自らの責任によって質を保証する”という点に、より焦点が当たるようになったともいえるでしょう。そのうえで今回、議論で強調されたのが「学位プログラム」です。学位プログラムという教育の一つの枠組みがきちんと作られ機能しているかを各大学が責任を持って保証する。そのためのシステムが質保証システムだと私は理解しています。――学位プログラムというものが浸透し始めたのは比較的最近のことだと思いますが、それはなぜなのでしょうか。一般に多くの大学では学生や教員は各学部または学科に所属しています。それが従来の大学の教育単位だったわけですが、学問自体の進歩や社会的なニーズの変化の中、2つまたはそれ以上の学部にまたがった新しい学問領域が生まれ、新しい領域を学びたいと考える学生も増えたことから、その分野を扱うプログラムが必要になってきました。そうした中、2001年に九州大学が「21世紀プログラム」という学部に縛られない新しいプログラムを作りました。学位プログラムに対して入学試験をし、授業を組み、卒業証書もその学位プログラムに基づいて出すというシステムが動き始めた。イコールの関係だった学位プログラムと学部・学科の関係が分かれ、学位プログラムに大学自体が責任を持つ時代になってきているということです。――今回の審議まとめの「大学設置基準・設置認可審査」の項目の最初には、「学修者本位の大学教育の実現」として「学位プログラムの3つのポリシーに基づく編成、学位プログラムを基礎とした内部質保証の取り組み、内部質保証による教育研究活動の不断の見直しが求められることを明確化」と書かれています。そうですね。大学や学部を設置する際の大学設置・学校法人審議会(以下、設置審)では、単に大学の教員数や面積といった基準だけではなく、なぜその大学や学部を設けるのか、そこでどういう人材を育てるのか、という理念と目的、そのためのいわゆる3つのポリシー、つまり、どのような知識や技能を身につければ学位が与えられるのか、それに合わせて卒業までにどういったカリキュラムが組まれていて、そのカリキュラムを担うための教員がきちんと配置されているか、入学試験等の学生選抜の仕組みができているか、等が整合的に説明されているかどうかを審査しています。今回の質保証システムの審議プロセスは、その点をかなり明確にしたものであるといえます。学位プログラムに大学自体が責任を持つことが内部質保証の本質特集03新たな質保証システムで何が変わるのか「学位プログラムが機能しているか大学が責任を持って保証することが重要」リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022

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