カレッジマネジメント233号
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57リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022例えば技術の発達によって、オンライン授業を全面的に解禁すべきという要望も出てきているなかで、さらに日進月歩で技術はどんどん発達していくわけです。その一方で、オンラインの授業の質保証はまだ確立できていない。こうしたことは並行して別途議論していくべきではないかという議論があり、全面解禁ということではなく、内部質保証が機能している大学であれば「特例」という形で、要件を緩和して教育課程の先導性・先進性を認めて、大学が様々なチャレンジができるようにしていこうという考え方です。――大学にとっては定員管理も気になるところだと思いますが、これはどのように変わるのでしょうか。オンラインになったら定員等必要ないのではないかという極端な論理もありますが、そうはいかないでしょう。なぜなら、日本の大学はこれまで、入学の動機づけから授業、体育会等の課外活動、留学のシステム、そして就職指導まで、学生に対して様々なものを提供してきたわけです。それを考えれば、大学が教育の対象として持つことができる学生の数はそれほど多くはないと思います。大学教育というものは大学が面倒を見ることができる学生の数において機能するわけですし、定員を外してしまえという議論は日本の大学には馴染まないと思います。一方、今非常に問題となっているのは、例えばA大学で新しい学部を作ろうとした際に、既存の学部が入学者を少し採り過ぎてしまっているため新学部設置が認められず、断念するといったケースです。それでは足かせが過ぎるので、年度ごとの入学定員で規制するのではなく4年間の収容定員で見るよう変更される予定です。また、既存のA・B・C・D学部が定員を満たしていないのに、新たにE学部を多くの定員数で作ろうとする大学も見られます。しかしそれは大学側、経営側がきちんと教学全体を管理できていないということです。そういうことを防ぐためにも、入学定員ではなく収容定員にし、かつ複数年度での平均で定員数を見ていくことが考えられています。――今回の審議まとめでは多様性、柔軟性、流動性ということが強調されつつ個々の大学の強みの強化という言葉も盛り込まれています。大きな大学と中小の大学、また一般課程と通信課程など、それぞれ体制や文化が異なる中、今回の審議まとめ等によって大学の個性がうまく生き、高等教育における多様性がうまく広がるといいですね。今回の審議まとめにおいて非常に重要なメッセージとなるのは、それぞれの大学が自学の中に個性や多様性を持つことをきちんと自覚し、そのためのカリキュラムを編成すべきということです。よく「大学は社会のニーズに応えるべきだ」と言われますが、そのためには、大学が自らの中の多様性を、経営陣が現在考えているよりさらに広い視野で自覚的かつ柔軟に広げていかなければならない。実は現状の設置基準でもかなりできることがあります。今回、さらに制度を変えることにより、その柔軟度は確実に増すでしょう。新しいことに踏み出す場合には責任も伴いますが、時代のニーズに応えるべく柔軟に新しいことに取り組んでほしいと思います。(文/髙橋晃浩 撮影/平山 諭)社会のニーズに応えるためにも経営陣が広い視野を持つことが重要特集03新たな質保証システムで何が変わるのか

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