カレッジマネジメント233号
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58リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022質保証システムの改善や充実についての審議は、平成30年11月に中央教育審議会によって取りまとめられた「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下「グランドデザイン答申」という)において、大学設置基準等の質保証システムの見直しが提言されたことを受けて始まった。質保証システム部会では、国際通用性を確保しつつ、時代の変化に対応した質保証システムへと充実させるべく、令和2年7月から17回(同部会の下に設置された作業チームでの審議(3回)を含む)の審議を重ね、「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」(以下「審議まとめ」という)を取りまとめた。今回は、その内容を解説するとともに、今後のスケジュール、今般の審議まとめを踏まえて大学に留意頂きたいことについても取り上げる。日本の質保証システムは、主に大学設置基準、設置認可制度、認証評価制度、情報公表で構成されており、大学として最低限の水準を満たしていることを保証する事前規制の長所と、大学の多様性に配慮し、恒常的に大学の質を保証する事後チェックの長所を組み合わせた設計になっている。質保証システムの見直しについて検討するにあたっては、質保証システムで保証すべき「質」とは何か、また、その前提としての「大学の在り方」を考える必要がある。「グランドデザイン答申」以来、学修者が「何を学び、何を身につけることができるのか」を明確にし、学修の成果を学修者が実感できる教育が求められてきた。これに加え、今般の新型コロナウイルス感染拡大を契機として、遠隔教育が急速に進展するとともに、困難な状況下でも大学の活動を継続するという「大学のレジリエンス」も意識されることとなった。このような時代の変化の中にあっても、質保証システムで保証すべき「質」とは、大学の目的から考えると「教育研究の質」であり、これは、社会の発展のためにその成果を提供できているかということである。「教育の質」は「学生の学びの質と水準」であり、学生が学びたいことを学べる条件や環境が大学に整っているかという点から確認できる。「研究の質保証」はこれまであまり論じられてこなかったが、持続的に優れた研究成果を出せるような研究環境の整備や充実等が行われていることを確認することが考えられる。これらを質保証システムで確認・担保することに加え、3つのポリシー(注)と内部質保証の取組を踏まえて大学自ら強みや特色を分析して打ち出していくことが、日本の大学等における教育研究の質の保証・向上につながる。大学における国際通用性のある「教育研究の質」を保証するため、最低限の水準を厳格に担保しながら、大学教育の多様性・先導性を向上させる方向で、質保証システムの改善・充実を図っていくことが求められている。このような問題意識の下、部会においては、「学修者本位の大学教育の実現」と「社会に開かれた質保証の実現」を検<審議まとめの内容>「新たな時代を見据えた質保証システムの改善・充実について(審議まとめ)」で何が変わるのか寄稿Contribution文部科学省高等教育局企画官(併)高等教育企画課高等教育政策室長柿澤雄二 氏

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