カレッジマネジメント233号
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61リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022システムの弾力化を求める関係団体等からの要請、意見も参考としたが、なかには、現行の制度下においても現行制度の運用により対応可能なものも含まれていた。例えば、現行制度において遠隔授業は、卒業に必要な124単位のうち60単位が上限とされているが、近年の通知等により面接授業で実施することが必要な64単位分についても、授業時数の半分未満であれば遠隔授業で実施可能であることを示しているなど、大学の運用で相当程度まで遠隔授業の活用が可能となっているが、こうした現行制度下での柔軟な取り扱いについて、大学関係者に必ずしも十分に浸透していないことが明らかになった。そこで、部会においては、国において、現行制度の解釈や運用等についても改めて整理を行い、適切に周知等を図ることで、制度のより効果的な活用を促すことが必要である旨が提言されている。併せて、国において、遠隔教育の質保証、面接授業と遠隔授業を効果的に組み合せたハイブリッド型教育の確立に向けたガイドラインの策定等を行うことも提言されている。(定員管理)定員管理の在り方は、教育環境の確保等の観点から大学の質保証を行ううえで重要な論点である。一定数の学生に対して、必要となる専門性を備えた一定数の教員や施設設備等の教育環境が備えられていることを確認する必要があるという定員管理の考え方に基づき、必要な教育環境の確保のため、引き続き学部学科を単位とした定員管理が必要という結論に至った。一方、基盤的経費の配分や設置認可審査の際の基準には、現在、厳格な入学定員管理が適用されているが、例えば、ある一つの学部で入学する学生の数を読み誤り、過大に合格者を出した結果、平均入学定員超過率が基準を超過してしまう等により大学全体で組織改編が行えなくなる、毎年度大幅に基盤的経費が増減し、安定した大学経営や教育研究が困難になる、などの課題が指摘されている。これらの課題に対応するため、定員管理の政策上の運用については一定程度弾力化し、現行で入学定員に基づく単年度の算定としているものは、収容定員に基づく複数年度の算定へと改めることが提言されている。(質保証を担う教職員の資質能力の向上)大学が各質保証システムの特性を理解しつつ教育研究の質向上に取り組むうえで、事務職員の資質・能力の向上やハイブリッド型教育を含む授業改善が重要である。各大学での創意工夫のみならず、大学団体や大学間で共同実施されているSD(スタッフ・ディベロップメント)・FD(ファカルティ・ディベロップメント)の取組等を把握・周知することで改善・充実を促進することも提言されている。文部科学省においては、審議まとめを受けて、大学設置基準等の本年度中の改正に向けた作業を進めている。本年度から実施可能なものは早期に実施しつつ、それ以外のものについては準備を進め、順次、制度の運用を開始する予定である。「審議まとめ」を受け、今後、大学の先導性・先進性の向上に向けて大学の裁量をより高めていく見直しが行われることとなり、高等教育の質保証に対する各大学の責任ある取組が一層求められる。各大学におかれては、質保証システムの見直しのための制度改正を注視いただき、学内における体制整備等、適切な運用をお願いしたいと思う。また、教育研究活動の充実に当たって、各大学の学修者本位の観点からの創意工夫ある取組に期待している。現行の制度においても、各大学の判断や運用等で対応可能な取組は多くあり、加えて今後新設が予定されている教育課程等に係る特例制度をご活用頂くことで、さらに多様な取組に挑戦頂けるはずだ。ぜひ現行の制度、特例制度ともに積極的にご活用頂き、大学が社会からの理解と支持を得て、質を保証し高めながら、さらに教育研究等を充実させていけるよう、文部科学省としても様々な施策の充実に取り組んでいきたい。特集03新たな質保証システムで何が変わるのか<今後のスケジュール><「審議まとめ」を踏まえ大学に留意頂きたいこと>(注)3つのポリシー:「卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)」「教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)」「入学者受け入れの方針(アドミッション・ポリシー)」。学校教育法施行規則に基づき、その策定・公表が各大学に義務づけられている。

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