カレッジマネジメント233号
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66リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022計画の全容は図1に示す通り、「医療系大学における学生参加型AI開発による学修者本位の教育の実現と普及」をテーマに、「A.基礎的な知識の定着を図るAIでリメディアルや初年次教育を支援する」「B.デジタル空間の刺激により学びを動機づけるAIで多様な学びを支援する」「C.学生一人ひとりに最適化した教育を実現するAIで教育の更なる高度化を図る」の3つで、「医療人を目指す学生の視点に立った学修者本位の学修支援」を展開する。そして、その基盤として、「全学的に初年次データサイエンス教育を実施」する点が含まれている。学修者本位の教育実現のために、AIが導き出した結果の意味を読み解き、正しく活用するDS力こそが重要だという。では、こうした全体計画を背景に、MDASHに採択されたプログラムの内容を見ていこう(図2)。採択プログラム名は「医療系大学での学びあいと内製AIによる学修者本位の教育」。全学部初年次教育でモデルカリキュラムに相当する「情報科学」「情報処理」系の科目を課し、基礎的なDS力を培う。その学び方の独自性がプラスとして評価された。それが、オンライングループワークや同僚間アンケートを用いた学生同士の「学びあい」の仕組みである。 具体的には、授業のなかで、定められたテーマについてオンラインドキュメントに意見を出し合い、着眼点の違いを可視化し、自らの意見をメタ認知したり、切り口の相違を手掛かりにディスカッションを深めるといった手法や、AI解析の方法論を学んだ後にサンプリングのためのアンケート設計や集計を自ら行うといった手法等がそれに当たる。学生同士で回答し合うことで、当事者意識のある生きたデータ分析プロセスを体験できる。「学びあい」は学びの幅を広げると同時に、学生自身の主体性を引き出し、授業の学修成果を高めることに大きく寄与する。また、「話し合った言葉や結果がテキストデータで蓄積されていくのがオンラインツールを用いる最大の利点」と二瓶氏は言う。授業と連動した様々な学修ログを追加することで、学生の動向や意見を踏まえたAI開発が可能となる。学生がAI開発自体に参加する応用科目も設置した。二瓶氏は、「AIのパラメータ調整に学生の声を入れることで、学生の学びに寄与するものが作れると考えました」とその狙いを話す。「AI開発に学生参加型手法を取り入れることで、補助期間終了後もポストコロナを見据えた継続的な教育の高度化を推進したい」。医療系学部は専門教育の厚みに加え、国家資格取得に向けた準備等でカリキュラムは過密であり、そこにDS教育を追加するとなると教育の設計難易度は困難を極める。医療大の場合、既にカリキュラムに織り込まれている授業オンラインを利活用したアクティブラーニングによりDS教育の成果を最大化する図2 MDASHリテラシープラス採択プログラムの全容オンライングループワーク同僚間アンケート他者の意見を手掛かりにすることで「分かりやすさ」を向上他者のアンケートに答えることで授業参加意識と「学修意欲」を向上AI e-ポートフォリオAI e-履修管理シート学生が学んだことやグループ討議の結果を可視化してフィードバック膨大な数となる質問等をAIで解析して優先度が高いものを抽出学生どうしの学びあいと内製したAIの活用により、医療系学部学生3000名に学修者本位の数理・データサイエンス・AI教育を実施学生どうしの学びあいの教育手法(教材)と内製したAIのプログラムをオープンソース化して、本教育プログラムを全国へ広く普及・本学で内製したAIの実体験 データやAIを活用した新しいサービスと自らの生活との結びつきについての知識を修得・実社会のデータを使った演習 日常生活や社会における課題を解決するためのツールとしてのデータ活用力を修得・オンライングループワーク 他者と協力しながらデータやAIを利活用できるコラボレーション力を修得・セキュリティー事故の実態調査 インターネットを安全に使うことができる能力を修得・学生どうしの同僚間アンケート 現場で役立つデータ分析力(データを読む、説明する、扱う力)を修得特色ある学修方略数理・データサイエンス・AIについて、学生が身につけられる能力・全ての授業回で、授業回ごとに設定した到達目標に対する学生による自己評価や質問や感想を専用フォームで受け付け・受け付けた自己評価や質問・感想を分析して授業内容を点検する等して学習者本位の教育を実現・DX推進計画専用ページには、コンテンツの1つとして、「数理・データサイエンス・AI リテラシーレベルの授業実践」も紹介・本学DX推進計画(「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」に採択)を「情報センタープロジェクト」として遂行・数理・データサイエンス・AI教育の全学的な普及を目指して、令和4年よりプログラムを構成する授業科目を全学必須化・本プログラムを構成する授業のテキストと教材を共通化し、年間700名に上る履者状況をAI e-履修管理シートで一括管理オンラインアプリケーションによるデジタル空間での学びあい内製したAI(機械学習)システムによる学修・教育支援授業内容・概要体制・計画点検・評価特色ある取り組み

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