カレッジマネジメント233号
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7リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022高校や大学時から、問題意識を持って解決に当たる「探究」を行っていた人達は、10年後どうなっているのだろうか?社会に出てなお深く探究し続ける彼らが、今挑む問題とは。特集01大学における探究2.0貧困、障碍、介護といった社会問題をテクノロジーの力で解決するために起業しました。現在の事業は大きく二つ。社会問題解決に取り組む企業へのデジタルマーケティングのコンサルティングと、ESG経営を推進する企業とNPOをマッチングするプラットフォームの運営です。目下、ひとり親の時間の貧困を解決する、廉価での家事代行サービスの開発に取り組んでいます。私自身、貧困、家庭内暴力、ひとり親といった環境で育ちました。その時に負った心の痛みが、私が社会問題に取り組む原点です。始まりは「学校」という社会の問題解決中学、高校では生徒会長を務め、生徒が過ごしやすい学校作りに没頭しました。「伝統だから」という理由で慣習を踏襲する違和感から、全校生徒にアンケートを取って、体育祭も文化祭も希望に沿った内容に変えました。これまでの当たり前を疑って、相手のニーズを知り、解決策を実行して状況を改善させるのは楽しかったですね。大学は教育学部に進み、昔の自分のように困っている子どもを助けたいと、授業やNPOの活動を通じて、多くの子どもと親に会いました。実態を把握し、原因から課題を設定して、解決のために学生団体を立ち上げました。悩みを持つ中高生に、安心して過ごせる居場所の提供や、キャリア講話の実施、大学や企業への啓蒙に取り組むうちに、「もっとたくさんの人を救うにはどうすればいいのか?」という新たな問いが生まれて。テクノロジーの力を借りれば、必要な人にサービスを届けることも、協力してくれる人に出会えるチャンスも増えるのでは、と考えたんです。志を同じくする企業や団体が協業すれば、互いのアセットや知見が相乗効果を生み、問題解決のスピードもインパクトも大きい。そのためのプラットフォームを作りたいと、今に至ります。まだまだ人々の関心が高いとはいえない社会問題。ましてやこの領域でビジネスとして成功した事例は少なく、私自身、試行錯誤の連続です。しかし10年後の日本で、社会問題解決のビジネスが勃興し、世界で存在感を高めている—。そんな未来を目指しているからこそ、最初の成功事例となって、ビジネス活性化の素地を作ることに取り組んでいます。誰かの泣いている時間を減らして、笑っている時間を増やすことが私の使命。探究に、終わりはありません。(文/武田尚子 撮影/平山 諭)南 翔伍 さん(29)株式会社SHIRO 代表取締役テクノロジーで他者と協業し難題を解決する人どうしたら貧困や格差はなくせるのか

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