カレッジマネジメント233号
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リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 202270コピー的に増やしたい場合は効くのですが、VUCAの時代はそうはいかない。また、演繹的に「うちの会社に向いている人はこう」と決めるアプローチも現在の会社の状況を起点とするため、今後必要となる人材の規定には向かない。こうした検討には、いつの事業に必要な人材を採るのかという時間軸の検討も必要になります。いずれにせよ、定義をしなければ評価はできませんから、まずは人材要件を決め、基準を決め、アセスメントを決めるという順で採用を設計していきます。この一つひとつの構築にはかなりのパワーがかかるため、構造化面接はそこまで普及していないのです。 ――面接は大学入試でも多い手法ですが、構造化以外に注意すべき点はありますか。面接とは人間性やポテンシャルを見るためのプロセスですが、それらを見抜くポイントとして、「抽象的な主観ではなく、過去のエピソードを聞く」という点があります。エピソードに対する解釈ではなく、事実そのものを丁寧に掘り下げることで、論理的思考力等の基礎能力が分かる。また、会社は組織で仕事をする人が欲しいわけなので、1人で頑張ったことよりも、人と関わって成果を出したことを聞く。また、順風満帆なエピソードよりも、苦労した話や嫌いなことを工夫して楽しんだことのエピソードに、義務で課されることをセルフモチベートできる特性を見出すことができる。得てして「自分の好きなこと」「自分の頑張ったこと」を中軸に置きがちですが、それは入社後発揮される力ではないことが多いのです。仕事の場合は、決して「好きを仕事にする」ばかりではありませんから。面接で測るべき内容に照らして見るべき要素を決め、それを抽出しやすい問いかけを決め、内容についてはその人が言っている意見や主観を排除して、事実を見ることが大切です。――ほかのトレンドは何でしょうか。2つ目はSPI等の適性検査です。長らく面接の補助資料的扱いでしたが、現在大復活を遂げています。例えば、先に挙げた帰納的アプローチの時に適性検査を分析対象に加え、ハイパフォーマーを性格×能力で科学するといった扱いが増えてきています。実際の仕事を起点とした要件定義の細分化が進んでいることが背景にあります。例えば、同じ不動産営業でも、都市部の営業と郊外の営業では適性が異なりますし、23区でも城南と城北では売れる営業は違います。エンジニアでも開発系と保守系で要件は違う。学問ならば「理系」と括られている物理学と化学でも違うかもしれない。そうした実際のフィット感を科学するには、適性検査の分析が適しているのです。3つ目はAIです。ある程度機械的に判断できる選考では、AIは大変有効ですし、最近伸びている録画面接では、録画映像の表情・声の抑揚・言葉等からAIアセスメントが可能です。妥当性が高い要素に絞り込む段階までは行っていませんが、科学できる範囲が増えているのです。ほかに、個人の素質よりも、「他者との関係性をどう捉える傾向があるか」という特性のほうがパフォーマンスに影響する、とする検査もあります。営業が得意な人と不得意な人が図表3 人材ポートフォリオの例チームで成果を出す個人で成果を出す既存手法の運用新しい価値の創造※( )内の%は全社員内訳イメージ②マネジメント人材(現場管理職)(10%)①エグゼクティブ人材(将来の経営陣)(5%)④オフィサー人材(経営参謀)(5%)⑤スペシャリスト人材(特殊技能・専門家)(20%)⑥スタッフ人材(バックオフィス)(20%)③プロフェッショナル人材(各職種のプロ)(40%)入試は社会へのメッセージ選考の多様化は1つの手法では対応できないことの表れ

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