カレッジマネジメント233号
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73リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022です」。新課程入試が始まる2年後に探究世代に選ばれる大学であることが1つのマイルストーンだ。「学びの姿勢が備わっている学生が前提になったときに、入試はどう変わるのか、教育は今のままでいいのか。本学のように小さな大学にとって、少子化の圧力はとても大きい。常に大学の教育の質を上げられるかが一番大事です」。入試はそうした教育の第一歩というわけだ。ベースを揃える一方で、ICUは多様性を重んじる大学でもある。受験者の個をどのように見出すのか。APを満たす人材を選抜するために多様な方式を揃えているが、重点を置くところは方式ごとに異なる。各方式で課す面接やATLAS、エッセイ等はAPを測る手段だが、「入試対策が進めば進むほど似たような学生が集まってしまう」と平島氏は苦言を呈する。「本学の教育に必要なベーススタンスは揃えつつ、独自性・個性のある学生をぜひ採りたい。準備された答えをいかに裏切るのか。それまで考えたことがなかったような質問に対してどう対峙するのかを見たい」。ベースは揃えつつ、個を見出せるように、個が浮かび上がるように配慮しているのだという。このあたりがICUの作問の絶妙なところだろう。ICUは「個別最適な学び」をリベラルアーツで実現し、その教育に必要な特性を「知に向かう姿勢・正解のない問いに対峙する姿勢」と定義した。そしてそれこそが、ICU教育へのカレッジ・レディネスにもなっているのだ。「本学は入試で判定しづらいものを敢えて入試で課しています。しかし、結局それが大学教育への適応力になる。様々な要素が絡みあった、予測の難しい時代を生き抜くために必要なのは、不確実ななかでどう行動できるか。それが大学教育に問われているし、そうした教育に対してどういう資質があるのかを見たい」。平島氏の言葉はゆるぎない。(文/鹿島 梓)ニケーション能力の基礎となる。「ダイアログとは、相手の話を理解して自分の意見を述べる対話。ある程度の時間集中して話を聞けるかというのは大事な観点です」(平島氏)。続く論述では異なる学問的観点から書かれた内容を読み解き、それぞれについての設問に答える。多角的に俯瞰的に物事を捉え、関係性を想起できないと解答が難しい。また、当該テーマについて一度でも自分なりに考えたことがあるかどうかが分かるように作問は工夫されている。逆に言えば、そうした主体性と知的体力のある生徒であれば、取り組むこと自体が楽しい。「本学は必修科目が少なく、自分の問いを起点に自分で学びを設計する力が必要です。その自由度の高さゆえ、自らの興味を自ら広げるスタンスかどうかを見る必要がある。知識を求めているのではなく、知識を得ようとする姿勢を見たい」との平島氏の言葉通り、まさにICU教育のプレ教育とも言える入試だ。企業採用で言うところのワークサンプル型である。ICUにおいては、学校で習ったことをどれだけ理解しているかという従来の知識・技能型選考よりも、社会問題に対して課題意識を持てるか、主体的に調べたり考えたりできるかを問うことで、教育へのフィット感を判定していると言えよう。「入試は学生を選抜することも大事ですが、ICUがどのような教育を実践しているかという、社会に対するメッセージにもなる」と平島氏は言う。特に、高校の先生に向けて直接訴えかけることができる手段が入試であるという。「探究に親和性が高い高校はきっとICUの教育にも親和性が高い。高校で探究を導入する時に、思い出してもらえるようなポジションでありたい。そのあたりは課題であり模索中図2 主な入試方式(一部を抜粋)入試は社会へのメッセージ総合型選抜英語外部試験利用第二次選考オンライン個人面接理数探究型オンライン個人面接(「自然科学分野の自主研究や理数探究」についてのプレゼンテーション(10分)を含む)IB認定校対象オンライン個人面接(日本語及び英語、「課題論文の内容と成果(見込み)の要約」についてのプレゼンテーション(日本語、10分)を含む)一般選抜A方式人文・社会科学または自然科学のどちらか1科目を選択:80分:80点総合教養(ATLAS)(リスニングを含む):80分:80点英語(リスニングを含む):90分:90点B方式第一次選考総合教養(ATLAS)(A方式と同一内容):80分:80点英語外部試験第二次選考個人面接

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