カレッジマネジメント233号
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78リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022のニーズに柔軟に対応できるようにするための工夫であるが、実際には最終年まで待たず、PENTAS2年目となる2022年4月に5つめのプログラム「次代を担うアントレプレナー養成プログラム」が発足し、前倒しで全プログラムが稼働した。このように5プログラムから構成されるPENTASカリキュラムは、山梨県立大学の教養科目に位置づけ、大学アライアンスやまなしによる連携開設科目として山梨大学にも展開されている。忘れてはならないのが、全プログラムの共通科目として「VUCA科目」が横軸で貫かれている点だ。もともと「VUCA時代の成長戦略を支える実践的教育プログラム」と掲げられている通り、VUCAと呼ばれる先の見えない時代を生きるための、新しい価値観や視点を醸成する講座が並ぶ。「VUCA時代のキャリアレジリエンス」「グローバルマインドとスキル」「地域しごと概論」等だ。この科目を共通とした背景にはCOC+での反省があると杉山氏。「例えばCOC+で観光のプログラムを履修したら、学生にとってその経験は『自分はスペシャルな講座を受講した』というガクチカ(『学生時代に力を入れたこと』の略語)になる。そのガクチカは、結局のところ業界のヒエラルキーの上の企業への応募の武器となっていました。これはCOC+の目指すところではありません。ですからCOC+Rでは有名企業にアプライするための武器ではなく、先行き不透明なこれからの時代を生き抜くための武器であることをちゃんと学生に感じてもらうことが大切だと考え、VUCA科目を作りました。有名企業を目指すだけじゃない生き方があること、東京での就職を考えるより山梨で働くことがかっこいいかもしれない、といった気づきを得てもらいたいと思います」。VUCA時代へのマインドセットを伝え、新しい価値観を育てることが、地域で活躍する新しい人材を育てる。知識やスキルの学びと並行して、多様な生き方の可能性を伝えることを重視したPENTASの挑戦だ。PENTASでは社会人も受講できると述べたが、そもそもCOC+Rは学生が対象なのでは、と疑問に思われる人もいるかもしれない。杉山氏は学生のためにも社会人の教育が必要だと語る。「COC+の時にもやる気のある学生が地域社会に触れる機会がありましたが、県外に出ていってしまう。それは地域の企業の魅力を伝えられる社会人が少ないことも一因。そのため社会人に対するVUCAの時代を生きるための教育の必要性を感じていました」。結果的に社会人が同じ授業に参加していることは、一般の学生達にとっての良い刺激となっていると杉山氏は言う。PENTASでは2022年度から多くの科目を高校生も受講可能になった。高校生の費用は社会人の半額とし、山梨県立大学に進学した場合、PENTASの修了カリキュラムを単位として認める仕組みだ。つまり高校時代に大学の単位を取得できるということになる。2022年度PENTASでは、高校生への説明会を開講直前の3月に初めて行ったにも拘わらず、37人もの応募があった。「PENTASで社会人を受け入れるという点を拡大解釈して高大接続に活用できないかと考えたのが始まり。そこから高校生が有料で履修でき、入学後に取得単位として認めるところまで、事務局が制度化に尽力しました。こういった高大接続は申請時には意図していなかったことですが、COC+Rの一番の成果かもしれません。意欲の高い高校生がPENTASに参加することで、それが本学への入学試験において加点となるような総合型選抜も検討する必要性を感じています」(杉山氏)。土日だけで構成される授業を取り入れたことや、クオーター制により8コマ1単位のカリキュラムを増やしたこと等、社会人のために作られたプログラム構成は高校生の参加のしやすさにもつながっているという。高校生にはビジネス構想力やアントレプレナー系のプログラムが人気だという。「VUCA科目」は全プログラム共通科目社会人も受け入れるPENTAS高校生は大学の単位取得が可能に地域連携で発展する大学 

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