カレッジマネジメント233号
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8リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022小林:まず、それぞれのご活動内容についてご紹介ください。荒瀬:私は現在教職員支援機構に所属しています。主に初等中等教育の先生方の指導やマネジメントについて、研修したり支援したりする組織です。かつては京都市立堀川高校で、生徒自身の課題探究型の学習を中軸に置いた教育を試行錯誤しました(※1)。当時多く頂いたのは、「探究をやっていて大学に受かるのか」「教科の内容をきちんと生徒に伝えるのが教育ではないのか」といった声です。生徒がしたいことを中軸に置くことへの疑念や反発のほうが強かった記憶があります。今村:私は認定NPO法人カタリバ代表理事を務めています。大学卒業と同時にNPOを立ち上げ、学校・行政・自治体・家庭等、教育を担う方々と、もっと教育を楽しくしていくためにはどうしたらよいか対話を重ねながら活動をしてきました。現在は、「子ども達と対話的に次の社会を作っていく教育の形を創る」というコンセプトを実現するに当たって、不登校やヤングケアラーを含む生活困窮世帯の支援や被災地支援、対話的な校則の見直し等、多様な事業を展開しています。20年間子ども達を見てきて、探究教育の意義と現場とのハレーションを痛感することが多かったので、新課程で探究がど真ん中に来たのを感慨深く感じます。鈴木:私が所属するボーダレス・グループは、ビジネスで社会問題の解決に挑戦しているグループで、現在15カ国45事業の集合体になっています。ソーシャルビジネスが扱う社会課題は貧困、差別、環境問題等たくさんあるので、その解決についても多くの起業家が必要です。起業の起点になるのは個人の問い。しかし、何かしらの想いはあっても、多くの人は一歩目をなかなか踏み出せません。我々はそうしたチャレンジを支援するスキームを持っています(図1)。起業家としてのスキルセットがなくても想いに対して投資されるようにシェアリングされて挑戦できる。それがより良い社会を作るインパクトになるという流れです。小林:「VUCA時代を生きていくために教育は何ができるのか」が近年の高大接続改革の起点でしたが、未だ教育業界のなぜ教育に探究が必要かこれからの社会において活躍できる探究的人材の育成を高等教育機関でどう実現していくのか。「そもそもなぜ教育に探究が必要なのか」を起点に、高校・大学・社会という各領域の有識者であるお三方に、座談会形式でお話を伺った。roundtable座談会(ファシリテーター)リクルート進学総研所長カレッジマネジメント編集長小林 浩●荒瀬克己氏独立行政法人教職員支援機構理事長●今村久美氏認定NPO法人カタリバ代表理事●鈴木雅剛氏株式会社ボーダレス・ジャパン代表取締役副社長物質的に満たされた時代に予測不可能な社会で生きるということ

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