カレッジマネジメント233号
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85リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022関係についてである。具体的には、ガバナンスが強化されれば、戦略的経営、適正で効率的な運営等マネジメントの質が高まるという、一方向の関係ではないということである。ガバナンスを機能させるために不可欠なトップマネジメントの考えや姿勢、スタッフの意識や能力、組織風土等は、日々の業務遂行、職場内の関係、人事施策等を通して形成されていくものである。マネジメントの質が、ガバナンスの質を決める部分も大きいことを理解しておく必要がある。ただ、これではガバナンスとマネジメントの間に双方向の行き来があるだけで、どちらの質も高まらない可能性がある。その解決の決め手は「ガバナンスの見える化」である。機関別認証評価において内部質保証が重視されているのと同様に、ガバナンスに関するトップの考え方と具体的なメカニズムを、理解しやすい形で可視化し、公開するのである。自らを晒すことで経営に緊張感が生まれ、評議員や監事のみならずステークホルダーの監視の目も生きてくる。繰り返される改革に戸惑う前に、社会に信頼され、支持されるために何が必要かを、それぞれの学校法人が自ら考え、ガバナンスとマネジメントの両方の質を高め、その姿を広く示していく必要がある。理事が説明者として出席し、方針を述べ、成果を報告する場を、緊張感があり、同時に率直に話し合える場として実質的に機能させられるかが、本改革の成否の鍵といって過言ではない。この点において、評議員会の議事運営を主導する議長とそれを支援する事務局の役割は重要である。議長と事務局には、新たな制度における評議員会の位置づけや役割に関する十分な理解と、これまでにも増した主体的な判断や行動が求められる。ガバナンスを機能させるために、組織や制度を変えることは必要だが、新たな組織を動かし、制度を活かすための運用についても同時に考えておく必要がある。組織・制度をハード、運用をソフトとすると、ハードとソフトが揃って初めてガバナンスが機能することになる。このソフトに大きな影響を与えるのは、理事長をはじめとするトップマネジメントの考えと姿勢である。事務局機能を担うスタッフの意識や能力も運用の巧拙を左右する。改革の意味を十分に理解しないまま、手続きに則り、形式を整えるだけでは、ガバナンスは機能しない。もう一つ強調したいのはガバナンスとマネジメントの決め手となるのは「ガバナンスの見える化」実効性の高い真のガバナンスの確立に向けて(概念図)事務局の主体的な関与組織・制度トップの見識・姿勢・言動ステークホルダーガバナンスを機能させる要素ガバナンスとマネジメント運 用ガバナンスの見える化ガバナンスマネジメントガバナンスの質がマネジメントの質を決めるマネジメントの質がガバナンスの質を決める

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