カレッジマネジメント233号
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9リクルート カレッジマネジメント233 │ Jul. - Sep. 2022変化半ば、改めて大学の役割を考えるに当たり、「なぜ探究学習が必要か」について、ご意見お聞かせください。荒瀬:「探究」とはリサーチです。つまり、答えがあるかないか分からない、あるいは1つとは限らない、そのような対象に取り組むことです。一方、「探求」の場合はサーチ、どこかにあると分かっているものを探しに行く行為を指します。学習指導要領は「探究」です。また、探究の「究」は研究の「究」ですが、研究は自分でテーマを設定し、仮説を立てて実験や観察、調査を行います。探究も同じように取り組みますが、主眼は生徒自身が学び方を身につけていくことです。未知のものにどう接していくのか、その方法の習得こそが探究学習の目的です。研究だと先行研究があることをなぞるだけでは研究成果として認められませんが、探究の場合はそうしたアプローチでも生徒が学び方を身につけられるのであればOKです。それが探究の教育的意義だと考えます。小林:そうしたマインドセットの生徒達が進学してくる。当然大学は対応が求められますね。荒瀬:探究経験者が増えてくると、学びも卒業後の進路も、学生自身が考えられるようになっているので、とても良いことだと思います。今回の学習指導要領のポイントは主語が教師から学習者に変わったこと。学びの主体を生徒と置き、そのきっかけの提供や情報の提供を教師が伴走して行う。自分の学びが学習者自身の手に委ねられている。自分が何をしたいのか、自分がどう生きるかというのを、探究活動から見出していくのです。そうした学生がのびのび成長できるように、大学教育が設計されると良いですね。小林:カタリバは、なぜ探究を軸に置くのでしょうか?今村:今の子ども達は、物質的には十分満たされている世代です。その一方で新たな問題として、「意欲が湧かない」というメンタリティがある。意欲が湧かないのにも拘わらずタスクリストはたくさん用意されていて、勉強もそのうちの1つという状態。そこにどう主体性を伴わせることができるか、というのが我々の課題意識です。背景には私個人の原体験があります。私は飛騨高山で生まれ育ったのですが、中学校の頃、学習の一環で用意されていた職場体験で、親以外の大人にしっかり怒られました。ま特集01大学における探究2.0図1 ポーダレス・ジャバンのビジネスモデル「恩送りシステム」の概要●荒瀬克己 独立行政法人教職員支援機構理事長京都市立堀川高等学校長、京都市教育委員会教育企画監、大谷大学文学部教授、兵庫教育大学理事、関西国際大学学長補佐を経て現職。中央教育審議会副会長、初等中等教育分科会長、教育課程部会長、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会長、教育振興基本計画部会、教員養成部会、「令和の日本型学校教育」を担う教師の在り方特別部会、幼児教育と小学校教育の架け橋特別委員会等の委員、「令和の日本型学校教育」の実現に向けた通信制高等学校の在り方に関する調査研究協力者会議座長、大学改革・学位授与機構国立大学教育研究評価委員会委員等を務める。著書に『奇跡と呼ばれた学校』(朝日新書)、『「アクティブ・ラーニング」を考える』(共著、東洋館出版社)等。『月刊高校教育』(学事出版)にコラムを連載。NHK『プロフェッショナル仕事の流儀』で、「『背伸びが人を育てる』校長・荒瀬克己」に出演。余剰利益余剰利益余剰利益資金・ノウハウNEW起業起業起業起業起業黒字化STEP 01各社の余剰利益を共通のポケットにSTEP 02共通資金で起業家をサポートSTEP 03黒字化した起業家は恩を送る側へABCDEFGABCDEFGABCDEFGHI

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