基礎知識 大学・専門学校の小論文とは?

AO入試や推薦入試では課されることがよくある小論文。
どのくらい書くの?何を書いたらいいの?と不安を感じているキミに知っておいてほしい「小論文の基礎知識」を解説。

小論文とは?

小論文とは与えられたテーマに対して、自分の意見とその理由を論述するもの。結論が明解なこと、論理的な構成などが求められるが、表現の美しさや余韻などは特に必要とはされない。これに対して作文や読書感想文は自分の体験や感じたことを書き綴るもの。厳密に論理性を求められることはないので、作文と同じようなものと考えて小論文に臨むのは危険だ。大学入試の小論文には、簡単にテーマだけが提示される「テーマ型」、課題文を読ませる「課題文型」、資料をもとに論述する「データ型」がある。このほか、自己PRに近い内容の小論文や、教科の知識を測る内容の小論文もある

小論文の重要性

高校の成績を重視しないAO入試や自己推薦入試で小論文が課される場合は、ほかの推薦入試と比べて重要性は高いと考えていいだろう。面接で小論文の内容について質問されたり、志望理由書や自己PRとの整合性などを見られたりすることもあるので、単なる1試験科目という位置づけより重い。公募制推薦入試では、高校の成績の評価が入る分、学科や小論文試験の重要度は少し下がるが、もちろん油断は禁物。指定校推薦の場合は、一般的な対策をしておけば小論文で落ちることはまずないと考えていい。専門学校のAO入試・推薦入試で小論文・作文を課すことがあるのは看護・医療系、保育系など。中には重視する学校もあるので注意。

小論文のポイント

ポイント① 結論を明確にする

結論とは、要するに自分の意見や主張のこと。これがないと小論文にはならない。例えば、「人口減少について論じなさい」というテーマを与えられたとき、本質的に求められているのは、人口減少について説明することではなく(要素としては必要)、「自分はどう考えるのか」という結論だ。そのため、テーマについて考え抜いて、設問にしっかりと答える自分なりの結論を明確にすることが何より重要。「一般的にこう言われている」「こういう意見もあればこういう意見もある」で終わってしまっては結論にならないので注意。

ポイント② 論理的に構成する

「論理的な構成」と言われると難しく感じるかもしれないが、要は自分の意見をわかりやすく伝えるために整理することだと考えればいい。「序論」→「本論」→「結論」という流れで組み立てるのが一般的なパターン。「序論」では、その小論文で取り組む課題を示すことが大切。テーマが環境破壊なら、環境破壊の何が問題なのかをここではっきりさせる。それに対する自分の意見が「結論」だ。では、「本論」とは何かというと、結論に至る理由だ。本論がしっかりしていると説得力のある小論文になる。

ポイント③ 意見には必ず根拠を添える

小論文で大事なポイントの一つが客観性。自分の意見や考え方だけを披露しても、読む人は「なぜそう考えるのか」「なぜこの主張がほかの主張より正しいのか」がわからず、独りよがりの文章になってしまう。推測・推論ではなく事実に基づいて書くこと、読む人が納得できるような理由をしっかり述べることを意識して書こう。それによって文章全体の客観性が高まり、説得力のある小論文になる。「本当にそうか?」「違う見方もあるのでは?」と自分で自分に反論しながら書くと、論理的で客観的な内容になっていく。

小論文作成の基本的な流れ

▼出題 ①設問を読む ②資料を読む ▼練習 ①テーマを決める ②ネタを集める ③構成を練る 序論 本論 結論 ④まとめる

ステップ① 設問・課題文・資料を読む

すでに説明したように、小論文には、テーマ型、課題文型、資料分析型などのタイプがある。また、「意見を明示したうえで論じなさい」などの指示があったり、文章の要約が求められていたりすることもあるので、まずは設問をしっかりと読むこと。文字数も確認。そのうえで、課題文や資料がある場合は読み込んでいく。試験会場で受験する小論文試験の場合には、この課題文や資料の読み込みに時間をかけすぎないように注意。以下のすべてのステップに関して時間配分を考えておこう。

ステップ② 意見と根拠を考える

設問や課題文を読んだら、設問に対して思いつく意見を一通りリストアップ。そしてそれぞれの意見についてどのような根拠が挙げられるかも書き出してみる。中でも根拠がしっかり挙げられた意見を採用すると書き進めやすい。余裕があれば、あえて一般的ではない意見を採用するとアピール度の高い小論文に。また、テーマ型で、例えば「少子高齢化について論じなさい」といったようにシンプルなテーマの場合、福祉・医療・経済などのさまざまな角度で論じることが可能。志望学科のジャンルに合わせた切り口を考えよう。

ステップ③ 段落構成を考える

次に考えるのが段落構成。1段落150~300字程度にまとめることを意識して、序論→本論結論の流れに沿って段落分けを考える。全体の文字数が800字なら、200字×4段落、250字+250字+300字といった具合に機械的に均等に分けてしまうと、書き進めているうちに結論を書く余地がなくなるといった事態を避けることができる。また、800字や1200字の文章を書くとなると大変な印象があるが、200字なら手を付けやすく、気分的に楽になるというメリットも。それぞれの段落に何を書くかを考えたら、準備はOK。

ステップ④ 誤字・脱字に注意して書く

小論文試験の場合は時間との勝負。書き終わった後で練り直しはほぼできないと考えたほうがいい。そのため、誤字・脱字には注意しながら書くことが重要。ただし、あまりゆっくり丁寧に書いていても時間が足りなくなってしまうので、速く丁寧、かつ正確に文章を書くトレーニングは十分重ねておこう。想定した段落ごとの文字数はあくまで目安なので、2段落目で多少増えたら3段落目で減らすなど、適宜調節を。もし時間が余ったら、内容を修正する時間はないので、改めて誤字・脱字のチェックを。

どんなところが見られるの?

主張の内容と設問・課題の理解

設問に対してきちんと答えているかどうかは重要な評価ポイント。一見、小論文としてはよくまとまっているように見えても、設問で求められていることに答えていないケースがよくあるので注意したい。課題文や資料がある場合は、その内容をしっかり理解できているかどうかも見られる。もちろん主張の妥当性もチェックされる。学びたい分野についてしっかり研究しているかが表れやすいポイントだ。オリジナリティや一歩先を行く視点があれば加点の対象に。ただし、個性的な意見でも説得力がなければ評価されないので注意。

論理的な思考力や構成力

文章が論理的に構成されているかどうかは小論文の重要な評価ポイント。例えば、ある問題について論じる場合、その問題における課題を抽出し、その原因を探り、それに対する解決策を提示するといった論理構成がきちんと成り立っているかどうかが見られる。事例を取り上げる場合、ポイントとなる要素を抜き出せているかどうか(=抽象化)もポイントだ。
また、主張に対して理由がしっかりと説明されているかも見られる。主張自体は妥当でも、理由の説明が欠けていたり甘かったりすると説得力が落ちるのでマイナス要素に。

表記や表現

学校によっては誤字・脱字が一つ一つ減点材料になることもある。余分な失点はしないよう十分注意を。また、「なぜなら」で始めた文章は「~からだ」で終わるなどの日本語表記のルールがきちんと守られているかどうかもチェックされる。そのほか、段落分けがきちんとされているかもポイント。改行が少なく1段落が長すぎたりするとマイナス。また、小論文は「だ/である」調で書くが、途中で「です/ます」が混じるなど、文体が統一されていない場合、減点対象となることも。

小論文はいつ必要?

AO入試や推薦入試で小論文が課される場合は、書類選考通過後の2次選考で小論文試験として行われることが多い。このほか、エントリーや出願の際に提出を求める学校もある。前者は、文字数800~1200字程度が多いが、後者は3000字を超える場合も。時間制限があり、資料もない状態で書く小論文試験と、出願時に提出する小論文では、対策の仕方も違ってくるので注意。また、小論文は書いたら終わりではなく、面接でその内容について質問されることもある。自分が書いた内容については面接まではしっかり頭に入れておきたい。

お話を伺った方

株式会社 カンザキメソッド 神崎史彦氏
株式会社カンザキメソッド 神崎史彦氏
AO・推薦入試対策ゼミ「カンザキメソッド」代表。
志望理由書や小論文、面接対策のプロとして、講義や講演で全国を飛び回る。
初心者でもスラスラ書ける!頻出キーワード解説つき 実践!小論文の書き方ガイド 出典:スタディサプリ進路 2015 志望校決定号 取材・文/田村理恵