分析化学研究室

たとえるなら民間の科捜研。
分析化学の力で
事件・事故の謎を解明する。

事件がなぜ起きたのか、
 原因はなんなのか。
  まるで推理小説みたいですよね。

理化学分析センターの、トラブル案件専門チーム。
それが今の僕の職場です。
「事故なのか、事件なのかを調査したい」
「火事の原因の真相を突きとめたい。力を貸してくれないか」
そんな依頼が舞い込んでは、
どんな原因が考えられるのか、それを科学的に証明する手法はなにか、
こっちの可能性もあるんじゃないかと、あれこれ頭をひねって真相を探る。
まるで、推理小説みたいですよね。
トラブル案件が裁判になると大変だし、責任も重い。
そもそも仮説が間違っていて、最初からやり直しということもあります。
現実は物語のようにはいかない。
でもやっぱり、チームのみんなで試行錯誤して
だれもが納得できる答えにたどり着いたときは高揚します。
おっ、謎が解けたなって。

好きだから続けられるし、
好きだから勉強したいって
思うんじゃないですかね、人って。

鉄製品に付着した、黒い物質。
愛車に付着した、ザラザラした物質。
こうした証拠品から事故原因にたどり着くためには、
金属加工や自動車塗装などについてリサーチする必要がありますし、
無数の分析手法の中から最適な手段を選び取る必要もあります。
求められる知識量は膨大ですし、
正直、好きじゃないと続けられないだろうなって思います。
好きだから勉強しようと思うし、テレビを見ていても、つい「この物質にはどんな化合物が入っているんだろう」と考えてしまうんです。
研究者のなかには、ひとつの分野を極めたいっていう人もいますよね。
でも、僕は色々なことを探究したいし、正直、刺激がほしい。
すこし恥ずかしいけど、
これが僕の天職ってやつなんだと思います。

もしも分析化学がなかったら、この国の安全・安心も、科学技術の発展もないと思うんです。

分析化学に出会ったのは、大学3年生のとき。
ある授業で分析データだけを渡されて、
先生に「この物質がなにか答えなさい」と言われたんです。
AとBを足すとCになる、みたいな反応式ばかり書いていたので、
分析結果から物質を推理していく過程がすごく斬新なものに映って。
大学院進学を決めたのも、この頃。
分析化学はどんな研究、どんな開発にも必要不可欠で、
実験が成功したのか失敗したのかも、
この学問領域の技術がなければわからないんです。
製品の成分調査や事故の原因調査は
暮らしの安全・安心に直結していますし、
分析化学は先端技術の開発、環境保全の発展にも役立てられていて。
これはもう、半ば冗談ですが、
分析技術があれば、食べるのに困らないだろうなと。

大学院で研究に明け暮れた日々は、
  今でも忘れられない、いい思い出です。

大学院では、超集積植物を活用した環境浄化技術を研究していました。
通常なら枯れてしまうような汚染土壌であっても、
この植物は有害物質をどんどん吸収してキレイにしてくれるんです。
しかも自然に優しく、コストも安い。
研究ではこの植物のメカニズムを調べるため、
サンプルの調製、分析、解析を何度も繰り返しました。
プロの研究者たちが利用する高エネルギー加速器研究機構「KEK」や
世界三大大型放射光施設「SPring-8」での実験にも挑戦。
山一個分ほどの巨大な設備のなかで1週間、
同級生と寝泊まりしながら研究に明け暮れた日々は
今でも忘れられない、いい思い出です。
最先端の研究や装置の知識、そして、答えを導き出す科学的なアプローチ。
改めて振り返ると、今の仕事の土台のようなものは
すべてここで学んだような気がします。

どんな謎を前にしても
できませんとは言わない、
そんなプロでありたい。

もともと、当社は輸出入に関する分析を行っていました。
その知見を活かしてつくられたのが、トラブル案件の専門チーム。
先輩たちは「お客様を前にして、できないと言いたくない」と、
設立当初からありとあらゆる要望に全力で向き合ってきたそうです。
だから、僕が尊敬する上司も「できないと言わないように」が口ぐせ。
僕自身もこの言葉、この想いを受け継いでいきたいと思いますし、
どんなに無理難題に見えても、他の可能性を探る、
あきらめずに新しい道をたぐりよせる、そんなプロでありたいと思っています。
だって、もしも先輩たちが
その想いを抱かなかったとしたら。
この仕事に誘ってくれた上司が
バトンを受け取っていなかったとしたら。
きっと僕はまだ、どこかで天職を探しているだろうから。

Profile

分析化学研究室 卒業生

Honda Mao本田 真央さん

工学研究科
[修士課程]
物質工学専攻

2013年3月修了
日本海事検定協会 理化学分析センター 勤務

子どもの頃はテレビっ子。
推理系のドラマに夢中でした。

子どもの頃は将来の夢や、趣味と呼べるものはなかったように思います。
強いて言うならテレビっ子で、刑事や検事が活躍する推理系のドラマをかじりつくように見ていました。
好奇心が強かったのか、探究心が強かったのか、よく、親に「なんで?なんで?」と聞いては「知らん」とあしらわれていたそうです。
そんな僕の前に現れたのが、高校の化学の先生。
先生がおもしろおかしく化学の魅力を教えてくれたおかげで、日常のなかに隠れている自然の原理や法則に興味を持つようになって。
そこから大学を経て現在の仕事に就くことになるのですが、今では科学捜査系のドラマを見るとその裏側をよく理解できますし、登場人物の視点で「自分だったらどうするかな」と想像を膨らませることもあるんです。
僕がかじりつくように見ていた世界はもう、そんなに遠くない場所にある。
なんだか嬉しいような、照れくさいような、今はそんな気持ちです。

Corporate

日本海事検定協会
理化学分析センター

創業112年目を迎える、検査検定サービス事業者。港湾運送事業法に基づく鑑定・検量事業はもちろん、船舶安全法に基づく諸検査をはじめとした理化学分析、食品衛生分析などの公正で厳正中立なサービスの提供を通じて、日本の経済の発展、国民生活の向上を支える。

工学部
応用化学科

分析化学研究室のいま

セレン欠乏症を予防するための
セレン含量の高いイネをつくって、
多くの人に届けたい

セレンとは、生物にとって必須な微量元素であり、私たちは食品などから摂取しています。しかし、世界には、土壌のセレン濃度が低く、セレンを食品から十分に摂取できない人たちが存在します。問題解決のために、セレンの含有率の高い食品開発が進められています。私は穀物に注目してセレンを含むイネの開発に取り組んでいます。イネは世界の人口の約50%の人々が主食にしていると推定されており、多くの人を助けることができると考えています。開発するためには、まずイネとセレンの関係性を明確にする必要があります。イネによるセレンの取り込みを細胞レベルで調べるために、イネの未分化培養細胞であるカルスを使っています。これまでの研究で、イネのカルス細胞内に取り込まれたセレン化合物は、その化学形態が変化して不溶性のナノ粒子になることが分かってきました。セレンの化学形態変化の詳細やセレンを高蓄積する添加条件などを、さらに明らかにしたいと思っています。この研究を、セレンを多く含むイネの誕生につなげて、世界の健康問題の解決に貢献したいと考えています。

分析化学研究室とは

保倉 明子 教授

放射光X線を使って有害元素を高蓄積する植物を研究している。環境浄化技術に役立ち、また有用な重金属を高濃度に蓄積した植物は、新たな元素資源となる可能性を秘めている。

工学部 応用化学科 4年 埼玉県/春日部共栄高校 出身 Ogo Kaito大胡 海翔さん

私にとってのDig

誰も見たことのない研究成果を掘り当てたいと思う

新規分野を開拓するような実験を通じて、誰も知らない「何か」を発見することを目指している。さらに自分のテーマを深化させていきたい。