法科大学院ガイド(1/3)
法科大学院(ロースクール)とは?入学方法や学費、大学院の一覧までわかりやすく紹介
法曹になるための主要ステップである法科大学院の「最新情報」「志望校選び」「試験対策」について、解説します。
1-1法科大学院とは
裁判官・検察官・弁護士(=法曹三者)を養成するための専門職大学院
法曹になるためには司法試験合格が必須であり、法科大学院を修了することで、司法試験の受験資格が得られます(2023年からは法科大学院在学中の受験も可能になります)。
司法試験を受験するには、ほかに予備試験を受験する方法もありますが、予備試験合格自体が狭き門であることもあり、法科大学院進学は、法曹になるための中心的なステップと位置づけられます。
法学部出身でなくても入学できる?
法律の知識がゼロの方には未修者コースがあります。
コースによって修業年限が異なり、法学部などで法律を学んできた人を対象とする2年制の既修者コースと、法学を学んでいない人を対象とした3年制の未修者コースがあり、それぞれ入試の内容にも違いがあります。
法科大学院の授業の特色
- 特色1
- 教育方法に関しては、ソクラテスメソッドと呼ばれる対話型の授業方法を導入しています。
- 特色2
- 在学中に外部の弁護士事務所などで実務経験を積むインターンシップやエクスターンシップなども採り入れており、法曹として活躍するために必要な思考力や実践力を養うことに重点を置いています。
- 特色3
- 実務能力を養うため、研究者教員だけでなく、現役の弁護士や元裁判官などの実務家教員が授業を担当しています。
1-2法科大学院最新事情
進学へのハードルを下げる取り組みが増えている
現在の各法科大学院では、進学へのハードルを下げる取り組みが活発に行われています。
その一つが奨学金制度の拡充です。
入学者の大半が対象となる授業料全額・半額免除など大胆な制度を導入する動きが広がっています。
また、入学検定料を大幅に値下げする法科大学院も登場しています。
そのほかでは、社会人が通いやすいよう夜間開講や週末開講を実施していたり、長期履修制度がある法科大学院もあります。
さらに、修了後、しっかり準備期間をとって司法試験にチャレンジできるよう、9月入学や、入学前に科目等履修で学び始められる早期履修などの制度を持つ例も目立ってきました。
積極的に独自の取り組みを進める法科大学院も増えてきているので、志望校の最新情報はWebサイトなどでチェックしておきましょう。
2020年から法学部に設けられた法曹コースに在籍している方は、同コース修了者を対象とした特別選抜についても個別にチェックしたい。
修了後5回まで司法試験が受験できる
法科大学院修了後の司法試験受験に関しては、修了後5年間で5回までという制限が設けられています。また、一度受験資格を失っても、あらためて法科大学院を修了するか、あるいは予備試験に合格すれば再度受験資格を得ることができます。
1-3 法科大学院と司法試験
法科大学院修了によって、司法試験の受験資格が得られます。
司法試験の概要
司法試験は例年5月に実施され、短答式試験と論文式試験が課されます。
短答式試験の試験科目は、憲法、刑法、民法の3科目。
論文式試験の試験科目は、公法系科目(憲法および行政法に関する分野の科目)、民事系科目(民法、商法および民事訴訟法に関する分野の科目)、刑事系科目(刑法および刑事訴訟法に関する分野の科目)、選択科目(知的財産法、労働法、租税法、倒産法、経済法、国際関係法〈公法系〉、国際関係法〈私法系〉、環境法のうち1科目)の4科目です。
試験は4日間にわたって行われ、全員が短答式試験と論文式試験を受験します。
ただし、短答式試験で合格ラインに達しないと、論文式試験は採点されません。
また、短答式試験、論文式試験で最低ラインに到達していない科目が1科目でもあると不合格とされるので、苦手科目を作らないことが大切です。
なお、法科大学院の授業は司法試験対策に特化しているわけではないので、司法試験合格のためには、学生同士で作る自主ゼミ・勉強会を中心とした試験対策が重要。法科大学院によっては、教員やその法科大学院出身の先輩弁護士がチューターとなり熱心に自主ゼミの活動をサポートしている学校もあります。
「1-2法科大学院最新事情」で触れたとおり、法科大学院修了生は、修了後5年間に5回まで受験が可能(予備試験合格者も同様)。修了生の司法試験合格率はここ数年上昇を続けており近年は30%を超えています。
1-4 法科大学院から法曹になるには?
1年間、司法修習生として学ぶ
司法試験合格後は、1年間、司法修習生として学びます。
この間に、裁判官・検察官・弁護士の現場を経験しながら、どの道を選ぶのかを決めていきます。
司法修習生は公務員ではありませんが、国家公務員に準ずる地位として扱われます。
司法修習生への給与は一時期廃止されていましたが、月額13万5000円を給付する制度が2017年の司法修習生から復活することになりました。
10カ月の実務修習と司法研修所で2カ月の集合研修を経て、「二回試験」と呼ばれる試験に合格すると司法修習終了となります。
この時点で、判事補任用資格、2級検事任用資格、弁護士登録資格が得られます。
【検察官・裁判官を目指す場合】
検察官、裁判官を目指す場合は、司法修習終了前にそれぞれの採用試験に合格する必要があります。
採用枠が限られているため、検察官、裁判官を志望している人がすべて採用されるわけではありません。
【弁護士を目指す場合】
弁護士を目指す場合は、法律事務所などに就職活動を行います。
法科大学院生、司法修習生時代に、法律事務所で活躍する弁護士としっかりパイプを作っておくことが、就職を成功させる大切なポイントです。
また、先輩弁護士に仕事を教わることができないという意味では不利ですが、法律事務所に就職せず、いきなり独立して自分で弁護士事務所を開業する道もあります。
そのほか、最近では、弁護士資格を生かして一般企業に就職し、企業内弁護士として法務部などで活躍するケースも増えています。