臨床心理士指定大学院の入試対策とは?出願準備から受験対策までまとめて解説!
臨床心理士指定大学院への進学を目指す場合、いつごろからどのような準備を始めればいいのか?など、心理学を学んだ経験がない人でも合格が目指せるダンドリを紹介。
また、研究計画書や専門科目、英語などの効果的な対策についても解説します。
4-1臨床心理士指定大学院受験までのダンドリ
ここでは、臨床心理士指定大学院受験を目標としたダンドリについて解説します。
臨床心理士指定大学院の入試では、基本的に英語や専門科目が課されます。
そのため、入試まで1年程度の準備期間は必要です。
なお、社会人入試もあるのですが、それでも、一般入試と比べればやさしく、配点の比重が低いというだけで英語と専門科目は課されることも多いです。
かつ、臨床心理士指定大学院の社会人入試は、心理系の実務経験者が数多く受験するため、心理系のキャリアがない人にとってはむしろ競争が厳しくなってしまうのです。
そもそも心理学の基礎知識が身についていなければ、大学院の授業についていくのは大変ですし、大学院の授業や研究では英語の文献も読むことになります。
どちらも自信がない人は、いったん大学に入学し心理学系を専攻したうえで大学院を目指すか、どうしても直接大学院を目指したい場合は、大学院で学ぶ準備の意味も含めて、一般入試を目標にしたほうがいいでしょう。
通信制大学を利用したオススメステップ
心理学系の学部ではなく、他学部出身者の場合は、通信制大学の編入学や科目等履修で1~2年、心理学の基礎について体系的に学ぶというステップもおすすめです。
臨床心理士指定大学院への進学を目的としている人を対象に、3年次、4年次の編入学で目的に合った科目群を履修できるコースを用意している通信制大学もあります。
大学で心理学を学んできた人の場合は、不安のある科目やもう一度しっかり学んでおきたい科目をピックアップして科目等履修で学ぶという方法もあります。
3年次編入学で2年間学ぶとなると、大学院進学への準備期間としては「長い」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、例えば、異業種からの転身を考えている場合など、仕事を続けながら通信制で学ぶことで、自分の心理系職種への適性を確かめることもできます。通信制大学の入試は書類選考のみですし、費用面での負担も少ないですから、興味があるなら、まず始めてみることをおすすめします。
予備校へ通うという選択肢も
心理学を学んだ経験がない人が、研究計画書を自分一人で作成するのもハードルが高いので、予備校を利用するのがいいでしょう。
英語、専門科目のアウトプットのトレーニングもできるので、大学院受験への大きなサポートになるはずです。
臨床心理士指定大学院受験のスケジュール
入試は早いところでは7月ごろにスタートしますが、時期は大学院によってまちまち。
秋と年明け1~2月ごろにピークがありますが、複数回入試を実施する大学院では3月にも入試を行うところもあります。
勉強と並行して、予備校でも情報収集をしながら、夏に向けて候補を絞り込み、第一志望と併願校を決めていきます。
なお、大学院入試の場合は、志望校の雰囲気を知る意味でも研究室訪問も検討しておきたいところ。
ただし、大学院によっては研究室訪問を受け入れていないので、志望校の対応について事務室に問い合わせましょう。
研究室訪問の代わりに説明会で教員の話を聞くチャンスもあります。
入試日の1カ月程度前から出願受付が始まるので、それまでには書類をそろえておき、期間中の早めの段階に出願。
いよいよ受験となります。この期間は英語や専門科目試験の直前対策も入念に。
秋入試で不合格でも、年明けに再度入試を行う大学院はあります。
同じ大学院に再度チャレンジするか、第二志望に切り替えるかの判断をし、弱点の補強や研究計画書の見直しに取り組んで目標とする次の試験に備えましょう。
4-2臨床心理士指定大学院出願の際の主な提出書類
研究計画書
研究計画書とは 大学院で研究したいテーマ、研究の目的、進め方、スケジュールなどをまとめた書類です。
臨床心理士指定大学院では提出が求められますが、専門職大学院では、研究計画書は不要で、志望理由書のみ提出を求めるところも多いです。
志望理由書、エッセイ
それまでの職業経験(社会人の場合)、臨床心理士を志望する理由、その大学院を志望する理由などをまとめた書類。
大学院によっては、研究計画書に加えて提出を求められることがあります。
文字数は、大学院によって異なりますが、「1200字程度」「1500字程度」「2000字以内」といったパターンが一般的です。
志望理由書自体が書類選考の材料となるほか、面接も志望理由書の内容に沿って行われることが多いため、重要な書類です。
大学卒業(見込)証明書、成績証明書
いずれも出身大学で発行してもらいます。
書類の作成・発行に数日を要する場合もあるので早めに手配しておくことが大切です。
志願票、履歴書、職務経歴書、推薦書、健康診断書など
そのほかの主な提出書類は、志願票、履歴書、職務経歴書(社会人の場合)、健康診断書、指定課題などです。
志願票以外は、大学院によって提出の必要があるものもないものもあるので、事前にチェックしておきましょう。
職場の上司などに書いてもらう推薦書は提出を求める大学院もあれば、不要の大学院もあります。
健康診断書は不要の大学院も多いですが、必要な場合は早めに受診しておくようにしましょう。
4-3臨床心理士指定大学院の試験攻略法
臨床心理士指定大学院の入試は、研究計画書を中心とした書類選考、英語、専門科目、小論文、面接で行われます。小論文に関しては課されない大学院もあります。
「研究計画書」の攻略法
研究計画書は、提出が求められる場合には、合否に大きく影響する書類です。
合格に近づく研究計画書を作成するポイントは、先行研究を踏まえたうえで、実際に研究したいテーマやコンセプトを明確にすること。
業務に関連して進学を目指すのであれば、実務経験と関連のある研究テーマを設定するといいでしょう。
まずは、興味のあるテーマに関して先行研究の文献をリサーチするところから対策を始める必要があります。
ただし、学術系の論文などを書き慣れていない人の場合、適切な文献探しから苦労することも多いので、早い段階から予備校などで指導を受けたほうがベター。
構成のポイントなども指導してもらえます。
合格した人の研究計画書の例などを参考にして書いたものを、繰り返し添削指導を受けてブラッシュアップしていきましょう。
「専門科目」の攻略法
臨床心理士指定大学院の専門科目は、専門用語について説明するタイプの問題と、専門的な内容に関して長めの文章で論述させるタイプの問題が主流です。
特に後者は、付け焼き刃的な知識では太刀打ちできません。
単に用語を暗記するだけでなく、基礎心理学からしっかりと知識を積み上げて概念を理解すること、そのうえで臨床心理学の専門知識や概念を説明できるレベルにまで理解しておくことが求められます。
基礎心理学、臨床心理学の専門書を読み込んでインプットをしつつ、志望校の過去問や予備校の答案練習などで実際に書くトレーニングを繰り返すことが大切です。
過去問は数年分に取り組んで、志望校の出題傾向をしっかり把握することは必須です。例えば、心理統計に関する出題が目立つ場合などは、特別な対策が必要になります。
「英語試験」の攻略法
大学院によって傾向の違いはありますが、心理学関連の英文を読み、全文和訳や下線部和訳、要約などをするタイプの出題が主流です。
とにかく専門用語の英語をしっかりとインプットし、正確に訳せるようにしておくことがポイント。英文の専門書を読むトレーニングも大切です。
「小論文」の攻略法
社会問題や時事問題について書かせるタイプの小論文の場合は、取り上げられるテーマについて知見がないと対応できないので、『日本の論点』など時事問題をコンパクトにまとめた書籍を読み、何が課題なのかということに加え、賛否両方の意見を理解し、自分なりの考えをまとめてみましょう。
また、実際に書くトレーニングも重要です。前述の書籍からテーマをピックアップし、賛成・反対の意見をそれぞれ60分、1500字でまとめるのがオススメ。
その後、改めて書籍の該当項目を読んでみると、より理解も深まります。
なお、小論文は、「結論→理由→(反対意見)→まとめ」という構成が一般的。あまり細かい点にとらわれずに論旨の明快さを意識して書くことがポイントです。
また、書いた文章は人に読んでもらうことも重要。予備校の講師などにチェックしてもらうことも大切ですが、その分野に詳しくない知人・友人・家族などに読んでもらい、わかりにくい点などを指摘してもらうのも有効です。
心理学の専門的なテーマを出題する大学院も多いですが、その場合の対策は、専門科目の論述対策と同様です。
「面接試験」の攻略法
面接試験は 研究計画書や志望理由書に基づいて質問されるので、提出書類の内容はしっかり頭に入れておくことが大切。もちろん、書類に書いていないことも聞かれるので、自分の職業経験やリーダーシップを発揮した経験、今後のキャリアの展望などに関しては、しっかりと考えをまとめておくようにしましょう。
また、臨床心理士としての資質を測る目的で「圧迫面接」が行われるケースも。慌てずに対応できるよう、それも想定してイメージトレーニングを積んでおくといいでしょう。
監修:乾喜一郎 リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)