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推薦・一般入試で小論文が課される大学は多い。「何となく難しそう」「対策の仕方がわからない」と悩んでいる人も、コツさえつかめば小論文が書けるようになるはず。具体的な手順と頻出キーワードを学んで、小論文試験に備えよう。
頻出キーワードの着眼点を知ろう!
キーワードの意味を知るだけでは不十分
入試頻出のキーワードをここでは四つ紹介する。さらにそれぞれの「メガネ」をかけてそのキーワードを見た時にどういった切り口で読み解いていけばよいかも併せて解説している。キミなら各キーワードをどう読み解く?!
地球規模で、ヒト・カネ・モノ・情報のやり取りが行われること。多様さを互いに認め合う方向と、大きなものにまとまっていく均質化の方向がある。グローバル化には功罪の両面があり、ファストフード・チェーンが世界中に展開し、ローカルな食文化が失われる状況は“ファスト風土化”と揶揄される一方で、異国発祥の文化を多くの人が受け入れている例でもある。
のメガネで見た場合
ヒトの移動により、風土病の世界的大流行が懸念されるが、国家を越えた医療支援が実現
- 一部地域の風土病と考えられていた病が、ヒトの移動が活発になることで、世界的に大流行するリスクがある。一方、そうした危機に対して、WHOや国境なき医師団、国際赤十字など、国家の枠を越えて支援の手を伸ばす、相互助け合いの姿が見られる。医療を学ぶ立場としてどのような貢献ができるかを述べよう。
のメガネで見た場合
国境を越えた企業が増える一方、領土や民族問題など、国家間の政治課題はまだまだ未解決
- 世界的に活動するグローバル企業も珍しくなく、国家の枠は揺らいだかのように思える。しかし領土問題、民族問題、安全保障・平和構築の問題など、政治課題は山積みである。教授の中には政治学を“喧嘩仲裁の学問”と位置付ける人もいる。政治学を通してどんな問題を解決していく必要があるかを論じよう。
生まれてくる子どもの数が減少するとともに、高齢者の割合が増える社会の傾向。人口減少により、年金や医療費の公的負担などの人口増加を見込んだ社会保障の仕組み(セーフティネット)が行きづまるとされる。少子化対策には年間約4兆円もの国家予算が使われているが、効果はさほど上がっていない。多産な社会を目指すか、少子高齢化しても暮らせる社会を目指すか意見が分かれている。
のメガネで見た場合
少子化は経済規模の縮小・購買力低下を招くが、高齢者に焦点を当てると商機が見えてくる
- 少子化により労働人口、消費人口が減少し、購買力が低下する。経済規模が縮小すると働く人の所得も減り、さらに購買力が下がる悪循環が生じる。一方、高齢者向け商品の開発や、高齢者が労働参加できるIT化の工夫などで、労働人口増加が見込める。経済学の視点で少子高齢化におけるビジネスチャンスを論じよう。
のメガネで見た場合
少人数教育により優れた人材の育成が可能。しかし、競争社会を経験しない脆さもある
- 一人ひとりの個性や適性に合った、きめ細かい少人数教育が可能になる。優れた人材を産み出し、一人当たりのGDP(国内総生産)を上昇させることも考えられる。一方、多人数の競争にさらされる機会が減るため、弱い個人の姿が見えてくる可能性もある。教育者を志す立場から、少人数教育の長所と短所を語ろう。
インフォメーション・テクノロジー(IT)により、インターネットなどのネットワークが進み、間接・遠隔・匿名のコミュニケーションが広がる社会の傾向。情報の価値は高まり、物質やエネルギーなどと同等もしくはそれ以上の資源と見なされる。雑多な情報(インフォメーション)を教養によって吟味された情報(インテリジェンス)に変えて行くことが課題のひとつである。
のメガネで見た場合
ITツールが在宅ワークを可能に。性差ではなく、適性や意志による職業選択や生き方が実現する
- 少情報化によりオフィスワークが在宅で可能になり、会議や書類の提出もITツールでこなせるようになる。「男は外で仕事、女は家で家事育児」という典型的な性別役割分業はなくなり、個人の適性と意思でライフスタイルやキャリアを選択できる姿が見える。社会学の視点で情報化による仕事の仕方や質の変化を述べよう。
のメガネで見た場合
著作権・知的財産権の保護、表現の自由、個人情報の扱いなどインターネットの課題が見える
- インターネットで自在に情報を活用する利便性を生かしつつ、著作権・知的財産権を保護するにはどうすべきか。表現の自由と他者危害の線引きはどうするか。国家やビッグデータを収集分析できる大企業など“情報強者”に対して個人情報をどう守るか。法学を学ぶ者としてこれらの課題の解決策を論じよう。
かつて日本社会は「一億総中流」と表現されたように、実際の所得水準でも意識の水準でも格差の少ない、比較的均質で平等な社会と考えられてきた。ところが90年代以降、急速に所得格差が開き始め、固定化する傾向にある。とくに貧困層の子どもたちは経済格差以上に未来への明るい展望を持てず、学習意欲も喪失する傾向があると指摘されている。これは「希望格差社会」とも呼ばれる。
のメガネで見た場合
格差感を解消するには未来への明るい展望が持てる社会づくりが必要
- どんな社会にも経済格差や階層はあるが、実際の格差より「格差感」という心理が問題かもしれない。頑張ればなんとかなると思えること、つまり、公正で誰にでもチャンスが開かれているという社会への信頼感が本来大事だと考えられる。心理学を学ぶ立場から未来への希望を持てる社会について論じよう。
のメガネで見た場合
推移する社会の歴史に学べば現代の格差社会は変えられるという希望が見える
- 明治時代は今以上に所得格差があり、それ以前はそもそも身分制社会だった。戦後の「一億総中流」こそ特殊ともいえるし、現代の格差はかつての階層固定社会への後退ともいえる。また、社会自体は固定的なものではなく変化しうるという希望も見いだせる。歴史学の視点から格差社会をどう変えていけるかを語ろう。
●そのほかの頻出キーワード
時事的なテーマや繰り返し問われるテーマに関するキーワードは要チェック
今回紹介した4つ以外にも「東京オリンピック」「TPP」「危険ドラッグ」「再生医療」「終身雇用制の崩壊」「再生可能エネルギー」「集団的自衛権」「裁判員制度」など、時事的なテーマや繰り返し入試小論文で問われるテーマについて、自分はどのメガネをかけてそのキーワードをどう見るのかを明確にしておき、自分の意見も書けるようにしておこう!
お話を伺った方
受験サプリ 小柴大輔先生
受験サプリで現代文・小論文・AO推薦対策講座を担当。予備校で大学入試のほか法科大学院用の教養科目も指導。著書に『センター試験「要点はココだ!」現代文』がある。
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