教育訓練給付制度ガイド

最大7割戻ってくる教育訓練給付制度とは?在職中もOK?利用方法をわかりやすく解説!

働きながら学ぶ社会人の学費を、国がサポートしてくれる「教育訓練給付制度」。一定の条件を満たした社会人が利用できる制度で、厚生労働大臣が指定する講座を修了すると、支払った学費の一部が戻ってくるというお得な制度です。制度を上手に活用するために、制度の内容や利用できる大学・大学院の情報、申請・受給手続きなどを解説していきます!

教育訓練給付制度ガイド

教育訓練給付制度とは

教育訓練給付金制度は、働く人の主体的な能力開発の取り組みやキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とする制度​です。
雇用保険によって給付する制度であることから、一定期間以上雇用保険の被保険者である人(在職者)、または雇用保険の被保険者だった人(離職者)を対象としています。在職中でも離職中でも利用できるこの制度は多くの人が利用できます。
雇用保険の被保険者とは、一般被保険者および高年齢被保険者のことで、主に民間企業に勤め、雇用保険(失業保険)を支払っている人を指します。そうした制度であるため、原則として雇用保険の支払いのない自営業(個人事業者)、公務員などは対象にはなりません。
厚生労働大臣の指定する講座で学び、修了すると、支払った学費の一部が給付金として支給されます。
指定講座は多岐にわたります。
英会話など語学や、キャリアアップに必要なスキルの習得、資格の取得を目指す講座など、その数は約1万4000講座。
多数の大学・大学院の課程も指定講座になっており、通学のほか、通信制、土日のみの講座、オンライン、e-ラーニングと、学び方もさまざまな講座がそろっているので、「働きながら大学・大学院で学びたいけど学費が心配…」という人は要注目です。
このように社会人のスキルアップを国がサポートしてくれる教育訓練給付制度。最大10万円が支給される「一般教育訓練給付金」、年間最大40万円(または56万円)が支給される「専門実践教育訓練給付金」、年間最大20万円が支給される「特定一般教育訓練給付金」の3種類​があります。

制度の利用方法

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図版出典:「支給申請の前に「支給要件照会」を」(政府広報オンライン)を加工して作成

教育訓練給付金の種類

一般教育訓練給付金、専門実践教育訓練給付金、特定一般教育訓練給付金のそれぞれの特徴を、まとめたのが下の図です。この表に続く本文では、各種類について詳しく紹介します。
教育訓練の種類 給付率 対象講座の例
一般教育訓練 受講費用の20%
上限10万円
大学院などの課程
・修士・博士の学位などの取得を目標とする課程 資格の取得を目標とする講座 ・英語検定、簿記検定、ITパスポート など
専門実践教育訓練 最大で受講費用の70% 大学院・大学などの課程
専門職大学院MBA法科大学院など)
・大学や大学院の正規課程や履修証明プログラムのなかで文部科学大臣から「職業実践力育成プログラム」に認定された講座

専門学校の課程
・職業実践専門課程(文部科学大臣認定)
・キャリア形成促進プログラム(文部科学大臣認定)

業務独占資格などの取得を目標とする講座
・介護福祉士、社会福祉士、看護師、美容師、歯科衛生士、保育士、調理師 など

デジタル関係の講座
・ITSSレベル3以上のIT関係資格取得講座
・第四次産業革命スキル習得講座(経済産業大臣認定)
特定一般教育訓練 受講費用の40%
上限20万円
業務独占資格などの取得を目標とする講座
・介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許、税理士 など

デジタル関係の講座
・ITSSレベル2以上のIT関係資格取得講座 など
表出典:「教育訓練給付制度のご案内」(厚生労働省)を加工して作成
出典:「あなたのスキルアップ、国がサポートします」.厚生労働省.(参照2022/1)
教育訓練給付金制度」.ハローワークインターネットサービス.(参照 2022/1)
教育訓練給付制度」.厚生労働省.(参照 2022/1)

専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練給付金はいくら支給される?

支払った学費の50%年間上限40万円まで支給されます。
さらに受講修了後、1年以内に目標とする資格を取得するなどの条件を満たせば、受講費用の20%(上限は年間16万円)の給付を追加で受けることができる点も見逃せないポイント。
この追加給付が加わると、支払った学費の70%・年間上限56万円まで受給できることになり、2年間の受講だと上限は112万円に、3年間の受講ならば上限168万円まで受給できます。

追加給付について

追加給付を受けるには、申請の時点で雇用保険の被保険者であることが前提。会社を辞めて、専門実践教育訓練給付金制度の指定講座で学ぶ場合、目標の資格を取得することに加え、受講修了日の翌日から1年以内に転職し、雇用保険の被保険者になっていることが必要です。

教育訓練支援給付金

失業中の人で専門実践教育訓練給付金制度の利用対象者にとなっている場合、「教育訓練支援給付金」の制度の対象となる場合があります。
その場合、「45歳未満であること」「通学制の昼間講座を受講する」などの条件を満たせば、受講期間中に教育訓練支援給付金を受給することができます。支給額は、失業手当(基本手当)の日額の80%相当額(支給されるのは、失業手当がもらえる期間が終了してからとなります)。時限的な特別措置のため、現在も適用があるかどうかなど詳しいことは最寄りのハローワークに問い合わせてください。

専門実践教育訓練給付金はどんな人がもらえる?

教育訓練給付制度を初めて利用する場合
講座の受講開始日の時点で、雇用保険の被保険者だった期間が、通算2年以上ある人。
会社を辞めてしまい、離職している場合
雇用保険の被保険者だった期間が2年以上ありながらも退職した場合には、離職日の翌日から受講開始日までの期間が1年以内であれば、受給対象になります。また、離職日の翌日から1年間、出産・育児、病気などの理由で受講を始められなかったというケースでも、条件を満たせば適用対象期間が最大20年まで延長になる場合がありますので、最寄りのハローワークに申請してください。
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合
前回、制度の利用を始めた日(受講開始日)から、今回の受講開始日までに雇用保険の被保険者であった期間が通算3年以上
ある人。加えて、前回の給付金受給が2014年10月以降の場合、前回の受給日から今回の受講開始日までに3年以上経過していることも条件になっているので注意が必要です。詳細は最寄りのハローワークに問い合わせてください。

専門実践教育訓練給付金の対象の講座は?

専門性が高く、学ぶことで長期的なキャリアアップに結びつく講座が対象。
受講期間は原則1年~3年。
指定講座は、国家資格(看護師、社会福祉士、柔道整復師など)や、一定レベル以上のITスキルに関する資格の取得を目指す講座など。
大学・大学院などの職業実践力育成プログラム(文部科学大臣が認定するプログラム)、専門職大学院の課程(MBA、法科大学院、教職大学院など)といった、社会人向けの実践的な講座も指定されています。

専門実践教育訓練給付金をもらうには? ~制度の利用の方法・給付申請手続き~

専門実践教育訓練給付金を利用する場合、2年、3年の長期間の講座が対象となるため、修了を待たず、6カ月ごとに申請をして給付金を受け取れるのが特徴(年間のトータルの支給額は、40万円が上限)。そうした制度であるため、受講前、受講中、受講修了後と所定の手続きが必要になっています。
どんな手続きが必要になるのか、専門実践教育訓練給付を利用して、大学院の2年の課程に進学し、追加支給も受ける場合を想定し、以下に申請・受給の流れを解説します。

1)受講前

受講開始日の1カ月前までに、最寄りのハローワークで手続きを行います。
必要な手続きは次のとおりです。
訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを発行してもらいます。ジョブ・カードには、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項が記載されます。

ジョブ・カード発行後、専門実践教育訓練給付金を受給する資格があるのかどうか、ハローワークで確認を行います。

必要書類を提出。
提出書類は、ジョブ・カード、受給資格確認票、本人の住居所確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)など。
※ジョブ・カードは発行から1年以内のもの。

2)受講中

講座開講日を起点に6カ月ごとに受講者本人が最寄りのハローワークに申請し、給付金の支給を受けます。その時点で、定められた履修条件を満たしていることが支給の条件となりますので、計画どおりに学習を進めることが肝心です。

その他の注意ポイント

申請手続きの際に提出する書類
受給資格者証、教育訓練給付金支給申請書、受講証明書、支払った学費の領収書など。
支給申請手続きの期限
受講開始日から6カ月ごとに支給単位期間を設定。その支給単位期間の末日の翌日から起算して1カ月以内に支給申請を行う必要があるので、忘れずに申請をしてください。

3)受講修了後

講座の受講が修了したら、修了日の翌日から1カ月以内に、最寄りのハローワークで支給申請の手続きを行います。
提出が必要な書類は、受給資格者確認証、教育訓練給付金支給申請書、専門実践教育訓練修了証明書、支払った学費の領収書など。

追加給付を受ける場合

専門実践教育訓練の受講修了後、1年以内に目標としている資格を取得するなど、条件を満たせば追加給付を受けられます。その場合、資格を取得した日の翌日から1カ月以内に支給申請を行うことになっていますので要注意です(資格取得などを証明する書類が必要)。

一般教育訓練給付金について

一般教育訓練給付金はいくら支給される?

支払った学費の20%上限10万円が支給されます。
支払った金額の20%に相当する額が10万円を超える場合、支給額は10万円となり、4000円を超えない場合には支給されません。

一般教育訓練給付金はどんな人がもらえる?

教育訓練給付制度を初めて利用する場合
講座の受講開始日の時点で、雇用保険の被保険者だった期間が、通算1年以上
ある人。
会社を辞めてしまい、離職している場合
雇用保険の被保険者だった期間が1年以上ありながらも退職した場合には、離職日の翌日から受講開始日までの期間が1年以内であれば、受給対象になります。
また、離職日の翌日から1年間、出産・育児、病気などの理由で受講を始められなかったというケースでも、条件を満たせば適用対象期間が最大20年まで延長になる場合 がありますので、最寄りのハローワーク(住んでいるところを管轄するハローワーク)に確認してください。
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合
前回、制度の利用を始めた日(受講開始日)から、今回の受講開始日までに雇用保険の被保険者であった期間が通算3年以上
ある人。
加えて、前回の給付金受給が2014年10月以降の場合、前回の受給日から今回の受講開始日までに3年以上経過していることも条件になっているので注意が必要です。
詳細は最寄りのハローワークに問い合わせてください。

一般教育訓練給付金の対象の講座は?

仕事に役立つスキルや、資格がおおむね1年以内に身につく講座が対象です。
語学、簿記、医療・福祉、ICT(情報通信技術)、建築など、幅広い分野の講座が指定されています。
指定講座のなかには大学・大学院の修士・博士、科目等履修証明プログラムなどの講座そろっているので、チェックしてみてください。

一般教育訓練給付金をもらうには? ~制度の利用の方法・給付申請手続き~

1)受講前

自分が受給できるのかどうか、最寄りのハローワークで受給資格を確認しましょう。
また、学びたい大学・大学院の講座が指定講座になっているかどうかも要確認です。
一般教育訓練給付金の場合は、受給資格の確認は義務付けられている手続きではありませんが、自分が受給できるかどうかわからない場合などは、事前に確認しておくことが望ましいです。

2)受講修了後

指定講座の受講が修了した翌日から1カ月以内に最寄りのハローワークに支給申請手続きを行うことが原則。
必要な書類
教育訓練給付金支給申請書、教育訓練修了証明書、支払った受講費用の領収書など、さまざまな書類の提出が必要になります。申請の段階になってあわてることのないよう、ハローワークと学校の両方に事前に確認しておくことをおすすめします。

特定一般教育訓練給付金

特定一般教育訓練給付金はいくら支給される?

支払った学費の40%上限20万円が支給されます。
支払った金額の40%に相当する額が20万円を超える場合、支給額は20万円となり、4000円を超えない場合には支給されません。

特定一般教育訓練給付金はどんな人がもらえる?

教育訓練給付制度を初めて利用する場合
講座の受講開始日の時点で、雇用保険の被保険者だった期間が、通算1年以上
ある人。
会社を辞めてしまい、離職している場合
雇用保険の被保険者だった期間が1年以上ありながらも退職した場合には、離職日の翌日から受講開始日までの期間が1年以内であれば、受給対象になります。また、離職日の翌日から1年間、出産・育児、病気などの理由で受講を始められなかったというケースでも、条件を満たせば適用対象期間が最大20年まで延長になる場合がありますので、最寄りのハローワークに申請してください。
過去に教育訓練給付金を受給したことがある場合
前回、制度の利用を始めた日(受講開始日)から、今回の受講開始日までに雇用保険の被保険者であった期間が通算3年以上ある人。
加えて、前回の給付金受給が2014年10月以降の場合、前回の受給日から今回の受講開始日までに3年以上経過していることも条件になっているので注意が必要です。詳細は最寄りのハローワークに問い合わせてください。

特定一般教育訓練給付金の対象の講座は?

特定一般教育訓練給付金は、3種類ある教育訓練給付制度のなかで最も新しい制度で、2019年10月に開始されました。
対象の講座は一般教育訓練給付金と同じく、おおむね1年以内に資格やスキルが身につく講座ですが、特色は社会的にニーズが高い職種の人材を短期間で養成する講座や、早期の再就職・キャリア形成につながりやすい講座が指定されていることです。
例えば、介護職やIT技術者など、多くの人材が必要とされている職種にかかわる資格取得講座などが指定されています。また、大学などの職業実践力育成プログラム(文部科学大臣認定プログラム)などの短期講座も対象になっており、オンライン講座や土日開講の講座も充実しています。

特定一般教育訓練給付金をもらうには? ~制度の利用の方法・給付申請手続き~

1)受講前

受講開始日の1カ月前までに、最寄りのハローワークで手続きを行います。
必要な手続きは次のとおりです。
訓練対応キャリアコンサルタントによる訓練前キャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作成・発行してもらいます。ジョブ・カードには、就業の目標、職業能力の開発・向上に関する事項が記載されます。

ジョブ・カード発行後、特定一般教育訓練給付金を受給する資格があるのかどうかを、ハローワークで確認。

必要書類を提出。
提出書類は、ジョブ・カード、受給資格確認票、本人の住居所確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)など。
※ジョブ・カードは発行から1年以内のもの。

2)受講後

受講修了日の翌日から1カ月以内に、最寄りのハローワークで支給申請の手続きを行います。
提出が必要な書類は、受給資格確認通知書、教育訓練給付金支給申請書、特定一般教育訓修了証明書、支払った学費の領収書など。

教育訓練給付制度 Q&A

Q. 派遣社員や契約社員といった雇用形態で働く人は、教育訓練給付制度の対象にはならないの?
A. 派遣社員や契約社員などの非正規雇用であっても、雇用保険の被保険者ある期間が条件を満たしていれば在職中、離職中に関わらず受給対象になります。
自分が条件を満たしているかどうかよくわからない場合は、最寄りのハローワークに問い合わせてください。
Q. 雇用保険の被保険者の期間や、給付金の支給申請などの際、「受講開始日」を軸にして起算することになっていますが、その受講開始日とはいつ?
A. 通学講座と通信講座では、受講開始日の定義が異なっているので気をつけましょう。
通学講座の受講開始日は開講初日通信講座は第1回の教材発送日が受講開始日となります。
Q. 制度が利用できる講座の情報は、どうやって調べればいい?
A. 「スタディサプリ社会人・社会人大学院」のサイトでも講座を探すことができます。
このほか、「教育訓練給付制度 厚生労働大臣教育訓練講座検索システム)」や、文部科学省の「マナパス」(社会人の大学などでの学びを応援するサイト)などでも情報収集が可能です。
Q. 給付金支給の対象になる学費とは?
A. 実際に支払った入学金と受講料の合計です。受講のための交通費、パソコンなど器材の購入費、資格試験の受験料などは対象外。
また、支給対象となる学費は、受講者本人が負担し、自らの名前で支払った費用であることが原則。会社などから支払われた費用は対象になりません。
Q. 教育訓練給付の指定講座を受講したけれど、途中で受講をやめた場合は?
A. 教育訓練給付は講座を修了しないと支給を受けられないという制度です。
講座を選ぶ際には、自分が本当に学びたい講座なのか、学び続けることができるのかといった観点からも受講を検討することが重要です。
監修:乾喜一郎  リクルート進学総研主任研究員(社会人領域)

最終更新日:2022年11月14日

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