大学院の入試問題ってどんな感じなの?という皆さんのために、実際の過去問と解答のポイントを紹介するこのコーナー。今回ピックアップしたのは「政治学系」の専門科目です!この分野の専門科目で、他分野と比べると出題される割合が高いのが、ここで紹介しているような「事項説明問題」。点数を手堅く稼げるこの問題で取りこぼしをしないことが合格への近道になります。では、実際にどのような問題が出題されるのか、解答の際のポイントはどこにあるのかを解説しましょう。
第9回 今回のテーマ:
政治学系の専門科目編
専門科目問題例(東京大学大学院 法学政治学研究科 総合法政専攻 修士課程 入試問題<2008年度>)
問 題
第2問 次の3つから2つを選んで簡潔に説明せよ。
1. アファーマティブアクション
2. 争点投票
3. アーモンドとヴァーバ(G.Almond and S.Verba)
解 説
〜 ポイントをチェック 〜
政治学系大学院の事項説明問題は、このように、複数の事項の中からいくつか選択して解答する形式の問題が多い。大学で使う一般的な教科書の範疇を超える出題は少ないので、全問対応できるだけの準備はしておきたいが、より自信のある問題を選んで解答することが可能だ。 ポイントは、必要な要素を過不足なく盛り込むこと。ここで必要とされるのは、事項に関する説明と、その事項に関する一般的な議論や反対意見など。特に自分の意見やオリジナリティは求められない。それだけに正確な知識をインプットしておくことが重要になる。また、解答の分量は特に指定がない場合、300〜400字程度にまとめるのが一般的だ。 一つめの「アファーマティブアクション」は、政治学の事項説明問題としては非常にオーソドックスな出題。解答例では、前半が語句の説明で、後半が問題点の記述に当てられている。この問題点は、筆者独自の見解ではなく、アファーマティブアクションにはついて回る指摘なので、必ず盛り込んでおきたい要素。 二つめの「争点選挙」も、後半部分で、実際には争点態度の投票行動に対する影響力が小さいことを受けて、どのような議論が展開されたかをまとめている点がポイント。 三つめの「アーモンドとヴァーバ」のような人名問題は、事項説明問題では主流ではないが、大学院によっては出題されることもある。その人物の政治学における主たる業績に注目し、それに関する事項説明だととらえ直すと取り組みやすくなるはずだ。
解答
【解答例】
1. アファーマティヴ・アクション
差別撤廃を実現するためには、単に差別を終わらせるだけでは不十分であり、過去や現在の差別により社会的に不利な状況に置かれている人々に対するそれ以上の配慮が必要であるという考え方に基づいて、状況の実質的改善、実質的な機会の平等の保障のために取られる積極的な措置のこと。障害者に対する補助や経済的困窮に苦しむ者への援助など、多様な形式を取る。女性や民族的少数者を入試や雇用の場面で優遇するといった措置は、従来行われてきた差別への償いや来たるべき共生への準備のために必要なものとして正当化されることが多いけれども、メリットに応じた分配の原理とは相容れず、本来メリットにより分配を受けられるはずの人をその自然的属性により(優遇の対象である集団の一員ではないという理由で)排除するという仕方で逆差別に陥る可能性を孕んでいる。
2. 争点投票
有権者の投票行動の一類型。どのような社会的階層に属しているかによってどの政党を支持するかが決まるという単純なモデルを批判して、ミシガン大学の研究者たちは投票行動における心理的要因の重要性を指摘したが、その心理的要因の一つが有権者の争点態度である。他の心理的要因(政党帰属意識と候補者イメージ)よりも政策争点をめぐる有権者の考え方が投票行動に対して規定的であるとき、有権者は争点投票をしていると言える。しかし、実際には争点態度の投票行動への影響は他の要因のそれに比べて小さい。このことが有権者の政治的判断能力をめぐる議論を引き起こしたが、たとえ有権者が個々の政策争点を認知していなかったり、どの政党の政策がその争点に関する自らの立場に最も近いかを理解していなかったりするとしても、有権者は政権担当者の任期中の業績の総体に対して判断を下すことはできるのであり、また実際にそうした判断に基づいて投票に臨んでいるのだと主張する業績投票理論の登場によって、有権者の合理性が確認された。
3. アーモンドとヴァーバ
1960年代、政治文化の研究に行動科学的視点を導入、実証的に政治文化の国際比較分析を行う。アメリカ、イギリス、西ドイツ、イタリア、メキシコの国民に対し、政治システム、選挙などの入力機構、行政機関などの出力機構、自己という4つのものに対して抱く印象についての世論調査を実施し、各国の政治文化を「未分化型」、「臣民型」、「参加型」のいずれかに分類、「参加型」に属するアメリカとイギリスの政治文化が民主主義的政治体制に最も適合的であることを論証した。アメリカの政治文化の優位を弁証することを目的としている、政治文化の不変性を前提とし、非欧米諸国による民主主義的政治文化の獲得の不可能性を主張している(文化決定論)などと批判される。
第1回:英語(長文全訳)編
第2回:臨床心理士指定大学院・専門科目編
第3回:研究計画書編
第4回:小論文編
第5回:MBAの志望理由書編
第6回:心理学の英語編
第7回:MBAの論述問題編
第8回:国際関係系の専門科目編
第9回:政治学系の専門科目編
第10回:臨床心理士指定大学院の研究計画書編
大学・大学院に関するお役立ち記事一覧