スタディサプリ 進路進学マニュアルTake action! > Action2 城戸翔太さん

Take action!未来へのきっかけをつかもう

The Beginning Story 未来へのきっかけをつかんだ高校生たち

授業で2時間、5・6時間目にデッサン室で2時間、放課後は美術部で2時間。1日6時間、絵筆を持つ日も珍しくない

絵が好きだった。だからそれを追求しようと思った

「もともと小さいころから絵を描くことが好きだったんです。中3の三者面談で『特技を生かせるものを探したら?』と先生に言われたんですね。そのときの自分が好きなものといったら、やっぱり絵を描くこと。だからそれを生かそうと、この高校への進学を決めました」と話す城戸翔太さん。
晴れて高校生となった彼は当初の目的通り、選択制の科目では美術を選び、漠然と「絵が好きだから美術の先生になれたらいいな」と思い描いていた。
そんな城戸さんが、進路をより明確にイメージし、具体的に志望校を絞り込むことになったきっかけが、高2の時に出場した『第28回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト』。大会のテーマは『絆』。スピーチ原稿を作るため、城戸さんは自分につながるさまざまな絆を改めて見つめ直した。そして気づいた。手話が自分にとって、どんな存在なのかということに。

スピーチコンテストの出場で、自分は手話が得意なんだと気づいた

実は城戸さんは身近に手話を使う人がいるため、物心ついてからずっと手話での会話が当たり前だった。手話は城戸さんにとってあまりに身近なものだったため、「それまでは手話で何かをやろうと思ったことがなかった」という。それが福祉科の先生にスカウトされ、手話部のコーチを引き受けたり、手話スピーチコンテストに出場することになったりするという中で、見落としていた自分の特技、手話の存在に気づくことになった。
「コンテストをきっかけに、手話も自分の得意なものとして考えよう、と初めて思いました」と城戸さん。「絆というテーマでスピーチ内容を考えていたとき、家族や手話部のみんな、福祉科や手話部の講師の先生たちと、手話を通して絆が深まっていると気づいたんです」。スピーチ原稿を彼はこう締めくくっている。「進路はまだはっきりとは決まらないけれど、いまあるつながりを糧にこれからじっくり考えていこうと思う」と。

手話スピーチコンテストには、校長先生や福祉科の先生、家族や手話部の仲間も応援に駆け付けてくれた

嵐やゆずの歌を手話にして歌うなど、手話部は手話を学ぶというよりも楽しむ場。いつも笑い声にあふれている

絵を描くことと手話、その両方を生かせる進路とは

手話スピーチコンテストの出場をきっかけに、自分の中に当たり前に存在してきた手話を改めて特技として意識した城戸さん。2年生の後期に行われた担任の先生との面談で、さらに踏み込んで進路を考えるようになった。
「自分のもっているものを生かしたほうがいいよ」という先生からのアドバイスを受け、城戸さんは「自分を生かせるものは絵と手話」だと気づいた。そして出した答えが『特別支援学校の美術教師』という進路だった。
「絵と手話、両方を生かせるものはなんだろうと考えて、出した結論です。単純な足し算ですよね」と城戸さんは笑う。「せっかくこれまで自分が積み重ねてきたものがあるんだから、それを生かさないのはもったいないなって思って」。将来のビジョンが固まると、そのために必要な美術の教員免許、特別支援学校の教員免許、その両方を取得できる大学を絞り込み、高2の終わりには具体的な志望校も1~2校に定めた。

高校の先生の協力があってデッサンの練習に取り組めている

では、その夢を実現するために、いまどのような生活をしているのだろうか。
「自宅では国語、英語、小論文対策と手話検定3級の勉強をしてますね。あと、うちの高校は選択単位制なので、普通に単位を取ったら午前中だけで授業が終わるんです。だから午後はデッサン室でデッサンを練習したり、美術部としての作品に取り組んだりしています」。多い日は合計6時間を絵に費やすが、「全然苦にならないですね。絵を描くのはもともと好きですから。そして、こうやって練習にデッサン室を使えるのも、先生たちが協力してくれたおかげなんです」と城戸さん。本来なら5・6時間めに2年生の授業で使う教室を、時間割をやりくりして3年生のために開放してくれているのだ。デッサンに使うモチーフは自宅に持ち帰れないため、学校で練習するしかない。しかも予備校に通っていない城戸さんにとって、先生のバックアップは実にありがたいものなのだ。

桜高校の先生みたいに親身になって生徒を助けたい

展覧会に向けて、集中的に作品に取り組みたい土曜日や夏休み。本当は休みの先生も、美術部、そして美術専攻の生徒のために学校へ来てくれる。責任者がいないと教室を使えないからだ。「本当に桜高校の先生は、一生懸命に生徒を助けてくれるんです」と城戸さん。ほかにも「この先生には手話スピーチコンテストに出場するきっかけを与えてもらった」、「手話部講師の先生には、コンテストの時にいろいろと教えてもらった」と、さまざまな先生の名前を挙げてから、城戸さんは言った。「桜高校の先生ほどはできないと思うけど…。自分も同じように、生徒たちに親身になって、手伝ってあげられる先生になりたいです」と。
未来というものは、進学したから、資格を取ったから終わるものではない。城戸さんは『特別支援学校の美術教師』という未来の先に、「生徒を全力で応援してあげられる先生」という、さらなる目標を抱いている。彼の明るさと努力が、きっとその夢を実現させるだろう。

先生や友達の話をするとき、とびきりの笑顔になる城戸さん。たくさんの人に愛されるキャラクターだ

城戸さんの、「自分の未来を見つける」5つの方法

1 偶然を大事にしてほしい

2 自分の環境をフル活用する

3 アンテナを張ってきっかけを逃さない

4 先生とのコミュニケーションを大事に

5 生の声に耳を傾けて

自分自身、たまたま小2のときに友達の絵を見て、『自分も絵を描きたい!』って思った経験が今につながっています。『あれ?これはおもしろいな』 『向いてるかも』って思うことがあったら、まず全力でやってみてほしいです。

何かあったり、何かに迷ったりしたら、親や先生など、身近にいる人に相談してみるといいですよね。人生の先輩ならではの導きやアドバイスがもらえるはず。特に学生時代は、頼れるものは頼っとけ!と思います(笑)。

例えば時間ができたとき、そこらへんを歩いてみたら、そろばん塾の看板に気づくかもしれない。そんなとき『やってみようかな』と少しでも思ったら、やってみる。そういうきっかけを見逃さないアンテナは必要かも。

三者面談の時だけじゃなくて、普段から『こんなことを見つけたんだけど』とか、『こんなことをやってみたい』って先生に言ってみると、絶対後押ししてくれるはず。趣味の話でも何でも先生と話すことは大事です。

例えば予備校に通う友達の話を聞いたり、聴覚しょうがい者協会の人と話したりしていると、『その大学はこうだよ』 『美大受験ってこうだって』なんて生の声が聞ける。そういった情報も踏まえて、進路を決めたいですね。

都立大泉桜高等学校3年
城戸翔太さん


美術を専攻し、美術部に所属。手話が得意で、高校2年生の時に手話部のコーチとして抜擢されるほどの腕前。『第28回全国高校生の手話によるスピーチコンテスト』では、奨励賞を受賞。

The Cover Story鶴田浩之さんに聞く、「自分の未来を見つける」5つの方法

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The Beginning Story
未来へのきっかけをつかんだ高校生たち

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未来へのきっかけをつかんだ高校生たち

東京都立山崎高等学校3年 小野 朋生さん

2年生のときには生徒会長を務め、中学・高校と6年間続けたバスケットボール部では常にスタメンという体育会系男子。でも実は小さい頃からよくスイーツを作っており、パティシエになるのが今の目標。

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高橋和太郎さんの「きっかけ」ゲームアプリのプログラミングとの出会い

城戸翔太さんの「きっかけ」絵と手話。得意なものを再認識

吉川 愛さんの「きっかけ」京野菜との出会いで変わった将来の夢

松野 里咲さんの「きっかけ」先生という夢が明確になったのは、チアのおかげ

小野 朋生さんの「きっかけ」人に喜んでもらえる仕事をしたくてパティシエを志望

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構成/平林朋子 取材・文/夏井坂聡子
撮影/金田邦男 デザイン/マイティ・マイティ