解答 |
【MBA志望者の「志望理由書」例】
〔今までの職歴・地位〕
現在、株式会社○○○において、IT・通信関連におけるアウトソーシング事業部コンシューマーサービス部門にて、カスタマーサービスセンターの現場責任者として4年間その業務に携わっている。具体的な職務内容は、弊社契約社員と共にクライアント企業先に常駐し、カスタマーサービスに関わる事業戦略立案、業務改善指導、顧客対応、弊社契約社員の採用・教育訓練・勤怠管理・動機づけ等を行うことであり、その職務内容は多岐に渡っている。
それ以前は、大学卒業後に新規学卒として、現在よりも小規模のアウトソーシング事業会社に2年間勤務し、営業部門の一般営業職員として、新規顧客開拓や既存顧客との間の新規業務立ち上げに従事していた。
〔志望動機〕
私の将来的な仕事の目標は、経営コンサルタントになることである。そのなかでも特に、現在の仕事の経験を活かすことのできる、従業員の教育訓練や動機づけを専門とした人材系のコンサルタントを目指している。
大学院とは私にとって、これまでの偏った経験則による知識を整理し、コンサルタントに必要とされる経営学全般に関する知識を体系的かつ理論的に習得するために有効な場であると考える。さらに、人的資源管理関連領域における知識を深めることで、将来の目標により近づくことができると考える。
また、MBAにおいて、高度で専門的な知識や経験を有する教官の指導や、多種多様なバックグランドを持つ学生同士のディスカッション等を通じて実務に精通した知見を得ることができると考える。特に、貴大学院が掲げる理論と現実の往復プロセス、古典の洞察を学ぶことは、理論に裏づけされた実践的な考え方を身につけることであり、コンサルタントとして確かな分析力を培うためには必要不可欠な要素であると考える。
以上の理由により、貴大学院経営学修士コースを志望する。
〔入学後の計画〕
1.研究テーマ
人的資源管理施策が離職率に与える影響
2.研究の背景
現在私が担当しているカスタマーサービスセンターの職場には、多数の契約社員が勤務している。そこで問題とされていることが、契約社員の離職である。契約社員の主な職種はオペレータと呼ばれる電話受付対応業務であるが、入社後3ヶ月以内におよそ半数が辞めていく現状がある。こうした初期段階における離職率の高さについては、70%を超えるケースもあると言われている(コンピューターテレフォニー編集部, 2008)。労働力人口が下降傾向にある昨今(総務省統計局, 2008)、その確保は企業にとって重要な問題であり、採用と退職の繰り返しは企業収益を圧迫する要因に繋がる。こうした現状はキャリア・パスの欠如をはじめとした人事施策にもその影響要因があると考えられるため(仁田, 2007)、人的資源管理施策と離職率との関係を明らかにしていきたいと考える。
3.研究の目的及び先行研究
本研究の目的は、人的資源管理施策と離職率との関係を検証することである。すなわち、組織内の人的資源管理施策が離職率の低下に影響を与えていることを実証的に分析する。
人的資源管理施策に関して金井(2002) 、守島(2004)は、RJP(Realistic Job Preview:現実的職務予告)の離職に対する有効性をミスマッチ減少の観点から説明している。またたとえば、カスタマーサービスセンターの実証分析における先行研究では、Batt(2002)が参加的施策として教育訓練・職務設計・インセンティブの3指標を設定しその有効性を明らかにしている。一方で、Wood, Holman, & Stride(2006)は、カスタマーサービスセンターにおける人的資源管理と離職との関係についてはいまだ実証的研究が不十分であるため、更なる研究の必要性を説いている。
本研究では、人的資源管理施策をBatt(2002)の、教育訓練・職務設計・インセンティブに加えて、ミスマッチを予防するための採用を変数として使用したいと考える。
4.研究手順
・日本の人的資源管理論に関わる歴史を学ぶ。
・国内外における人的資源管理と離職との関係性を考察する。
・国内外のカスタマーサービスセンターについて学ぶ。
・アンケートによる定量的調査の準備をする。
・国内カスタマーサービスセンターに調査依頼をする。
〔修了後の計画〕
修了後は、これまでのキャリアと貴大学院で培った理論に裏づけされた実践的な考え方を活かし、人材系のコンサルティング会社に就職したいと考える。人的資源管理分野の観点から、具体的な施策の構築、能力開発、動機づけに繋がるような提案・実践等を積極的に行っていきたいと考える。
参考文献
Batt, R. “Managing customer services: Human resource practices, quit rates, and sales growth.” Academy of Management Journal, Vol.45 No.3, 2002, 587-597.
コンピューターテレフォニー編集部 「コールセンター白書2008」 リックテレコム, 2008.
金井壽宏 「働くひとのためのキャリア・デザイン」 PHP新書, 2002.
守島基博 「人材マネジメント入門」 日本経済新聞社, 2004.
仁田道夫 「東京大学社会科学研究所人材ビジネス研究寄付研究部門 成果報告会プログラム」 2007, 34-37.
総務省統計局「労働力調査年報(詳細結果)」日本統計協会, 2008.
Wood, S., Holman, D., & Stride, C. “Human resource management and performance in UK call centres.” British Journal of Industrial Relations, Vol.44 No.1, 2006, 99-124.
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