大学・大学院入試 過去問題&受験準備室

大学院の入試問題ってどんな感じなの?という皆さんのために、実際の過去問と解答のポイントを紹介するこのコーナー。今回は、心理系大学院の英語の試験問題をピックアップします。以下のような大問題が2〜3問出題されるのが心理学系大学院の英語試験の代表的な出題パターン。一般になじみのない専門用語が多数出てくるため、難解な印象がありますが…解答のポイントは?
第6回 今回のテーマ:
心理学の英語編

英語問題例(東京国際大学大学院臨床心理学研究科・辞書不可<2004年度>)

問題

次の英文を読み,問に答えなさい。

 As already stated, the patient's relationship to the therapist is a mixture of a (  @  ) relationship and a (  A  ) relationship. The (  B  ) relationship has been termed the therapeutic alliance (Zetzel, 1956) or the working alliance (Greenson, 1956/1978). Freud (1912a/1958) originally described this aspect of the treatment as a component of (  C  ) that “is admissible to consciousness and unobjectionable and is the vehicle of success in psychoanalysis exactly as it is in other methods of treatment” (p.105). He was aware that patients were unlikely to be able to use (  D  ) unless s proper rapport had been established (S.Freud 1913/1958). Greenson (1965/1978) later noted that a number of analytic stalemates were produced by the analyst's failure to address the development of the working alliance, which he defined as “the relatively nonneurotic, rational rapport which the patient has with his analyst” (p.202).
 Major research efforts on the therapeutic alliance have confirmed its influence on the process and outcome of psychotherapy (Frieswyk et al.1986; Hartley and Strupp 1983; Horwitz 1974; Luborsky et al.1980; Marziali et al.1981). Much of this research points to the strength of the therapeutic alliance as a dominant factor in the outcome of a broad range of therapies (Bordin 1979; Hartley and Strupp 1983; Luborsky et al.1980). These studies also suggest that the nature of the therapeutic alliance in the opening phase of psychotherapy is perhaps the best predictor of the outcome of that therapy.

問1. 下記の中から適当な用語を選び,@からDの括弧を埋めなさい。
同じ用語を重複して用いても構いません。解答欄にアルファベットで記入しなさい。

(A) neutral
(B) fantastic
(C) transference
(D) countertransference
(E) confrontation
(F) empathy
(G) real
(H) interpretation
( I ) advice
(J) positive
(K) negative

問2. 下線の部分の要旨を100字以内で述べなさい。

解説 ポイントをチェック

●お試しください!
「問題」の中で、色のついた文字にカーソルをあわせると、ここだけの解説ポイントが読めます。

 まず、全文を読む前に何について書いてある文章なのかを把握することが重要。日本語の出題文にヒントがある場合もあるが、この問題では、英文の冒頭部分に着目しよう。「the patient's relationship to the therapist(患者と治療者との関係)」についての文であることは、一行目で推測できる。次に着目すべきなのが、心理学の専門用語。そのあとの文章に「the therapeutic alliance(治療同盟)」という言葉が出てくる。「治療同盟」という専門用語の意味をその背景も含めて理解できていれば、治療同盟における、患者と治療者との関係に関連する用語として「転移」を思い浮かべることができる。その転移がCの正解となる。このように、心理学の専門用語に関して単純に日本語訳だけでなく、それに関連する体系的な知識があれば、その後の文章の展開に見当をつけることが可能になる。
 心理学の英語では、上記のような穴埋め問題もあるが、中心となるのは全訳、下線部訳、要約。この問2は下線部を要約するパターン。「dominant factor(主要な要因)」など、学術論文で重要なポイントを論じる際によく使われるキーワードに着目すると、文意をつかみやすい。

解答

問1. @(J) A(K) B(J) C(C) D(H)
問2. これまで行われてきた多くの研究において,治療同盟が治療の有力な要因となることが指摘されており,治療の初期における治療同盟の性質が,治療の結果の有力な予測因となることが示唆されている。

【全文訳】
 これまで述べてきたように,治療家に対しての患者の関係は陽性の関係と陰性の関係の混合体である。陽性の関係は治療同盟(Zetzel, 1956),もしくは作業同盟(Greenson, 1956/1978)と名づけられてきた。フロイト(1912a/1958)は当初,治療のこの側面を,「他の治療法とまさに同じように,意識に受け入れられて異論のない,精神分析での成功の手段である(p.105)」転移の要素として記述した。彼は,適切なラポールが確立されていなければ,患者は解釈を使用することはできないということに気づいていた(S.Freud 1913/1958)。後にGreenson (1965/1978)は,「患者がその分析家とともに持つ比較的神経症的でない合理的なラポール(p.202)」と定義した作業同盟の構築に分析家が取り組まないために,たくさんの分析の行き詰まりが産出されたことについて言及した。
 治療同盟についての主要な研究成果が,心理療法の過程と結果に及ぼす影響を確証してきた(Frieswyk et al.1986; Hartley and Strupp 1983; Horwitz 1974; Luborsky et al.1980; Marziali et al.1981)。この研究のほとんどが,広い範囲の治療の結果において有力な要因になるとして,治療同盟の強みを指摘した(Bordin 1979; Hartley and Strupp 1983; Luborsky et al.1980)。これらの研究はまた,心理療法の開始の段階における治療同盟の性質がもしかしたらその治療の結果についての最大の予測因になるかもしれないということを示唆している。

(協力 by 河合塾KALS http://www.kals.jp/kouza/daigakuin/ )