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昭和医科大学病院 薬剤部
昭和医科大学 薬学部 病院薬剤学講座 救命救急薬学部門 講師
Chapter_01
救命救急センターでの仕事内容や、配属されたきっかけを教えてください。
私は2007年に昭和薬科大学を卒業し、千葉大学の大学院へ進学して抗不整脈薬(アミオダロン)の研究に取り組んでいました。その後、2009年に昭和大学病院(現:昭和医科大学病院)に入職しました。入職2年目に病棟へ配属される際、大学院での研究を生かして「循環器系の病棟に行けたらいいな」と思っていたのですが、配属されたのは予想もしなかった「救命救急センター」でした。最初は驚きましたが、この偶然の配属が私のキャリアの大きな分岐点になりました。一般的に薬剤師というと、調剤室でお薬を用意したり、電子カルテの前でチェックしたりするイメージが強いかもしれません。でも、救命救急での私たちの主な居場所は、ベッドサイドや処置室そのものです。
救急車で患者さんが搬送されてくると、医師や看護師と一緒に処置室に入り、初期診療の場に加わります。一刻を争う状況の中で、必要なお薬をタイムリーに準備したり、点滴の投与ルートが安全に確保されているかをその場で確認したりするのが私の役割です。多職種が手分けして声を掛け合いながら治療を進める現場で、お互いの強みを活かして協力し合えるチームの一員として動けることに、大きなやりがいを感じています。「緊急で運ばれてきた患者さんの複雑な病態を深く考える」というこの仕事は、やっていくうちに自分の性格にもしっくり馴染んでいき、18年目を迎えた今も変わらず大切にしている日常です。

Chapter_02
救急現場や災害医療において、薬剤師にはどんな役割があるのでしょうか?
救命救急センターに運ばれてくる患者さんは、時間が経つごとに病状が刻一刻と変化していきます。そのため、私たちは画像(CTやX線)の所見、血液検査の値、患者さんの身体の状態などを総合的にしっかり見ていく「モニタリング」の力を鍛えることが重要だと感じてきています。一つひとつのデータから「今、身体の中で何が起きているんだろう?」といくつもの可能性を考え、薬の使い方を慎重に追いかけていく必要があります。
また、私は厚生労働省が管轄する日本DMAT(災害派遣医療チーム)の隊員としても活動しており、能登半島地震などの大規模災害時にも現地へ赴いてきました。インフラや物資が限られる発災直後の超急性期では、日頃の救命現場で学んだ知識や冷静な判断がとても役立ちます。 最近は医療現場でもAIの活用が進んでいますが、患者さんの状態やご家族の思いを汲み取りながら、多職種でじっくり議論して治療方針を決めるような「人の気持ちや倫理が関わる判断」は、機械にはできない人間ならではの仕事です。診断や処置は医師にお任せしつつ、私たちは薬の最新知識やデータを深く調べてチームに共有する。それぞれの役割を尊重しながら命と向き合えることが、この仕事の本当の魅力だと感じています。

Chapter_03
玉造先生がこれまでの歩みや、これからの教育・指導の中で大切にされていることは何ですか?
実は、私が今こうして救命救急の分野で長く働いているのは、素晴らしい恩師との出会いがあったからです。当院の救命センターは30年ほど前に設立されたのですが、当時、日本でまだ前例が少なかった「救急の現場に薬剤師が入る」という道を切り拓いたのが、恩師の峯村先生でした。私は峯村先生に手取り足取り教えてもらいながら仕事を覚え、先生が退職されるタイミングでそのバトンを少しずつ受け継いできました。学生時代には全く想像もしていなかった救命救急という道ですが、素敵な恩師や仲間との出会いによって、気づけば自分にとって欠かせないライフワークになっていたのです。キャリアというのは、最初から完璧に計画通りにいかなくても構いません。「あの先生との出会いがあったから」「声をかけてもらったから」という人の繋がりによって、思いがけない方向へ道が描かれていくこともたくさんあります。現在は私も指導する立場になり、若手薬剤師と一緒に処置室に入ってアドバイスをしながら、重症部門で活躍できるスペシャリストをじっくり育てる環境作りに取り組んでいます。また、母校の昭和薬科大学での講義も引き継ぎ、同期である山本先生(別記事登場)たちと一緒に教壇に立っています。人との繋がりを大切にしていれば、きっと自分にぴったりの面白い未来が開けていきますよ。

未来の薬剤師へのメッセージ
理系の高校生の中には、医師と薬剤師のどちらを目指すか悩む人もいるでしょう。それは優劣ではなく「どのように医療に関わりたいか」の選択です。診断や手術は医師の領域ですが、莫大な最新論文からエビデンスを見極め、薬物療法のプロとして治療の中心を担う道が薬剤師にはあります。
救命救急や災害医療という、日常生活に密接した社会的意義の大きいフィールドで、あなたの挑戦を待っています!