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文字の間違いを直すだけじゃない! 校正・校閲の仕事の魅力とは?

文字の間違いを直すだけじゃない! 校正・校閲の仕事の魅力とは?

すこし前に、ドラマでも話題になった校閲のお仕事。
 
でも、実際にはどんなことをしているのかイマイチわからない…という人も多いのでは? 
 
そこで、「新潮社」の校閲部を直撃し、仕事内容や魅力について聞いてみることに!
 

本の世界に間違いや矛盾がないかを確かめる仕事

 
まずは、校閲部部長の飯島秀一さん、新書の校閲を担当している山形壮平さんに、普段の仕事の手順についてうかがった。
 

「作家さんからいただいた原稿は、実際に出版する本の大きさや文字のサイズ、1ページに入る行数などに合わせて、試しに印刷されます。これを“ゲラ”と呼ぶのですが、この“ゲラ”を読んで、内容に間違いがないかを確認するのが私たちの仕事です」(山形さん)


※タップするとゲラを拡大できます
 

「ぼくの場合は、一度全体をザッと読んで内容を把握してから校閲を始めます。
 
この時、“『私』と『わたし』”、“『バイオリン』と『ヴァイオリン』”のように、作品の中に何度も出てくる大事な言葉の表記のバラつきをみつけたら、それをノートに書き留めて、見落とさないように気をつけていますね。
 
二回めに読む時は、一文字一文字をペン先で追いながら『と、あ、る、夏、の、日…』というように慎重に読んでいきます。誤字脱字はもちろん、年号や固有名詞、専門用語などが出てきた場合は、間違っていないか必ず確認をします。
 
基本的には事典や新聞、専門書などで調べるのですが、本になっていない情報はインターネットで検索することもありますね。
 
その場合は、公式サイトのような信頼度の高いページで確認したり、出典元のページをプリントアウトして添付するようにしています」(山形さん)

 
Wikipediaを見ることもあるそうだが、そこに載っている情報ではなく、下に記載されている“出典元”からたどっていって、書籍等を調べるというからすごい。
 
そんな校閲部には、事典や辞書、専門書などがズラリ!
 

 

「自分の中で『この漢字の使い方、間違ってるな』と思っても、文学作品などでは自分の言語感覚では思いもよらない表記を使う場合もあるので、必ず辞書を引いて用例までしっかりと確認をします。
 
歴史上の人物は『人名事典』で調べるのですが、昔の人の情報は、生没年(生まれてから亡くなるまでの年)にバラつきがあることも多いので、複数の『人名事典』を見比べながら確認をしていますね」(飯島さん)

 
また、“本の中の世界”に矛盾がないかを調べるのも校正・校閲者の仕事だという。
 

「例えば、登場人物の描写が出てきた場合は、『背が高く』『長い黒髪で』などと紙に書き出してプロフィールを作っておきます。
 
そうすると、本の途中で人物像が変わると、すぐに気づくことができるんですよ。
 
また、密室殺人などの場合は、間取りを描いて矛盾がないかを検証したり、作品によっては年表を作成することもあります」(飯島さん)

 
ほかにも、「新宿から8時の電車に飛び乗り、8時半に皇居の前に着いた」という文章があったら、本当にこの時間で移動できるかを乗り換えサイトで調べたり、「4月上旬、満開の桜が…」という一文があれば、舞台となっている場所の桜前線を調べたりもするという。

「さすがに、その場所まで足を運んで確認することはありませんが(笑)、休みの日に近くまで散歩に出かけてみたり、電話で確認したりすることはありますね。以前、作中に9月の雲の動きの描写があって、それが正しいかどうかを確認するために、気象庁に電話で問い合わせたこともありました」(山形さん)

 
なんという気が遠くなる作業…! 
 

「本の内容にもよりますが、1日平均30ページを目安に進めているので、1冊の本を校閲し終わるまでには6~10日ほどかかります。
 
仕事を始めたばかりのころ、難しい本の担当になって、1日5ページしか進まない…ということもあったのですが、発売日は決まっているので、正確さとすばやさが求められる仕事なんですよね」(山形さん)

 

 

絵の中の看板までも確認する漫画の校閲

 
また、新潮社では書籍だけでなく漫画の校閲も行っているという。
 

「漫画の場合は、絵に間違いがないかも確認しています」

 
と語るのは、現在漫画の校正・校閲を担当している廣瀬誠さん。
 

「基本的には、作者の意志を尊重するのですが、着物の合わせが逆だったり、前のコマでは左バッターだった登場人物が右バッターになっていたり…という場合には、指摘出しをしています。
 
また、セリフのふりがなや、絵の中に出てくる看板、ユニフォームの文字など、手描きの文字も必ずチェックしていますね」

 
そんなところまで! ちなみに、今までで一番大変だった作品は…?
 

「群馬県のマイナーなうんちくが描かれている『お前はまだグンマを知らない』ですね。事典などには全然載っていない“群馬あるある”がたくさん登場するので、調べるのに苦労しました(笑)。
 
うんちく系のギャグ漫画は、1つひとつ、うんちくを調べていくのでかなり時間がかかるんですよ。
 
しかも、うんちくが間違っていると笑えなくなってしまうので、とても神経を使います。逆に、1つのコマが大きくて、『ドーン!』『バン!』など擬音が多くセリフが少ないバトル漫画はスイスイ進みますね。
 
バトルが始まるとひそかに『やった!』と思います(笑)」

 
発売までの期間が短い漫画の校閲には、スピード性が求められるという。
 

「どこまでも掘り下げて追求するというよりは、『これで大丈夫です』と編集者の背中を押してあげることが大切なんですよ。
 
誤字や脱字を見逃さないのは当たり前ですけれど、商品として問題ない形で出荷できる“バランス力”が、漫画の校閲者に求められる能力だと思います」

 

出版物の質を守ることがやりがいに繋がる

 
並外れた集中力と想像力で、コツコツと地道に事実確認を続けていく校正・校閲のお仕事。
 
この仕事の魅力について、山形さんに聞いてみた。
 

「どんなにすばらしい本でも、誤字があったり、間違ったことが書かれていれば、その価値は大幅に下がってしまいます。自分が間違いをみつけることで“出版物の質”が守られるというのは、とても魅力のある仕事だと思うんです。
 
ぼくは大学で音楽について学んでいて、出版業界と直接関係のある学部ではなかったんですよ。
 
でも、本を読むことが昔から好きだったので、出版関係の仕事に就きたいと思っていました。
 
そんなとき、知り合いから校閲の仕事を勧められて、新潮社の入社試験を受けたんです。
 
もともと、自分で文章を書くよりも調べものをするほうが好きだったので、この仕事は自分に合っていると思いますね。
 
“作者の方の表現をお手伝いできる仕事”に就けて、本当によかったと思っています」

 
校閲者は、作者と直接会うことはほとんどないそう。
 
だからこそ、「ゲラに『thanks』とメッセージが書いてあったり、作者の方から直接お礼を言っていただいた時は、すごくうれしかったですね」と山形さん。
 

 

いろいろなことに興味をもって“調べるクセ”をつける!

 
最後に、校正・校閲者になるために必要なことを聞いてみた。
 

「この仕事に資格は必要ありません。
 
そのかわり、日頃から何にでも興味をもって、疑問があれば調べるクセをつけることが大切だと思いますね。
 
調べる分野は、アニメ、歌舞伎、音楽…何でもいいんです。
 
広く浅く興味をもつこと。それが、高校生の皆さんが今から始められることではないでしょうか。

 
ちなみに、ぼくが調べものをする時は、時間があれば電子辞書ではなく紙の辞書を使うようにしています。
 
これには理由があって、電子辞書だと調べたい1つの言葉しか表示されないのですが、紙の辞書は、ページを開くといろんな言葉が視界に入ってくるんですよ。
 
偶然、隣に並んでいた言葉を見て『こんな意味があるんだ』と発見することも多いので、自然と知識が広がるんです」(山形さん)

 
また、今の高校生だからこそ“強み”になることもあるという。
 

「近年、ライトノベルなどでは、絵文字やネット用語が使われることが増えてきました。
 
今の高校生は、若い文化を感覚的に理解しているので、校閲にとても役立つと思いますよ」(廣瀬さん)

 

 

知識と経験で作家や編集を支える校閲の仕事。
 
本が好きなら、校正・校閲者を目指してみるのもアリかも?
 
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内田静穂 short cut

内田静穂/short cut

1991年1月生まれ。滋賀県出身。お肉とアイドルと謎解きが好き。学生時代はさまざまな職業を体験したいと思い、塾講師、イベントスタッフ、カフェなど掛け持ちをしてバイトにいそしんでいました! 現在はライター事務所・ショートカットに所属し、日々修行中です。

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