外務省の「国家一般職」ってどんな仕事?海外勤務もあるの?高校卒業後に入省した女性職員に聞く
「外務省の職員」というと、どんな人をイメージする?
「高学歴で、英語も堪能で…」というイメージをもっていたりするのでは?
逆に、そういう人でないと、外務省で働けないと思ってない?
今回は、「将来の夢はお菓子職人。勉強は嫌い!」という高校時代を過ごしながら、現在は外務省で一般職職員として活躍する藤井静(ふじい しづか)さんにお話をうかがった。
1.お菓子職人志望から公務員志望へと大きく進路変更
2.外務省入省1年目でインドネシア・バリ島への出張を経験
3.海外に行ったからこそ、見えた日本
4.語学研修で優秀な成績を修め、メキシコでスペイン語研修を受けることに!
5.さまざまなバックグラウンドをもつ人たちと一緒に働けるのが一番の魅力
お菓子職人志望から公務員志望へと大きく進路変更
それがきっかけになり、高校卒業後は製菓の専門学校で勉強して、お菓子職人になろうと決めました。ところが、親からは大反対されました。
高校が進学校だったので、なぜ大学に行かないのかと。
でも、私は大学で勉強したいことが特になかったので、大学進学には迷いがありました」
それが公務員志望へと大きく方向転換。
そんな時、実際にお菓子屋さんを経営している方にお話を聞く機会がありました。
その方が言うんです。『まず公務員になって、それでもお菓子職人の仕事を諦められないなら転職すればいいんじゃない? 公務員になってからお菓子の道への転職は頑張ればできるだろう。でも、公務員試験には年齢制限があるから、お菓子職人になってから公務員に転職するのはむずかしいと思う』と。
その言葉に納得し、公務員志望へと一気にスイッチが入りました」
3年生の6月から、参考書や問題集を何十冊も買って3ヵ月間猛勉強し、国家公務員一般職試験(※)に合格。官庁訪問で興味をもった省庁が外務省だった。
(※)国家公務員一般職試験
「大卒程度試験」と「高卒者試験」の2種類のほか、社会人対象の「社会人試験(係員級)」がある。それぞれ年齢、学歴などの受験資格が設けられている。
外務省入省1年目でインドネシア・バリ島への出張を経験
2013年4月、外務省へ入省。最初に配属されたのは経済局政策課の局庶務班。
●備品やパソコンの管理
●文書管理
●会計・予算管理
●出張する職員のサポート(飛行機や宿泊先の手配など)
※外務省で働くことを通して、諸外国への興味がわき、海外へ旅行に行くことが多くなったと話す藤井さん。カンボジアのアンコールワット遺跡群にて。この一帯の遺跡は世界遺産に登録されていて、その保存・修復には日本も多くの支援をしている
仕事はデスクワークだけではない。藤井さんは入省1年目に海外出張の機会に恵まれた。
「インドネシア・バリ島への出張でした」
--現地での業務は?
移動手段や警備の手配、宿泊先の確保、会議場の設営などです。
現地の日本大使館だけでは対応しきれないため、東京の本省や、普段は他の国の大使館等で働いている職員が現地へ応援に行き、準備をするのです」
藤井さんのこの出張は、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議の準備が目的の4日間の出張だ。
まだ日常の業務でさえ覚えきれていないのに、そこにいきなりの海外出張。
何をやればいいのかわからず、きびきびと働く先輩たちの姿に圧倒されていました。
学ぶことが多く、貴重な経験になりましたが、積極的に動けず、自分はなんてポンコツなんだろうって、落ち込みました」
そんな藤井さんを見て、励ましてくれたのは一緒に現地入りした先輩職員たち。
首脳会議を終えた夜、海辺の散歩に誘ってくれて、こんな言葉をかけてくれた。
『初めての出張なんだから、うまくいかないこともある。これから仕事の経験を積んで、挽回していけばいいんだよ』と。
海外に行ったからこそ、見えた日本
--もともと海外に興味があったんですか?
でも、職場で知り合う人ほとんどが当然のように旅行や出張で行っていて、専門の言語は何ですか?なんて聞くと、(英語はもちろん)ロシア語、ドイツ語、アラビア語、タイ語、ブルガリア語、etc. さまざまな言語でびっくりでした!
私が知っている海外ってほんの一部なんだな、と思うと同時に、もっと海外を気軽に感じていいんだ、自分も現地に旅行してみたい、と思うようになりました」
※ブータン王国のお祭りで見つけたというテレビカメラの日章旗マーク(日本の国旗と「From the People of Japan」の文字で、日本からの支援であることを示している)
--現地で印象的だったのは?
それは日本の開発協力(ODAによる支援)を、実際に目にしたとき。
初めて行く国なのに、私たちの支援がその国の人々の生活を支えて、感謝されていました。
その後、偶然にも国際協力局に配属になり、まさに日本の開発協力を所掌する部署だったので、ここは確かに日本と世界をつなげているんだ!と実感できて嬉しかったです。
もし皆さんが「外交」や「国際協力」に関心があるなら、この「スタディサプリ進路シリーズ」を継続して読んだり、外務省がどんなことをしているのか調べてみてほしいです。
もし興味がなくても、日本は世界中の人が暮らしやすくなるために、さまざまな面で活動している、というのを知っていてほしいなと思います」
※旅行で訪れたブータン王国のタシチョ・ゾン(国会議事堂のような所)にて。周りの低い建物はブータンの中央省庁
※中部の街ブムタンのにかかる橋。入り口には日本からの支援で建設されたことを示す掲示がある!こんなに遠い地の人たちにも、日本の支援が届いていて嬉しい
語学研修で優秀な成績を修め、メキシコでスペイン語研修を受けることに!
入省3年目に所属していた外務審議官室での経験も大きいという。
名前がわからなかったり、外国語で何を言っているのかわからないときはすごくあせってしまって…。
先輩職員から『慌ててはダメ!』とよく叱られましたが、そのおかげで、どんな電話でも冷静に応対できるようになりました。
でも、その時のことを忘れないよう今も電話機に『落ち着け!』と書いたフセンを貼っています(笑)」
入省5年目の今、国際協力局政策課に所属。仕事で心がけていることは、慌てず、冷静でいること。
外務省の語学研修でも頑張ってきた藤井さん。
入省1年目から3年目まで英語を、4年目には専門言語としてスペイン語を選択して研修を受けた。
外務省には語学の研修で優秀な成績をおさめれば、海外で語学研修を受講できる制度があり、藤井さんは成績優秀者としてその研修生に選ばれた。
この夏から10カ月間、メキシコの大学で語学講座に通い、スペイン語を勉強するのだという。
さまざまなバックグラウンドをもつ人たちと一緒に働けるのが一番の魅力
--一般職の仕事のどんなところに魅力を感じている?
帰国子女も多いし、語学や外交政策などの専門家も大勢います。
また、他の省庁や地方自治体、企業から出向してきている方もいます。
そうした方々と一緒に働けて、たくさんの刺激を受けながら成長していけるのが一番の魅力です。
また、お菓子職人の夢は諦めてしまいましたが、今は日頃の業務とスペイン語の勉強に全力投球しています。
この先もしかしたら、お菓子が気軽に買えないような危険地帯や途上国で勤務することもあるかもしれません。
その時に、手作りのお菓子を館員に振る舞って、喜んでもらえたら良いなと思います!」
藤井さんのように、外務省の一般職職員として外交のサポートをする仕事。
専門学校や短大などに進学してから目指すこともできる。
興味がわいてきた人は、詳しく調べてみよう!
藤井静
外務省 国際協力局 政策課
2013年、高校卒業後に一般職職員として外務省に入省。最初に配属されたのは、経済局政策課。その後、総合外交政策局軍縮不拡散・科学部国際原子力協力室、外務審議官室で政務担当外務審議官付き(秘書業務)、領事局旅券課を経て、2016年10月に中南米局南米課に着任。
中南米局南米課では、安倍晋三総理大臣のペルー、アルゼンチン訪問のための現地の応援体制の調整に携わる。本番直前には夜通し資料準備などすることもあったが、「大変だけど、みんなで協力して作業するのは学園祭の準備みたいで面白い」と感じたという。
2016年12月、国際協力局政策課へ。
広報班に所属し、日本の国際協力(ODA)の取り組みを国内外に情報発信するため、スタディサプリの「世界と日本のつなぎかた。」(本シリーズ)やワン・ワールド・フェスティバル(関西最大の国際協力イベント)等の広報業務に携わった。外務省が実施する広報事業には高校生のみなさんも気軽に参加できるイベントもたくさん。ぜひ、一度足を運んでみてください。
※グローバルフェスタJAPAN
2017年は9月30日(土)・10月1日(日)に開催(会場は東京都江東区のお台場センタープロムナード)。
※ODA出前講座
2017年5月から庶務班に所属。
2017年8月からメキシコで10ヵ月間の在外語学研修を予定。
学生の間は腕時計なんてしていなかったので、『これ付けてちゃんと社会人らしくしなよ!』と激励されたのを覚えています。
使い始めて5年目ですが、これからも長くお世話になります」