ランドセルの老舗としてバッグ業界で尊敬される土屋鞄製造所。私も社会人1年目は職人としてランドセル製作に携わり、現在はデザイナーとして様々なバッグづくりに取り組んでいます。デザイナーは自分の好き嫌いでOKな仕事ではありません。使う人あってのデザインなのです。お客様が求めるものを形にすることにやりがいを感じるようになりました。ブリーフケースを手掛けたときのことです。人前で取り出すバッグで、型崩れやみすぼらしさのない、会う相手に失礼がない品にしないといけません。自由にデザインできる要素は限られてきます。ビジネス街の東京・丸の内に行きビジネスマンの様子を眺めたり、リサーチも欠かせませんでした。
仕事内容を幅広く考えることが大切だと思います。1個のバッグを最後まで縫い上げることばかりが職人ではないんですね。量産品を効率よく製品にする分担作業も重要な仕事です。職人というと黙ってひとりの世界でつくるイメージを持つ人が多いでしょうが、実際は打ち合わせも多く周囲とのコミュニケーションが必要な仕事です。また、ずっと働きたいなら、つくるアイテムが行き着く先のことを考えるといいでしょう。誰に届けたいとか、受け取った人の笑顔が見たいとか。そうやって自分が担当する作業を楽しめたら、職人として長続きすると思います。
バッグづくりを学ぶ学校を探して文化服装学院に決めたのは、必要な設備がいちばん整っていたから。サマーセミナーに行き革素材の面白さを伝えられたことも大きなきっかけでした。文化のいいところは、まず、先生方がプロフェッショナルなこと。各分野に専門家がいて、さらに既製品に詳しい先生や1点モノに詳しい先生など得意分野もさまざまです。バッグデザイン科は先生とOBとのつながりが深く、OBのアトリエに手伝いにいくなど社会経験もさせてもらえました。あと文化で素晴らしいのが設備。使い道が限られる特殊なミシンまで揃っていて、プロになったいまも、本当に凄いことだと思います。蔵書が多い図書館も役立ちました。
株式会社土屋鞄製造所 バッグデザイナー/バッグデザイン科 卒/※文化服装学院公式サイト 卒業生取材『LINKS』より一部転載 https://sumirekai.bunka-fc.ac.jp/interview/links/006/