移民研究を起点に、近年はグローバルな「人、モノ」の移動を巡る問題に関心を寄せています。キーワードは「パイナップル」。このとても身近な果物がどのようにして人と関わり、移動し、産業化されていったのか。そこにはグローバルな収奪と、収奪により生業を失ってしまった人々が、新しい土地で新しい産業を生み出した歴史が存在します。移民研究は、地域や民族単位で分析することが主流ですが、私が知りたいのはそれらの枠組みを超えた全体像です。人とモノのグローバルな移動を通じて、これまで社会で通説とされていたことや考え方が、現実とは異なっているという発見が多くあります。多くの人が「当たり前」だと思っていたことを見直すことは「私たちにとって本当に暮らしやすい社会の在り方」を考えることにも繋がります。
八尾教授が担当する授業「グローバル社会論基礎」では、現代社会の成り立ちについて最新の学説をもとに学びます。その内容は「現代社会の仕組みはヨーロッパの人々と、その外で暮らす人々が関わり合うことで確立されたものが多い」というもの。この学説をより具体的に伝えるために、教授が用いている題材が「メロンパン」です。メロンパンはどこで、誰が、どうして生み出し、どのように伝わったのか。身近なモノから起きた「グローバルな移動」が社会に与える影響について実感をもって学び、さらに理解を深めることができます。
複数の国にルーツがあったり、国境を越える移動を生きる人々の中には「自分はいったい何者なのだろう」と思い悩む方が少なくありません。移動を生きることを様々な形で学び、暮らしやすい社会の実現に繋げましょう。
専門分野/社会学、移民研究
略歴/博士(社会学)。これまで神奈川大学・上智大学・早稲田大学などで教壇に立ち、2024年より現職。講義ではK-POPアイドルなどの楽曲やテレビゲームなど、一見するとグローバル化とはあまり関係がなさそうな身近な題材から国際社会のさまざまな課題や国際関係論の最先端の議論との結びつきを示し、グローバル化する社会の課題についてわかりやすく解説することを心がけているという。