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名古屋工業大学、ヘリオロドプシンの発見に関する論文が「Nature誌」に掲載
2018/7/11
名古屋工業大学オプトバイオテクノロジー研究センターの神取秀樹教授、井上圭一准教授(現東京大学物性研究所)、角田聡客員准教授、イスラエル工科大学のオデド・ベジャ教授らの国際共同研究グループは、これまでに全く知られていなかった光応答性タンパク質・ロドプシンを発見し、ヘリオロドプシンと名付けた。

この研究は、英国の科学雑誌「Nature」オンライン速報版(2018年6月20日18時(英国時間))に掲載された。
 

【本研究のポイント】
・これまでに発見されているロドプシンは、タイプ1(微生物由来)とタイプ2(動物由来)のいずれかに分類され、地球上にはタイプ1とタイプ2しか存在しないと考えられていた。
・今回、イスラエルのガリラヤ湖に生息する微生物の網羅的遺伝子解析を行い、タイプ1、タイプ2とは異なる新しいロドプシンを発見し、ヘリオロドプシンと名付けた。
・ヘリオロドプシンは広く微生物やウイルスに含まれていることが分かり、地球上の生物が行う新しい光利用戦略が存在することが明らかになった。
今後、オプトジェネティクス(光遺伝学)にも新展開をもたらすことが期待される。

 

【背景】
ロドプシンはヒトの目の中で視覚を担う膜タンパク質の一つで、光を認識し、視神経へ信号を伝えるための初期反応を担っている。

ロドプシンは、7回膜貫通ヘリックス構造の中に光を吸収する分子としてレチナールを結合している。
レチナールの光誘起構造変化(光異性化反応)がタンパク質の構造を動かすことで、情報伝達分子である三量体Gタンパク質を活性化する。
 
一方、細菌などの微生物にもロドプシンは存在し、光を情報に変換するもののほか、光でイオンを輸送するものや光で酵素活性をもたらすものなど、様々な機能を持つロドプシンが存在する。

また、20世紀には微生物のロドプシンは特殊な環境に棲息する特殊な生物だけが持っていると考えられていたが、今世紀に入ってゲノム解析の進化により海の表面に棲息する微生物の7割がロドプシンを持つことがわかってきた。

さらに、微生物由来のロドプシンのうち、イオン輸送ロドプシンを動物の脳神経細胞に発現させ、神経興奮や抑制を光で制御することによって動物の行動を操作するオプトジェネティクス(光遺伝学)という新技術が2005年に開発された。オプトジェネティクスは脳の機能や様々な生物の働きを解明するためのツールとして大きな期待を集めている。
 
このように、応用面からも注目されるロドプシンは、微生物に由来するタイプ1ロドプシン、動物に由来するタイプ2ロドプシンと分類することができる。

現在も次々に新しいロドプシンが報告されているが、それらは必ずタイプ1かタイプ2に分類され、地球上のロドプシンはタイプ1とタイプ2しか存在しないと考えられていた。
 

【本研究について】
今回、イスラエル最大の淡水湖であるガリラヤ湖(英語名Lake Kinneret)に生息する様々な微生物の遺伝子を網羅的に解析した(メタゲノム解析)。

それらの中にロドプシンの遺伝子がある場合、その遺伝子を大腸菌で増やしてレチナール分子を加えると、着色するという特徴がある。イスラエルのグループはレチナールを加えることで紫色になったロドプシンと考えられる遺伝子を解析したところ、そのタンパク質のアミノ酸配列はそれまでに知られているタイプ1ともタイプ2とも大きく異なっていることがわかった。
 
そこでイスラエルのグループはロドプシンの解析技術に優れた名工大グループに遺伝子を提供し、国際共同研究が始まった。
名工大グループは、様々な生物物理学的手法、物理化学的手法を駆使して、この新しいロドプシンの性質を徹底的に調べた。
 
その結果、この新しいロドプシンは、アミノ酸配列が全く異なっているにも関わらず、タイプ1ロドプシンと同じ形のレチナール分子を結合すること、光を吸収すると異性化反応・プロトン移動反応といったよく似た反応過程を示すことがわかった。
 
一方、タイプ1ロドプシンに特徴的なイオンを輸送する性質はなく、光反応サイクルが遅いことからこのロドプシンは光情報伝達に関わるものと推測された。
実際、最後に生成する中間体では大きくタンパク質が変形しており、これが信号伝達をもたらすことが示唆される。
 
興味深いことに、本研究により発見されたロドプシン遺伝子をデータベースと照合してみると、たちまち500種類を超える類似タンパク質が見つかった。
その生物種は古細菌、真正細菌、藻類などの真核生物から巨大ウイルスにまで見つかっている。国際共同研究グループは、第3のロドプシンとも言うべきこのタンパク質群にギリシャ語の「太陽」からヘリオロドプシンと名付けた。
 

【今後の展望】
今回のヘリオロドプシンの発見により、地球上で生物が行っている光利用戦略が新たに存在することが明らかになった。

しかしながら、ヘリオロドプシンの機能が解明されたわけではない。ヘリオロドプシンは反応性が遅いことから情報伝達に働いていると考えられているが、ヒトの目のロドプシンが活性化する三量体Gタンパク質のようなパートナーとなるタンパク質探しは始まったばかりだ。
 
またヘリオロドプシンを動物細胞でつくらせた場合、どのような振る舞いをするのか全くわかっていないが、ヘリオロドプシンはオプトジェネティクスのツールとしても新しい展開をもたらす可能性がある。
 
■詳細リンク先(https://www.nitech.ac.jp/news/press/2018/6784.html)
 
名古屋工業大学(国立大学/愛知)
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