以前、私は大学教員として予防歯科を担当すると同時に、保健所の歯科保健にも携わっていました。小学校や福祉施設へ出向き、歯科検診や口腔衛生の指導をする一方、歯科医院のない農村地域でのフィールドワークを通し、次世代の歯科保健医療のあり方について見聞を広めました。特に、介護の必要な方のお宅で歯科医師が治療を行う「訪問歯科診療」の必要性は強く感じていました。そのため厚生省(現:厚生労働省)へ入省した際は、訪問歯科診療の定着化や健康寿命を考慮した制度の見直しなど、時代に即した歯科保健医療の普及をめざし、医療保険制度の整備に携わりました。厚生省退職後は、歯科大学で歯科医療を社会学・法律学的な見地から学修する「社会歯科学」の指導に当たり、高い人間性と倫理観を持った歯科医師・歯科衛生士を育成しています。
厚生省に勤務していた当時、「8020運動(80歳で20本の歯を残そう)」の普及にも尽力しました
近年、ガンなどの医科疾患患者や高齢者に対する口腔ケアの有効性が検証され、総合病院や介護施設、訪問診療などでも歯科衛生士のニーズが高まっています。そのため、歯科衛生士は医療・福祉など幅広い分野の知識とともに、倫理観を持って人々の健康に貢献する医療者として、様々な法制度について熟知することが求められます。石井先生が2年次から担当する「保健医療福祉論」の授業では、歯科衛生士法にとどまらず、医療・福祉の法制度や動向を広く学ぶことで、変化する社会ニーズに応える歯科衛生士としての知識・見識を養います。
歯科保健医療にまつわる法律や制度を深く学ぶことで、歯科衛生士の仕事の重要性も実感することができます
少子高齢化を背景に、社会的にニーズが高まっている歯科衛生士。結婚や出産を経ても仕事を継続できる職場が多いため、近年人気の職業です。未来の日本の健康を支える医療者として、ぜひ皆さんも活躍してみませんか。
1972年愛知学院大学歯学部卒業後、愛知県内の歯科大学教員・専門学校の講師、名古屋市保健所嘱託医として幅広く活動。1990年厚生省に入省し、保険局歯科医療管理官、健康政策局歯科衛生課長などを務める。1999年より東京歯科大学社会歯科学研究室教授、2004~2010年まで東京歯科大学千葉病院長を務め、2011年東京歯科大学副学長、2017年東京歯科大学短期大学学長に就任。
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