アイドル衣装を担当する衣装スタイリストになるには! 人気スタイリストに魅力を聞いてみた
数々のアイドルが活躍する今。
彼女たちが着こなす衣装を見て「かわいい!」と思ったことがある人も多いのでは?
でも、そんなアイドルたちの衣装を作る仕事には、いったいどうしたら就けるんだろう?
そこで、人気ガールズバンド「SILENT SIREN(以下、サイサイ)」や、国内外で“KAWAIIジャパンアイドルカルチャー”を発信するアイドル「わーすた」などの衣装を手がけるスタイリストの竹内遥香さんに話を聞くことに!
<<目次>>
▼高校時代の進路選択▼
進路に迷ったとき、「洋服が好き」という気持ちにあらためて気づいた
▼衣装製作者になる方法▼
「自分を変えたい」という想いが夢を見つけるきっかけに
▼衣装製作の仕事の流れ▼
パフォーマンスに合わせて細かく衣装を作る
▼衣装製作を仕事にする魅力▼
大変な制作のあとには感動の光景が!
▼高校生の今からできること▼
自作しながら作業に慣れて、楽しむことが大切
▼高校時代の進路選択▼
進路に迷ったとき、「洋服が好き」という気持ちにあらためて気づいた
まず、竹内さんが衣装制作の仕事をするようになったきっかけを聞いてみた。
といっても、もともと服飾系の道を目指していたわけではなかったんです。
私の通っていた高校は進学校だったので、最初は普通の大学に行くつもりでした。
でも、オープンキャンパスに行っても、進みたい学部や学びたいことが全然具体的に見えなくて…。
『自分が好きなことってなんだろう?』ってあらためて考えたときに、『そういえば私、小さいころから洋服が好きだったな』って気がついたんです。
それで、母を説得して服飾の専門学校に入学することに決めました」
幼稚園のころから洋服に興味があり、当時大好きだったアイドルの衣装をお母さんに頼んで作ってもらったこともあるという竹内さん。
ただ、自分で服を作った経験はまったくなかったという。
だから、専門学校に入ったあともミシンを使うことに苦手意識があって、できるだけ縫う授業が少ないコースを選択したんです。
でもある日、ふと『このまま、ただ授業を受けてるだけで、本当に自分の身になるのかな?』と不安になってしまったんですよね。
私は先生から言われたことをやるだけの“受け身の学生”だったので、授業内容が身についている気がしなかったんです」
そう思った竹内さんは、自分の学校とガールズバンドのサイサイがコラボして衣装制作を行なうプロジェクトに参加することに!
※SILENT SIREN
縫うことは相変わらず苦手だったので『自分に衣装制作なんてできるのかな』と不安でしたが、当時の私は『何もできない今の自分を変えたい!』という気持ちが大きかったんだと思います」
▼衣装製作者になる方法▼
「自分を変えたい」という想いが夢をみつけるきっかけに
思い切って参加したサイサイの衣装制作。
これが、将来を決める大きな一歩に。
“受け身”ではなく、自分から積極的に『学びたい!』と思って質問していたので、苦手なミシンも身についたのかもしれませんね。
私たちの役割には、衣装を作る以外にもステージ裏で早着替えのお手伝いをしたり、脱いだ衣装を洗濯したりする“ワードローブ”というものもあって、『衣装制作ってこんな仕事なんだ』『縫うだけじゃないんだ』というのをそこで初めて知りました。
大変なことも多かったのですが、自分がかかわった衣装がステージに上がっているのを見たときは、充実感でいっぱいでしたね。
そのときから『衣装制作って楽しい!』『続けていきたい!』と思うようになりました」
竹内さんは「今日、手伝いに来てほしい」と急に言われても必ず行けるよう、サイサイのライブがある日は常にスケジュールを空けていたという。
そんな学生時代の活動がきっかけで、卒業後の今もサイサイの衣装制作に携われるようになったのだそう。
※2015年に竹内さんが制作したサイサイの衣装
また、卒業後にプロの道に進めたのには、もうひとつのきっかけが!
これに受かったことで、いろんな事務所さんからお仕事の話をいただけるようになって、プロとして衣装制作ができるようになりました。
最初は『卒業したら誰かのアシスタントに就いて経験を積もう』と考えていたのですが、卒業と同時にフリーのスタイリストとして踏み出せたのは、本当に運がよかったんだと思います」
▼衣装製作の仕事の流れ▼
パフォーマンスに合わせて細かく衣装を作る
その後も人づてに仕事の幅が広がり、現在、竹内さんが担当しているアイドルは10組以上もいるんだとか!
衣装制作の仕事って、具体的にはどんな流れで進んでいくの?
事務所の方々やメンバーさんから、『今回は制服の衣装にしよう』『男装にしよう』といったコンセプトの発注があるので、それに沿って全体的な雰囲気や色味などを提案します。
メンバーさんによっては“へそ出しNG”“二の腕出しNG”などの決まりがあるので、ご本人の要望や好みを考慮したり、ほかのグループとイメージが被らないようにしたりと、気をつける部分は多いですね」
※竹内さんの手帳には、衣装のイラストが細かく描かれている!
色塗りは、イラストを取り込んでアプリでやることが多いですね。
そのあと、型紙を作ったり、生地を集めたりして、制作に入っていきます。
私の場合はアシスタントがいないので、全部ひとりでやっています」
そんなにたくさんの作業をひとりで!?
これって、だいたいどれくらいの期間でやるものなの?
※制作中の竹内さん
いろいろな衣装の制作が重なると、かなりギリギリになってしまって、眠れないまま作るなんてこともあります」
やっぱり超忙しいんだ…!
でも、10組以上のアイドルの衣装を次から次へと作っていると、デザインのアイデアが浮かばなくなることもあるのでは?
あと、電車に乗っているときや自分の服を買いに行ったときに『あの人が着てる服、かわいいな』『この服の生地は使えそう』と思ったものがあったら、その場ですぐにメモや写真を撮るようにしてますね。
常に衣装のことが頭にあるので大変だなと思うこともありますが、そういうヒントが役立つことも多いんです」
どんなときでも衣装のことを考えているなんてすごい!
そんな竹内さんが、制作するうえでこだわっていることは?
ステージで動き回るアイドルだったら、特に“動いたときにどうなるか”を意識して作るようにしていますね。
例えば、わーすたの“制服風衣装”なら、どんなにとびはねてもリボンが顔に当たらないようにリボンとブレザーを縫い付けていたり、汗が目立たないように普通のブレザーとは違う速乾性の素材を使ったりしています」
※わーすたの“制服風衣装(2016年秋冬)
例えば、ギターやベースの方は、楽器をかける肩周りにスタッズをつけないようにしたり、ドラムの方はほとんど座っているので、下半身よりも上半身を派手にして個性を出したりしていますね」
※サイサイのボーカル&ギター・すぅ、ドラムス・ひなんちゅ(撮影/平野哲郎)
普通の洋服とは違う、ライブ衣装ならではの注意点があるんだ!
そのため、ひとりずつ完成させていくのではなく、まずはスカート、次にブラウス…というように、パーツごとに仕上げていくんですよ。
そうして出来上がったものを実際にメンバーに着てもらい、最終的な調整をして、やっと完成です」
▼衣装製作を仕事にする魅力▼
大変な制作のあとには感動の光景が!
華やかなイメージだけど、想像以上にハードな衣装制作のお仕事。
大変なこの仕事を続けられる理由とは?
自分がかわいいと思う衣装を作ることができて、それをアイドルの方々がステージで着てくれるんだと思うと、どんなに大変でも頑張りたくなります」
たしかに、自分がイチから作った衣装を着て、大勢のお客さんの前でパフォーマンスしているメンバーを見たら、疲れなんて吹っ飛びそう…!
ライブは衣装だけでなく、アイドルさんや照明さんなど、いろんな方々が力を出し尽くして作り上げるので、会場全体がひとつになっている景色を見ると『私もチームの一員としてライブを作ってるんだ』と実感できて、いつも感動しちゃいますね」
※サイサイのライブ風景
また、メンバーやファンからの言葉も、やりがいになるのだとか。
メンバーさんやファンの方々が気に入ってくれてることがわかると、自分の仕事に自信がもてますし、『また頑張ろう』って思えます!」
※「ファンから好評だった」という、わーすたの“制服風衣装(2017年春夏ver.)
▼高校生の今からできること▼
自作しながら作業に慣れて、楽しむことが大切
最後に、衣装制作者になるために必要なことを聞いてみた。
だからこそ、この道を目指す人なら、高校生のうちに縫うことに慣れておいたほうがいいと思いますね。
型紙付きの洋裁本を買って勉強してみたり、Tシャツを自分なりにアレンジしてみたりするのもオススメです。
この業界に入るなら “縫えること”はかなりの強みになるし、服を作る魅力もわかると思いますよ」
細かい工夫で、ステージに立つアーティストをより華やかに魅せる衣装制作のお仕事。
ファッションやライブが好きなら、目指してみるのもアリかも?
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