開票率数パーセントで当確? 数学も関係する選挙速報のフシギ

連日、熱い選挙戦が繰り広げられているが、いよいよ投票日が今週末に迫った。まだ選挙権のない高校生も、日本の未来を左右する選挙結果を、選挙速報番組で見守ってみてはどうだろうか。

 

ところで、選挙速報番組を見ていると、開票開始直後、開票率がまだ数パーセントという段階でも続々と「当選確実」マークがついていく。なぜこんなに早いタイミングで当確が出せるのか、不思議に思う人もいるだろう。調べてみると、世論調査や出口調査を参考にしながら、各地の開票所取材に基づき当確を出しているようだ。

 

選挙管理委員会の開票作業は、投票用紙を投票箱から開披台にあけて候補者ごとに選り分け、その枚数を数えて確認し、それを束ね、立会人の確認などの作業へと長い工程を経て行われる。そのため、最初の選挙管理委員会の公式票が発表されるまでには、数十分から1時間前後かかる。しかし候補者の得票にかなり差のある場合には、開票のごく早い段階で得票数の強弱が明らかになる。その状況と世論調査、出口調査などにより、当確の判断をしているようだ。結果として、選挙管理委員会の公式票が1~2%、あるいはまだ出ていない段階で当確を打つこともあるのだという。

 

各局の取材力によるデータに基づき、すべて開票される前に結果を予測する選挙速報。そこに生きているのは、高校数学でも登場する「確率」や「統計」だ。これらは教科書の中だけの話ではなかった?! 千葉県立東葛飾高校の福島毅先生もこう話している。

 

「数学の教科書に出てくる確率の問題では、『袋の中に赤と白の玉が○個あって、その中から…』といった文章が出てきますが、現実世界ではそんなことしませんよね。だから確率ってどこで役立っているのだろうと疑問に思う人がいるかもしれません。しかし、ニュースなどでは天気予報の降水確率や選挙の開票率数パーセントで当選確実など、身近なところに確率は使われているんですよ」

 

選挙速報で使われているのは、標本(サンプリング)から母集団の全体像を推定するという方法だという。

 

「コーヒーに砂糖を入れ混ぜてよくかき回したとしましょう。最初のスプーン1杯の味と、カップに入った残り全部のコーヒーの味は同じでしょうか、違うでしょうか? ほぼ同じと言えますよね。つまり均等に混じったものの性質を推定するには、一部をサンプリングして調べてみればおおよそわかるというのが統計の基本です。選挙速報の話で言えば、圧倒的な差が生じる2者の勝敗は、わずかな数の投票用紙が開票されただけで山の差が歴然としているから当確が出せるのですね。接戦の候補者どうしでは、かなり開票された段階でほかの事前情報も含めてどちらが優勢かを判断するため、テレビ局によって当選確実を打つタイミングに違いが出てくるのでしょう。得票の差と当確を打つタイミングに着目してみるのもおもしろそうですね」(福島先生)

 

実は身近な確率・統計。数学が得意な人も苦手な人も、今週末は選挙速報を見ながら確率・統計のおもしろさを味わってみよう。

 
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