【人気の理科教師に聞いた!】大学で「宇宙」について学ぶには?
今年最大の天体ショーともいわれるアイソン彗星観測のチャンスが近付いている。
ワクワクしている高校生のなかには、「大学で宇宙について学びたい」「将来は宇宙飛行士になりたい」「宇宙開発の仕事に就きたい」などの進路を考えている人もいるだろう。
そこで3回シリーズ最後の今回は、立命館宇治中学校・高等学校のなべ先生に、前任校での進路指導経験をふまえた宇宙関係の進路選択へのアドバイスをもらった。
Q.大学で宇宙について学びたい!という高校生へのアドバイスは?
A.学科名、教授名で検索を。就職は「狭き門」との覚悟が必要
宇宙学とは、物理、化学、生物、そして地学、工学など、ありとあらゆる理系の複合体です。研究テーマには、ビッグバンにせまる理論物理、電波望遠鏡を駆使する観測宇宙物理、大型物理実験施設を利用する素粒子物理、新たな宇宙理論を構築する相対論。超ひも理論、宇宙エレベーターの建設に関連する宇宙工学、ロケットにかかわる流体工学そのほか惑星形成、宇宙生命体、化学組成…あげれば切りがありません。
こうしたテーマを学べる大学の学科として「物理学科」「宇宙地球物理学科」「天文学科」などがありますが、教育学部に所属している著名な宇宙物理学者や、応用物理学科に所属しながら実は素粒子物理学の日本的な権威の先生もいます。学部名、学科名での検索だけではなく、個人名からの孫引き検索をしたり、物理学科以外の関連学科も調べてみるといいでしょう。
Q.就職先はどんなところですか?
A. JAXAや大学のほか、一般企業も
宇宙開発には多様な産業が関連しています。人工衛星の製造や運用、ロケットの製造や打ち上げサービス事業、地上設備製造、部品製造、素材製造、ソフトウエア開発、部材加工…などなど。国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」では国内約650社がかかわっているといわれているように、電機メーカーやシステム会社など一般企業において宇宙事業の一翼を担うことができます。
しかしながら、総合的に宇宙の研究や開発を行うとなると、JAXAや大学の研究者などきわめて数が少なく厳しいことは知っておきましょう。大学での研究と就職は別、という割り切った考えも必要かもしれません。
私がいつも生徒に確認しているのは、大学へは就職のために行くのか?ということ。「もっと知りたい」「もっと学びたい」という心の渇きをいやすために大学へ行く、という考え方もあります。大学で思いきり好きな研究をして、そのなかで培った研究手法、人との円滑なコミュニケーション能力は、別の仕事に就いた際にもきっと役立つはずです。
勉強や仕事以外で取り組むのにも、宇宙は最適なテーマです。宇宙とは直接かかわらない仕事に就いたとしても、時折星空を眺める。星座の物語を子どもに語り、人間の想像力の偉大さを伝える。時折机に向かい、ちょっと相対論を数式で追いかけてみて、無限に広がる時空の世界を思考し、未来に思いをはせる。――このような豊かな人生を送るための糧として、宇宙学を学ぶのも悪くないのではないでしょうか。
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宇宙を進路に考えている人も別の進路を考えている人も、この秋は夜空を眺めながら将来について思いをめぐらせてみるのもよさそうだ。
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◆理論と観測を通して宇宙の成り立ちや現象を解明する【地球・宇宙科学】
【なべ先生】
立命館宇治中学校・高等学校 物理教諭 渡辺儀輝
今春、北海道の市立函館高等学校から京都府の立命館宇治中学校・高等学校へ転任。FM番組の科学ニュース、ケーブルテレビの実験ショー、新聞の科学解説記事などで幅広く活躍。「すべての子どもたち、大人たちが理科好きになってほしい」と願っている。