【人気の理科教師に学ぶ!】今年最大の天体アイソン彗星とは?

今年最大の天体ショーともいわれるアイソン彗星の接近。昨年発見され、大彗星となることが予測されており、観測のチャンスを楽しみにしている高校生もいるだろう。

 

しかし、彗星は何でできているのか、なぜあのような形をしているのかなど、詳しく説明できる人は少ないのでは?

 

また、彗星の接近が、過去には社会を大混乱に陥れたことを知っているだろうか?

 

そんな魅惑的な彗星の到来を楽しむために、本サイトでお馴染みの理科教師、立命館宇治中学校・高等学校のなべ先生に聞いたQ&Aを、3回にわたってお伝えする。まず初回は、彗星の基礎知識と、彗星は地球に悪影響を与えるかについて教えてもらった。

 

Q.そもそも彗星とはどのようなもの? 

A.主成分の氷が解け、一緒に放出されるガスやチリが輝いて見えるもの

 

太陽系は「オールトの雲」と呼ばれる粒子群に、すっぽりと丸く取り囲まれています。太陽から遠く離れて極低温の状態にある「オールトの雲」は主に氷でできています。これが重力のわずかなぶれで太陽に“落ちてくる”のが彗星です。

 

主成分が氷なので、太陽に近づくと熱で彗星本体の表面が少しずつ溶け、氷の蒸発とともにガスとチリも放出されます。それにより、ぼんやりと光り輝いて見えるのです。

 

ちなみに、彗星がこっちに向かって落ちてくるような気がしても、彗星の進行方向と目に見える流れ方とは関係ありません。「彗星の尾」は太陽風の影響で太陽と反対側に流れていきます。

 

彗星には、巨大な楕円の軌道を周期的に回るものもあれば、放物線や双曲線を描いて途中でくだけ散って二度と戻ってこないものも。ハレー彗星は楕円形の軌道に乗って76年ごとに現れますが、アイソン彗星は今回のみの太陽接近となります。

 

Q.1910年のハレー彗星接近時は、たいへんな社会混乱が起こったそうですね。アイソン彗星は近付いても大丈夫?

A.生物滅亡のうわさが立ったこともありますが、そんな心配は無用です

 

長く尾を引き、「星が落ちる」ような光景から、彗星は不吉なできごとの前兆と考えられることが多かったようです。その極端な話が、1910年ハレー彗星の出現のときに起きました。

 

「彗星の尾には毒が含まれていて、彗星の通ったあとを地球が通り過ぎたとき、地球上の生物はすべて窒息する」という話が世界中に広まりました。そのうわさに動揺し、空気を閉じ込めるためのタイヤのチューブを買い占めるお金持ちが現れたり、解毒になるといった怪しい薬を売る者、人生を悲観する者など、うその情報に惑わされる事件が起きたのです。

 

1997年のヘール・ボップ彗星の時も、彗星の通り過ぎた後に宇宙人が襲来するといううわさが広まり、それを信じたカルト宗教団体のいたましい事件も起きました。

 

時代に関係なく、人心を惑わす情報はいつの世も流れます。今回の彗星でうわさが広がったとしても、落ち着いた行動と冷静な判断をしていただくよう、祈っていますし、だからこそ科学リテラシー(現代社会を賢く生きる術としての科学の正しい知識・知恵)が必要だと思っています。

 

次回は、アイソン彗星の観測方法を紹介する。「この目で見たい!」という人はぜひ参考にしてほしい。

 
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【なべ先生】
立命館宇治中学校・高等学校 物理教諭 渡辺儀輝
今春、北海道の市立函館高等学校から京都府の立命館宇治中学校・高等学校へ転任。FM番組の科学ニュース、ケーブルテレビの実験ショー、新聞の科学解説記事などで幅広く活躍。「すべての子どもたち、大人たちが理科好きになってほしい」と願っている。