学問

この春、教科書にも載る! 日本人が発見した新元素「ニホニウム」って何?

この春、教科書にも載る! 日本人が発見した新元素「ニホニウム」って何?

「水兵リーベ、僕の船…」でおなじみの元素記号の周期表。
 
覚えるのに苦労したという高校生も多いのでは?
 
この周期表に、日本人が発見した新しい元素「ニホニウム」(元素記号Nh/原子番号113)が加わることになった。
 
 

新たに周期表に加わった113番元素ニホニウム

 

 
名前が正式決定したのは2016年11月。
 
さっそく2017年4月から一部の高校教科書にも掲載されている。
 

ニホニウムを発見したのは理化学研究所の森田浩介チームディレクター(九州大学教授)が率いる研究チームだ。
 

 
実験を開始したのは2003年で、最初にこの113番元素の合成を確認したのが2004年。
 
その後は、ひたすら実験を繰り返し、2012年、3回めの合成に成功して、とうとう決定的な証拠を観測できた。
 
新元素を発見し、命名するのは、日本はもちろんアジアでも初めての快挙だ。
 

元素といえば、水素や炭素など、この世界の物質を構成する基礎となる粒子のこと(*)。
 
化学の分野では基本中の基本だけに、もうすべてが解明されているようなイメージを抱いてしまいがちだが、実は、まだまだ新たな元素についての研究は世界中で行われている。
 

*現在の正確な元素の定義は「原子の化学的性質を表す概念」または「同じ陽子数を持つ原子の総称」。
 
ちなみに、物質を構成する最小の粒子は元素ではなく素粒子(そりゅうし)
 

400兆回で成功は3回! 元素合成は地道な挑戦の積み重ね

 

 
ただし、自然界にもともとある元素はすでにすべて発見済み。
 
ニホニウムなどの新しい元素は、加速器という特殊な装置を使って、2つの元素の原子核同士を猛烈なスピードでぶつけ、合体させることによって人工的に生み出されたものだ。
 
つまり、元素は「みつける」時代から「作る」時代に入っているというわけ。
 

ニホニウムは原子番号30の亜鉛の原子核を加速させて原子番号83のビスマスの原子核に衝突させることで作られた。
 
しかし、バッチリ原子核を衝突させて新元素を合成するのは至難の業。
 
9年の実験期間中に400兆回衝突させて、113番元素の合成がうまくいったのは、わずか3回だという。
 
気の遠くなるような話だ!
 

 
では、ニホニウムはどんな特徴をもつ元素で、今後どのように役立っていくのだろうか。
 

実はニホニウムの寿命は約1000分の2秒
 
あっという間に崩壊してしまう。
 
そもそも合成できる確率もすでに説明したようにものすごく低い。
 
そのため、今のところは、直接人々の生活の役に立つことはないと考えられている。
 

「世界がどういうものか」を知るために必要な基礎研究

 
すると、ニホニウムの発見はあまり意味がない?
 
いやいや、決してそんなことはない。
 
この世界を形作っている元素について探究することは、「この世界がどういうものか」を知るための基礎になる。
 
科学の分野では、役に立つか立たないか以前に、わかっていないことを明らかにしようとする「基礎研究」が非常に重要
 
この積み重ねがあるからこそ、その後の「役に立つ」研究も生まれてくるのだ。
 

それに、日本人の発見した元素が世界中の周期表に載ることにワクワクする高校生もきっと少なくないはずだ。
 
森田チームディレクターはこう語る。
 

 

「私たち研究グループは、応援してくださった日本の皆さんのことを思い、新元素を『ニホニウム』と命名しました。
 
周期表に日本発の元素を見いだした人が少しでも誇らしい気持ちになり、科学に興味を抱いてくださることを期待します。
 
そして、それが科学的な思考をもつ人の数を増やすことにつながり、ひいては日本の科学技術の発展に寄与しうると考えるとき、私たちは、私たちの行ってきたことに大きな意義を見いだすことができます」

 
森田チームの次の目標は119番、120番元素の合成。
 
まだまだ未知の元素はあるのだ。
 
研究者の原動力は「わからないことを明らかにしたい」という好奇心と「誰もやったことがないことをやりたい」という意欲
 

 

該当するキミは研究者の資質ありかも!

 
 
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伊藤敬太郎

伊藤敬太郎
ライター

Webサイト、情報誌、メルマガなどで、教育、資格、キャリア、ビジネスといった分野を中心に活動。これまでに執筆した主な媒体は『キャリアガイダンス』『社会人・学生のための大学&大学院選び』『リクナビNEXT』『仕事の教室ビーカム』など。

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