プログラミングが学べる大学の学部学科を紹介!専門学校との違いは?

2022年から高校でも「情報Ⅰ」として必修科目となっているプログラミング。

プログラミングに興味があり、将来プログラマーになりたいと考えている高校生も多くいることだろう。

しかしプログラミングを扱う仕事は多岐にわたっていて、ひと口にプログラマー志望といっても、進むべき進路や方向性はさまざま。

大学や専門学校、その他スクール、独学など勉強のしかたも選択肢が多い。

そこで今回はプログラマーを目指せる大学・専門学校について大学と専門学校の先生方それぞれに話を聴いた。
今回お話を聞いたのは

高岡詠子先生
上智大学 理工学部情報理工学科 教授
慶應義塾大学理工学部数理科学科卒業、同大学大学院理工学研究科計算機科学専攻博士課程修了。
博士(工学)。専門は、計算機科学、データベース、ウェブ情報学、プログラミング教育、情報教育。
著書『チューリングの計算理論入門』『シャノンの情報理論入門』(講談社ブルーバックス)ほか

柳橋宏樹先生
日本電子専門学校 情報システム開発科 学科長
メーカー系プログラマー&システムエンジニアを経験後、新宿にある日本電子専門学校にてプログラミング教育・資格取得指導・就職指導に10年間従事している。

目次

プログラマーとエンジニアの違い

そもそもプログラミングとはコンピュータを動かすための言語「プログラミング言語」を用いて、コンピュータに対する命令文を作成することで、それを操る人がプログラマーだということ。

また、プログラマーに関連する職業としてエンジニアもあり、混同している人もいるかもしれない。

どちらもプログラミングに関係する職業だが、ここでは両者の違いと特徴を見ていこう。

プログラマーとは

プログラマーとは文字どおり「プログラミングを行う人」のことで、エンジニアが作成した設計書に従ってコーディング(プログラミング言語でコードを記述すること)を行い、完了後は作成したシステムが正常に稼働するかのテストをする。

そしてバグなどの不具合を発見した場合は、再度コーディング作業に戻り修正を施す。

これを繰り返し、プログラムを完成させるのが仕事だ。

設計書自体の作成には関わらず、専らプログラミング業務に従事するのが一般的で、プログラミング言語やコーディングに対する深い理解力、求められたシステムをより高質に作るための論理的思考力や洞察力などのスキルが求められる。

エンジニアとは

エンジニアとはIT知識をもつ技術者の総称であり、システムの開発工程において設計から運用までをとりまとめる人のこと。

エンジニアはシステム開発の責任を一貫して担うポジションであり、メインの業務はクライアントの要望を仕様書にまとめ、それを実現するための設計書を作成することだ。

この設計書に従ってプログラマーがプログラミング業務を行うことになる。

エンジニアはプロジェクト全体を取り仕切りクライアントと現場のプログラマーをつなぐ役回りを担い、クライアントとの折衝やプロジェクトの進行・管理など、多くの業務と責任を担う。

よってクライアントとの話し合いに必要なコミュニケーション能力、プロジェクト全体をとりまとめるマネージメント能力、それにプログラミングを含めたIT技術全般への深い知識など多くのスキルが求められる。

プログラミングを学ぶ道にはどんなものがある?

プログラマーになるためには特別な資格が必要なわけではない。

その学び方にはさまざまな選択肢があり、自分に適した道を選ぶことが重要だ。

ここでは大学、専門学校での学びを比較してみよう。

  

  大学 専門学校
コスト 大学によっては高額になる場合もある 期間が短い専門学校を選べば、コストをおさえられる
期間 4年制
大学院に通う場合はさらに2年、もしくは5年間
2年~4年間
学ぶ内容 学問として広く深く学ぶ 仕事に直結する技術を磨く

 

大学で学ぶプログラミングとは?

学び方に幅があるプログラミングだが、大学で学ぶ場合にはどんな特徴やメリットがあるのだろう?

上智大学理工学部の教授、高岡詠子先生に話を聴いた。
「プログラミングといえばゲームやアプリ、SNS、電子書籍サービスなどのソフトウェアやPC、スマートフォンといったハードウェアをイメージすると思いますが、実は洗濯機、電子レンジなど我々が日常的に使うさまざまなものもプログラムで動いています。

ですからプログラムの先にあるもの、つまりプログラミングすることで最終的に何をしたいのか、プログラマーになって何を生み出したいのかを考えることがとても大事です。

また、プログラミング言語を文法的に使えるようになってもそれだけでは不十分で、データベースやネットワークなどの知識も不可欠。

プログラマーやエンジニアになるには、プログラミングの勉強をするだけでは不十分だといえます。

大学ではプログラムの書き方自体を学ぶことが目的ではなく、その理論的背景や周辺技術も含んだ形での学習に重点が置かれます。

プログラムを使って何ができて、その周辺にある技術は何なのか、プログラミング言語がどのようにコンピュータ上で実行されるのか、コンピュータがどのように動いているのか、また、ネットワークがどのように構築されているのか。

そういったことそれぞれに理論があり、それらを理解し知識を相互につなげることで、俯瞰した視点から情報通信技術と、その社会的役割を把握する力を養います」(高岡先生)

プログラミングが学べる大学の学部学科を紹介!専門学校との違いは?

※プログラミングの技術は至るところに使われている

大学でプログラミングを学べる学部

プログラミングを学ぶなら「情報」をキーワードに学部や学科を調べよう

一般的に理工学部の中で『情報』が付く学部・学科であればほぼ間違いないかと思います。

『情報』と付く学部は、プログラミングなどのIT技術や情報通信分野の勉強ができることが多いです
」(高岡先生)
理工学部情報理工学科、理工学部情報工学科、基幹理工学部 情報理工学科など。「情報」と名の付く学部や学科ではプログラミングが学べる。

具体的に理工学部情報理工学科で学ぶことの例を挙げると、プログラミングだけでなく電子決済の仕組み、loT(モノのインターネット)、データサイエンス、人工知能、セキュリティをはじめとする幅広い技術について学ぶための幅広い分野を扱っている。

その他にもプログラミングが学べる学部や学科をもつ大学は多いので、「情報」をキーワードに調べてみよう。

文系学部でもプログラミングは学べる


プログラミングといえば理系学部をイメージしがちだが、文系にもプログラミングを学べる学部・学科は存在する。

メディア情報学部、社会情報学部、総合情報学部などの学部や、情報デザイン学科、情報メディア学科、情報システム学科など、やはり「情報」と付く学部や学科となる。

プログラミングが必修科目になっている大学や、システム・エンジニアやデジタルクリエーターになるための基礎が学べる大学、
またWebデザインの演習授業を受けられる大学など、ITスキルの養成に力を入れる文系学部は意外とあるのだ。

とはいえプログラマー・エンジニアになるには必ずしも「情報」系の学部である必要はない。

一般教養科目としてプログラミングの授業をもつ大学は多いので、他学部に席を置きながらプログラミングを学ぶ機会もある。

大学でプログラミングの授業がない場合は、独学やスクールを利用することになるが、志望大学が文系だからといってプログラマー・エンジニアへの道が閉ざされることはないので視野を広げて将来を展望しよう。

大学でプログラミングを学ぶメリット

プログラミングの実践力の基礎となる学術的理論が学べる

前述のとおり、大学では実践的なプログラミング技術よりも、そのベースとなる理論の習得に重きが置かれる。
「日進月歩するIT分野では、ハードウェアは日々進化し、マシンはより高速に、メモリもより大きく、そしてプログラミング言語も開発され続けていますが、ベースとなる基礎理論は変わりません。

理論を押さえておけば新しい事物にも対応することがでます。

またプログラムを使って何ができて、その周辺にある技術は何なのか、どのように連携しているのかということにも、全部理論があります。

4年間でプログラミングに関わる理論体系を理解できるように学びます」(高岡先生)
常に変化し続けるIT分野で働くうえで、情報技術の理論に習熟していることは大きな強みとなるだろう。

社会の新しいあり方に対応できる力が身につく

次世代の社会システムとしてSociety 5.0というあり方が示されている。

Society 5.0とは、loT、AI、ビッグデータ、5Gなどの技術により、人間にとってさらに快適で制約のない社会を作ろうというもの。

現在の情報社会(Society 4.0)では人間が情報解析することで価値が生まれてきたが、Society 5.0では人間が解析できない膨大なデータ(ビッグデータ)をAIが解析し、それを人間にフィードバックするという仕組みに変わって行く。
「Society 5.0によって、今までなかった価値が社会にもたらされると、その技術やデータを使って社会にどう還元するのかということが焦点になります。

DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉があります。

情報通信技術が社会に染み渡っていくことで、人々の生活を良い方向に変化させるという説ですが、DXの実現にかかわる人材になるためには、プログラムだけではなく社会についても学ばねばなりません。

大学の授業は、その時にあるプログラミング言語などの技術を身に付けたうえで、学生が社会においてその技術をどう応用していくかということの、きっかけを与えるものだと思っています」(高岡先生)
Society 5.0によってもたらされる社会変革に対応するために、大学で広く教養を身につける意義は大きい。

広い視野をもったプログラマー・エンジニアは、これからの社会で重宝されるだろう。

他分野の学生と交流できるので視野が広がる

総合大学ではさまざまな学部があり、多種多様な学生が日々勉強に励むが、そうした他分野の学生との交流は「社会の今」を知るのにとても有意義だ。

大学に籍を置く4年間で少しずつ社会も変化していくが、プログラミングの勉強をしているだけでは得られない豊かな情報を得られるメリットが、大学生活にはある。

留学生との交流や、あるいは自分自身が留学することで、海外のIT分野の現在を体感することもできる。




プログラミングが学べる大学の学部学科を紹介!専門学校との違いは?

※他分野の学生との交流は大学ならでは

専門学校で学ぶプログラミングとは?

専門学校ではどのような内容を学べるのだろうか?

日本電子専門学校 情報システム開発科 学科長の柳橋 宏樹先生に話を聴いた。
 「専門学校では大学に比べてより実践的なカリキュラムが組まれています。

プログラマーとしての即戦力をもった人材の育成を主眼としているので、実務に直結する最新のスキルが身につきます。

実際に業界で活躍する現役のエンジニアによる授業やワークショップ、企業との連携によりプロの仕事が経験できるプロジェクト学習、実際に企業に赴きプロの現場を体験できるインターンシップなど、専門学校ならではの学びを提供しています。

また、専門学校は一般的に大学よりも門戸が広く、さまざまなレベルの学生を受け入れています。

それぞれのレベルに合わせたクラス分けなども行われているので、初学者でも安心してプログラミングを学ぶことができますよ」(柳橋先生)

専門学校でプログラミングを学べる学科

専門学校にはどのような学科があり、どんなことが学べるのだろう。

専門学校では、プログラミングを学ぶための多様な選択肢があるので、人気のある学科を例に挙げてみよう。

情報処理科

主にプログラマーの育成が目的の学科。

複数のプログラミング言語が学べ、初学者でもゼロからしっかりとプログラムを書く技術を身につけられる。

AIシステム科

「AI」「ビッグデータ」「IoT」などの活用にもプログラミングは不可欠。

これら3つの技術を総合的に身につけられる学科。

次世代のITエンジニアの育成を目的としている。

電子応用工学科

スマートフォンなどのデバイス、車の自動運転やロボット関連の製品まで、幅広い分野のものづくりを支えるためのプログラミング技術を身につけられる。

ゲーム制作科

ゲーム制作のためのプログラミングが学べる学科。

ゲームプログラマーになるための実践的なカリキュラムが組まれている。

プログラミングを学んだ先でどんなことを実現したいのか、よく考えて学科を選ぼう。

専門学校でプログラミングを学ぶメリット

実務に直結する技術が身につく専門学校だが、実際にプログラミングを学ぶにあたってどんなメリットがあるのだろうか?

IT企業で必要な実践的な技術と知識を修得できる

大学で学ぶアカデミックな知識とは違って、就職後即使える実践的な技術と知識の修得が専門学校の目指すところ。

就職に向けてプログラミングを学びたい人には、うれしい特徴だろう。
「プログラミングツールひとつとっても、専門学校では実際にIT企業が広く採用しているツールを使って学習することができます。

また、実習授業が多く設定され、プログラミングの動作を確認しながら学習できたり、プロジェクト学習、インターンシップなどプロの現場で実際に仕事を体験することができたりします」(柳橋先生)
学んだ知識をそのまま即戦力として企業でいかせるのは、専門学校の大きなメリットの1つだ。

大学よりも短い期間で卒業できる

専門学校では一般教養の年次がなく、1年めからすぐにITに特化したカリキュラムが開始され、入学後すぐに自分がやりたい仕事に直結した学科の学習や実習などが始まる。

また、具体的な目標が定まっていない場合にも、学校での学習やキャリアに関する授業を通じて将来自分が就きたい職種や分野を検討することができるなど、就職に的を絞ったプログラミングを学ぶことができる。

そして、大学よりも短い期間で卒業できるため、なるべく早くプログラマーとして働き出したい人にも、専門学校がおすすめだ。

多くの専門学校は2、3年で卒業できるので一般的に大学よりも学費が安く済む傾向にあるのもメリットだ。

プログラミングが学べる大学の学部学科を紹介!専門学校との違いは?

※学んだことがプログラマーとしての実務に直結するのが専門学校の強み

就職支援が充実している

就職のサポートが充実していて、手厚い支援を受けられるのも専門学校の強みだ。
「日本電子専門学校では、就職支援のための授業が設けられていて、担任やキャリアカウンセラーから個別に就職活動の指導が受けられます。

また企業から学校宛に直接求人票が送られてきて、その中から採用が決まることも多いですね。

横のつながりができるのも、強味です。

情報分野の学科ではクラスの大半がIT業界に就職しているため、業界内に多数卒業生がいます。

そのつながりが、きっかけでキャリアアップを目的とした転職がかなうケースも多いのです」(柳橋先生)
就職保証制度が導入されている学校もあるなど、企業の即戦力を育てることを使命とする専門学校ならではの手厚いサポートを受けながら、就職活動ができる。

大学か専門学校で迷ったときは

大学ではプログラミングだけでなく、他の領域の見識も広がる

プログラミングだけでなくほかの学問領域にも興味がある場合や、プログラマーとしてではなく、より広範囲の仕事を行うエンジニアになりたい場合は、大学進学がおすすめだ。

大学では専門学校のようにプログラマーとしての仕事に直結する技術を学ぶ機会が少ない一方で、その基礎となる理論や他の領域にもまたがるより広範な学問が学べ、学士としての学歴も手に入る。

仕事の選択肢や将来の可能性は大学のほうが広がりやすいかもしれない。

プログラミングをしっかり学びたいなら専門学校

専門学校では業務に直結するプログラミングの技術をゼロから体系的に学べる。

仕事にそのまま活かせる知識が手に入るため、プログラマーになりたいという意思が明確でやりたいことがはっきりしている場合には、専門学校がおすすめだ。

オープンキャンパスや体験入学を利用する

どちらがいいか決めかねている場合には大学のオープンキャンパスに参加してみたり、専門学校の体験入学を利用してみるのもよいだろう。

特に専門学校では、年に何度も体験入学の機会を設けていることが多いので、積極的に参加してみよう。

プログラミングが学べる大学の学部学科を紹介!専門学校との違いは?

※大学や専門学校のカラーや雰囲気を実際に見てみよう

プログラマーになるために高校生の今からできること

プログラマーになるために高校生の間にできることを高岡先生と柳橋先生にきいた。

高校までの学習にまじめに取り組もう

「高校までの学習を、しっかりしておくことですね。

これは理系だけではなくて、英語や文章を読んだりすることも含まれます。

特に英語は、プログラミングに関する資料が英語で書かれていることも多いので、避けては通れないところです。

秀でている必要はないですが、苦手ではないほうがいいですね」(柳橋先生)

読書する時間をつくろう

「スマホを置いて、本を読みましょう。

流行の本ではなく、名著とよばれる本を読んで、今の社会について考える時間をつくってください。

読書で得た知識を、高校で学ぶさまざまな科目と絡めて思索を深めてほしいですね。

それが将来プログラムを作ってどう社会に貢献していくか、自分が作ったプログラムが社会にどのような影響を与えるのかを、考える基礎になると思います」(高岡先生)

IT分野への理解を深めよう

「理解を深めるというのは、特定のプログラムに関して学ぶということではありません。

IT技術のニュースなどに普段から興味をもっておくことをおすすめします。

プログラムにより世の中が便利になる技術がどんどん生み出されていることが分かりますし、入学後のミスマッチを無くすことにもつながりますので、興味をもって理解しておくとよいでしょう」(柳橋先生)
具体的なプログラミングの技術については、大学や専門学校に入ってからでも学べる。

高校生のうちは、将来の学びを発展させるためにも、学力や知識、教養の土台を育もう。




文/蜂谷智子 取材協力・監修/高岡 詠子、柳橋 宏樹 構成/寺崎彩乃(本誌)


★関連記事をチェックしよう

プログラマー(PG)とは?仕事内容、資格、やりがいなどを現役プログラマー103人に聞いた

ゲームプログラマーの仕事とは?『プロジェクトセカイ』の山口さんにインタビュー

「高度専門士」を詳しく解説!専門士、学士との違いは?就職に強いって本当?

VR(バーチャル・リアリティ)に関わる仕事とは?ゲーム、エンタメ、医療etc.分野別に紹介

大学の学部・学科一覧!後悔しない大学選びに役立つ!学部学科選びのヒントも