学問

冬に厄介な静電気。その予防法と、意外な使われ方とは?

冬に厄介な静電気。その予防法と、意外な使われ方とは?

ドアノブを触った時にパチっときたり、スカートが足にまとわりついたり、静電気が気になる季節だ。イヤな思いをしている人も多いのではないだろうか。

 

それにしても、なぜ冬は静電気が起こりやすいのか。北海道の市立函館高等学校で物理を担当する渡辺儀輝先生に聞いてみた。

 

「すべての物質はプラスの電荷を帯びた原子核の周りを、マイナスの電荷を帯びた電子がまわっている小さな小さな『原子』でできています。異なる物質をこすり合わせると、マイナスの電子がはぎとられ、一方から他方へ電子が移動するのです。電子過剰の物質はマイナスに、電子不足の物質はプラスに帯電し、別の物質に触れない限り、この電気を保持し続けます。電気が移動しないので『静電気』というわけですね。こすり合わせる時に間に邪魔もの(例えば水分)がいないと、電子の受け渡しはスムーズになることから、乾燥していると静電気が発生しやすくなります」

 

こするとマイナスの電子がはぎとられ、他方に移動する

 

静電気防止には、身につける服の素材に注意するといいという。

 

「繊維にはプラスに帯電しやすいものと、マイナスに帯電しやすいものがあります。例えば、ポリエステルがマイナスに、ナイロンはプラスに帯電しやすい性質があります。このようにAとBをこすり合わせた時、どちらがプラスになりやすい、マイナスになりやすい、ということを『列』のようにして並べたものを『帯電列』といいます」(渡辺先生)

 

繊維の帯電列
※出典:ライオン快適生活研究所

 

つまり、帯電列の両極にあるものをこすり合わせると、ものすごい静電気になるということだ。アクリルとウールは最悪の組み合せといえる。素材をチェックして重ね着しないと大変なことになりそうだ。

 

こんな厄介な静電気だが、実は、私たちの生活に貢献する一面ももっている。その代表例はレーザープリンターだ。レ―ザ―プリンターの心臓部であるドラムに、静電気の力によってトナー(粉末状のインク)が像を描き、それを用紙に転写、定着させることで印刷される仕組みなのだ。ほかにも、静電気の力で花粉やウィルスを集塵吸着させるマスク、静電気でホコリを集めるダスターなど、さまざまな製品に静電気が利用されている。

 

静電気と私たちの生活の関連について、渡辺先生もこう語っている。

 

「古代ギリシャの時代に、植物の樹脂がかたまった『琥珀』を布で磨くと羽毛をひきつける、という現象がすでに発見されていました。この琥珀のことを『エレクトロン』と言います。そう、英語のエレクトロニクスの語源です。バチンとくるだけの静電気の時代から、17世紀に電池が発明され安定的に電気を制御できる『動電気』の時代の到来とともに、私たちは電気がなければ生活ができない状態になってしまいました。静電気の研究は、現在のエネルギーの研究までつながっているんですね」

 

考えてみれば、人類の歴史は自然現象をうまく活用してきたことにある。静電気のような厄介ものこそ、探究心をもってみてみると意外な効用があっておもしろい。

 
もっと知りたい人はコチラ→
◆新しい電子材料の開発や電機の利用技術の研究を行う【電気工学

注目キーワード

藤崎雅子 編集者・ライター

藤崎雅子

高校の先生方向けキャリア教育の専門誌にて、全国の高校の取り組みを取材しレポートする連載を担当するなど、教育関係の雑誌やサイトを中心に活動。ほか、二児の母としての目線を生かした様々なテーマの取材・執筆活動を行っている。

ページのトップへ