広告や商品開発にも使える!「脳科学」ってどんな学問?

幅広い領域で「脳の働き」を解明

 
「脳科学」という言葉は、多くの人がテレビなどで耳にしたことがあるはず。ただ、それが「どんな学問か?」と聞かれると…。
 
何となく「医学系の専門分野なんだろうなぁ」とだけ考えている人が多いかもしれない。
 
しかし、この脳科学、実は今、広告や商品開発をはじめ幅広い分野で活用され、注目されているのだ。
 
玉川大学 大学院 脳科学研究科の松田哲也教授に話を聞いてみよう。
 
まず脳科学(ちなみに学問の世界では「神経科学」という名称がより一般的)とはどういう学問なのかということから。
 

「脳科学とは『脳の働き』を解明する学問のことをいいます。ですから、脳がどのように成り立っているのかという遺伝子の研究から、分子、細胞、神経回路などの研究、脳の指示によって人間がどう行動するのか、脳がものごとをどう認識するのかといった研究まで、非常に幅広い領域にまたがっているのが特色です」(松田教授)

 
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人の「無意識の好み」を調べることができる!

 
そのため、医学部だけでなく、生命科学、理学、薬学、工学、心理学などのさまざまな学部・学科で脳科学は扱われている。なお、このうち、特に今、マスコミなどで注目されることが多いのが心理学に関連する領域だ。
 
この領域では、例えば、あるものを見たときに脳のどの部分がどのように反応しているかをMRI(電磁波を使って体の中を映像化する機器)などで調べる研究が行われている。
 
「好き!」と感じたときは脳の尾状核(びじょうかく)という部分が反応するという。
 
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「人は意識と無意識の両方で価値判断をしています。実はこの両者が食い違うことがよくある。2人の人物の写真を見せたとき、口では『Aがいい』と言っているのに、脳はBのほうに反応していることがあります。その場合、何度も写真を見せているうちに、『やっぱりBのほうが…』と心変わりする確率が高いということが研究によってわかっています」(松田教授)

 
つまり、アンケートなどでは正確にわからない「人の本当の好み」を探ることができるというわけ。これを応用すれば、より消費者の興味を引きつける商品や広告、CMを作ることが可能で、実際にそういった取り組みはすでに行われている。
 

医学、工学、ITなどの領域でも応用が進む

 
もちろん、それだけではない。医学の領域では、うつや自閉症など心の病気のメカニズムの解明が進められているし、工学の領域では、例えば、脳を損傷して手が動かなくなった人の手を動かすことをアシストする技術の開発などが行われている。
 
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ITの領域では脳のしくみを人工知能の開発に応用する研究なども。
 
また、今後は、脳が学習する機能を解明して教育法や教材の開発につなげるといった教育関連の研究、芸術を人の心の癒やしに生かすための研究なども進んでいくことが期待されている。
 

「脳は人の行動や感性のすべてを制御しています。つまり脳を知ることは『人間を知る』ことなのです」(松田教授)

 
だからこそ応用範囲は幅広い。今は各分野で脳科学の研究が本格的に発展しようとしている段階。
 
今の高校生が社会に出るころには、脳科学を学んだ人へのニーズがグンと高まっていることも予想される。
 
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“人間に興味がある"キミ、さっそく脳科学(神経科学)が学べる学部・学科を調べてみてはどうだろう!
 
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