地理学というと現代の事象を扱うことが多いように思われがちですが、私が専門とする歴史地理学では過去の事象を扱います。特に力を入れているのが、全国各地の陣屋と陣屋町の痕跡の研究です。城や城下町の存在は一般的に知られていますが、全国にはそれより小規模な陣屋と町が数多くありました。陣屋は近世初期から中期にかけて所領を管轄する役所としての色合いが強くなり、今でいう市役所の出張所のような機能をしていきました。
陣屋を中心に都市を形作るタイプ、農村集落の片隅に陣屋が設営されるタイプなど様々な地域空間が展開されていましたが、今では御殿のような建物がほとんど残っていません。そこで、陣屋と都市・農村集落の位置関係を地図上に復原し、どのような地域空間が形成されていたのか追い求めています。
土平先生の授業では陣屋町や城下町の分布、都市形態を通して、現代の地域の枠組みを考えたり、まちなみ保存への活用の足がかりとしていきます。先生が最も大事にされているのは「現場で考えること」。研究に絵図や明治期の地籍資料が欠かせない一方、「地図は平面なので、やはり微妙な地形は自分の目で見ないと分かりません。小さな段差が新たな発見になることもあります」と土平先生。地元の方への聞き取り調査で陣屋の痕跡が明らかになることも多いのだそう。ゼミでは日帰り巡検や4~5日間の調査実習も行っています。
地理学は社会で役立つ学びです。例えば、地域を深く理解していると就職後に強みとなりますし、子どもに地図を楽しく解説してあげられます。高校までの暗記科目とは異なる地理の面白さを体感してみませんか。
専門:歴史地理学 略歴:奈良大学文学部地理学科卒業。関西大学大学院文学研究科地理学専攻 博士後期課程満期退学。1995年より本学地理学科助手として着任。専任講師、准教授を経て、現在は教授と文学部長を務める。自分の目で現地確認することにこだわり、江戸時代の陣屋・陣屋町を研究している。