薬の効果や副作用が患者さんごとに異なる原因のひとつは、血液中や組織中の薬物濃度の個人差です。薬物は腸で吸収され、血液に乗って運ばれ、組織で代謝されて化学構造が変化します。しかし、ある種類の酵素を体内で作れるかどうかには、遺伝的な要因などで個人差があります。その酵素の有無によって薬物の代謝速度が変わり、同じ量の薬物を摂取しても血中濃度に個人差が生まれます。
私が研究している薬物の「体内での動き(動態)」と「体内での変化(代謝)」は、薬の開発や投薬の方法を考える上で基礎になる内容です。
技術の進歩によりヒトの酵素を導入した動物での実験ができるようになり、試験管での実験だけでなく個体の体内における薬物動態を観測できるようになっています。
小林先生が講義を担当している「薬剤学」は、薬の吸収・分布・代謝・排泄に関わる生体のしくみを学ぶ科目。学生が将来薬剤師として働く際に、「牛乳では飲まないでください」のような薬の飲み方を理由を理解した上で指導するために、創薬研究者として働く際に、薬の効果だけを考えるのではなく、例えば肝臓病の薬なら「肝臓に薬が届く」ことまで考えて開発するために、それぞれ必要になる内容だ。先生の専門分野にも重なるため、教科書の内容だけでなく世界中の研究者が発表した研究成果を織り交ぜ、最先端の知見を伝えている。
高校までの学習は「答えを見つけること」ですが、社会に出てから必要な力は「問題を見つけること」と「問題を解決すること」です。「なぜだろう」という気持ちを大事にしてください。
東京理科大学大学院薬学研究科修士課程修了。薬学博士(千葉大学)。
昭和大学薬学部助手、千葉大学薬学部助手、助教授、准教授を経て、2020年より現職。
学外での活動として、日本薬物動態学会理事(2019-2023年)、内閣府食品安全委員会専門委員(2012年から)、薬剤師試験委員(2021年から)などを歴任。