足を切断した患者さんが、義足を使って再び歩行できるようになるための練習プログラムの開発や、義足の部品の材質や形状が患者さんの身体に与える影響について研究しています。専門学校川崎リハビリテーション学院を卒業後、理学療法士として就職して以降、事故により足を切断した患者さんに常に接してきました。ある日突然に身体の一部を失うことが心に与える影響は大きく「自分自身に価値がなくなってしまった」と、打ちひしがれる患者さんも少なくありません。しかし、失った部分を義足で補い、練習を重ねて使いこなせるようになると、患者さんは歩く能力だけでなく意欲を取り戻していくのです。そうした患者さんが自信を持って再び歩けるようになって社会復帰を果たした姿を見るたび、理学療法士の仕事と、研究に対するやりがいを感じるのです。
「義肢装具学」の授業では義肢(義足や義手)・装具の実物を持ち込み、学生と一緒に触れて学習を進めています。大切にしていることは“実感”。図や写真では分からない細かな動きや触感を経験することが、より深い理解へとつながります。「切断はそれほど珍しい障がいではありません」と笘野先生。けがだけでなく、糖尿病などの病気による血管の衰えが原因で下肢を切断する患者さんが今後は増えてくると予想されます。こうした患者さんが自分らしく生活できるよう、よりよい義足の使用法の検討や理学療法士の技術向上をめざしています。
何か興味をもてるもの、熱意を注げるものを見つけましょう。たとえば「歴史が好き」「釣りが好き」などでもいいですね。何か興味をもって懸命に取り組んだ経験は、いつか患者さんと話をするときに生きてきますよ。
専門分野/運動器疾患や下肢切断術後のリハビリテーション
略歴/専門学校川崎リハビリテーション学院を卒業後、神野病院(兵庫県姫路市)へ入職。理学療法士として重度の骨折や、下肢の切断患者に対するリハビリテーションに取り組む。2000年、専門学校川崎リハビリテーション学院理学療法学科へ入職。2018年より学科長。現在は川崎医科大学附属病院で現役の理学療法士として務めながら、後進の育成にも熱意を注いでいる。