600人を撮り続けた写真家が見た「高校生の魅力」とは

「プリクラのように、いつも自分を『盛って』いないと、なんか不安。」

 

「明るいねって言われるけど、心のモヤモヤを必死に隠しているだけ。」

 

「空気を読んで、人に合わせて、『本当の自分』ってどんなんだっけ?」

 

そんな高校生の姿をそのまま、写真家の小野啓さんは撮り続けている。

 

12年間で撮影した高校生の数、およそ600人。なぜこんなに多くの高校生を撮るのか、小野さんにインタビューした。

 
 

画像:写真家 小野啓さん

画像:写真家 小野啓さん

 
 

■笑顔でなくても「美しい」高校生の今

 

小野さんは写真の専門学校生だったころから高校生の撮影を続け、その集大成として2013年、写真集『NEW TEXT』を出版した。映画にもなった『桐島、部活やめるってよ』(朝井リョウ著)の本の表紙にある高校生の写真も、小野さんの作品だ。

 

高校生を撮る理由について、小野さんはこう話す。

 

「高校生はなぜかすごく気になる存在。大人になったら流してしまうことに正面からぶつかったり、悩んだり、もがいたり、すごく人間らしさがありますよね。それが、若さや容姿とは違った意味で、美しいと感じます」(小野さん※以下同)

 

600人を撮り続けた写真家が見た「高校生の魅力」

 

プリクラやスマホの写真とは違って、小野さんの写真に写る高校生の表情は「笑顔」ではない。それが逆に新鮮で、カッコイイ。協力してくれる高校生は、小野さんのWEBサイトや知人などを通じて応募してもらうが、その理由は「今の自分を残したいから」が圧倒的に多いという。

 

「ぼくの写真は、いわゆる青春っぽいものでも、グラビア写真のきらびやかさもない。だからこそ、『撮ってほしい』と言われたことがあります。悩んでいたりすることも含めて、そのまま写真にとどめたかったと。それがその子にとっての『高校生』だったのかなと思います」

 

600人を撮り続けた写真家が見た「高校生の魅力」

 
 

■「自分の本当の姿を記録しておきたい」

 

撮影を通じて、自分を解放したり、自分を確認する高校生もいる。ある女子高生は、明るくふるまっていたが、実は学校ではいじめに合い、存在感を消すように過ごしていた。

 

「せめて写真のなかでは、本来の自分の存在を見せる場、本来の自分でちゃんと存在しているという証がほしかったのでしょう。できあがった写真を見てとても喜んでくれました。その子が生きていくうえで大事な何かになっていたら、ぼくもうれしいですね」

 

小野さんは、彼女のように悩みを抱えた高校生こそ、撮影する意味を感じているという。

 

「ぼくと身近すぎない距離感にあるから、かえって自分を出しやすいのかもしれません。こんな撮影の機会でも、同じ趣味をもついろんな年代の集まりでもいいから、学校でも家でもない『第三の居場所』をもてるとよいかもしれませんね」

 

600人を撮り続けた写真家が見た「高校生の魅力」

 
 

■最近の高校生は冷めている?

 

12年間今まで撮った作品を追うと、時代の変化が感じられる。例えば、初期の女子高生に多かった白くてだぼだぼのルーズソックスは、徐々に見られなくなった。
 

「内面にある本質は変わっていないと思います。ただ、自分の出し方が、最近の高校生は冷めているように感じます。『熱くない』。これぐらいしかできないと自分で線を引いて、それ以上のムチャはしないような…」

 

600人を撮り続けた写真家が見た「高校生の魅力」

 

まだ十分やり直しがきく年齢なのに、あきらめてしまうのはもったいない!

 

そのままの自分でいいんだから、自信もっていこうよ。小野さんの写真からも、そんなメッセージが受け取れる。

 
 

※もっと知りたい人はコチラ→
◆被写体を見る目、構図、センスが重要【カメラマン